銀座は自分にとって永遠にキラキラとした"憧れ"の街。

昔から銀座のデパートや高級メゾンのショーウィンドウを眺めるのが無性に好きで、ドキドキしながら中央通りを歩いた20代のころに比べたらさすがに少しは馴れたけれど、いまだって変わらず憧れであり続けている。だからこそ惹かれるのだと思う。

そんな私が銀座について書かせていただこうと思います。

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外堀通り沿いにある1947年創業の『銀座ウエスト 本店』。古風な木製ドアを開けると、そこはクラシック音楽が静かに流れる喫茶室。私が初めて訪れたのは確か大学生のときで、ベージュトーンのシックな佇まいに一目惚れし、木製トレイに盛られたケーキのサンプルにウットリ見入ったものでした。

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しかし、この店の素晴らしさを本当に理解できたのはもっと大人になってから。ライターとして多くの店へ取材に伺うようになってからのことです。

たとえばカトラリーやシュガーポットなどのシルバー類は、いつも一点の曇りもなくピカピカに磨き上げられている。これをキープするためにどれほどの仕事量が必要なことだろう。

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どれも壊れたら修理をして半世紀近く大切に使い続けているもので、なかでもミルクピッチャーはハンドルを注ぎ口に対してL字(直角)に着けた特注品。これは急須の把手にならったもので、日本人が慣れ親しんだこの角度のほうが注ぎやすいはず、と考案したのだそう。

20161027_west_other.jpgまた長〜い背もたれと短い脚という独特のシルエットから、個人的にこっそり"アルパカ椅子"と呼んでいるベロア地のチェアも、「さほど広くない店内で隣のお客様を気にせず、ゆっくり寛げるように」という配慮から考え出されたバランスなのだとか。

そしてこちらが視線を上げるだけで客の意を察し、テーブルへと来てくれる女性スタッフのきめ細やかな接客術。こうした「行き届いている」ことのすごさこそ、大人になったから気づけたのだと思う。

さて、「ウエスト」は店頭販売の洋菓子も喫茶メニューも、香料や保存料などを極力使わず、手づくりであることがポリシー。

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たとえばサンドイッチなら具材はもちろんマヨネーズから自家製で、パンは白パンかライ麦パンから選べ、お好みでトーストもしてくれる。ちなみに私のお気に入りは「ミックスサンド」のタマゴとヤサイ。これを白パンで、さらに"軽焼き"するのが好き(写真)。

仕上げにレモンをキュッと絞っていただくのですが、塩味とレモンの酸味、玉子のまろやかさ、そしてカリッと焼き目を入れたパンの歯触り......それらのバランスが絶妙で、何ともしみじみ、美味しいのです。

コーヒーはハンドドリップで、淹れたてができあがると「お代わりはいかがですか?」とスタッフの女性が笑顔ですすめてくれる。『ウエスト』は珈琲と紅茶だけでなく、じつはカプチーノやロイヤルミルティー、ココアまでもお代わり自由だって、知ってました?(私はウカツにも数年前まで知らなんだ)。

このサービスからも、『ウエスト』らしい懐の深さが伝わってきます。

だから「サンドイッチセット1728円〜」というお値段も、決して高くはないと思いませんか。カフェをハシゴするのもいいけれど、良質な喫茶メニューと心地よい接客があるこの店で、時にはコーヒーを2杯、3杯といただきながら読書に耽り、または友人と長話に興じたりして満ち足りた時間を過ごす。

これこそ豊かなお金の使い方だと思うのです。

「きちんと丁寧であること。すべてに行き届いていること」。銀座が成熟した大人の街と言われるのは、きっとこういうことなのだろうな。『ウエスト』の喫茶室は、そう最初に気づかせてくれた場所なのです。

銀座ウエスト 本店

住所:東京都中央区銀座7-3-6

電話:03-3571-1554

営業:平日9:00〜23:00、土日祝11:00〜20:00 無休

ミックスサンド(タマゴとヤサイ)単品1188円、スープor飲み物セット1728円。ブレンドコーヒー972円、ケーキセットはドリンク+324円(各税込)

http://www.ginza-west.co.jp

写真/横山新一