ふとおとずれる週末の静かな時間、会社帰りの電車でもみくちゃになってやっと家にたどり着いた瞬間。間。間が与える思考。あぁなーんで私、こんなに頑張っているのかしら? と思うことってありませんか。

ひとりになって考えたいなぁという衝動。これってアーティストやクリエイターでなくても、駆られることがあると思うんです。

さて、今日お伝えしたいのは「アートがくれる"考える時間"」。初回、第2回とは またひと味違うアートの側面のご紹介になります。

写真界の巨匠の巡回展へ

11月11日(金)から始まった『Robert Frank : Books and Films, in Tokyo(ロバート・フランク:ブックス アンド フィルムス, 1947-2016 東京)』。

写真家であるロバート・フランクと、彼の本の出版を続けるシュタイデル社のシュタイデルが共同企画して行う骨太な展示。ドイツの小さな出版社・シュタイデルは、ロバート・フランクをはじめ、あのシャネルのカリスマデザイナー、カール・ラガーフェルドにも愛される世界最高峰のアート出版社。

どう骨太かというと、巨匠ロバート・フランクの作品を新聞用紙に印刷し、展示が終わると「破り捨てる」という世界巡回展なのです。

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会場内のステートメントにもあるように、ロバート・フランクは「ストリートフォトグラファーの創始者」であり、撮影しているものが特別な何かではありません。日常の街や人、景色を独自の視点で切り取ることで、まったく新しい作風を確立した写真家です。現在では1枚の写真が約7,000万円という高額取引になるほど。

え、なんでそんな価値のあるもの破っちゃうの? って思いますよね。これは彼らがアートマーケットへのアンチテーゼとして行う展示なのです。

展覧会ができるまでをまとめたカタログに掲載されたインタビューで「(作品を)決してアートマーケットに流れないようにすることが重要」と語るシュタイデル。彼がこの展覧会で訴えるのは、写真の価値とは、その写真がまとめられた写真集と、写真がもつドキュメント性にのみ存在する、という点。

「(我々は)マーケットのためには何も残さないし、彼らに利用されたくない」。写真1点7,000万円は、アートマーケットが金儲けを目的に作ってしまった価値。2人はそれらに対するアンチテーゼとして今回の企画を実行しているのです。同時に、シュタイデル社と共に制作した本こそが芸術作品だと社会に受け止めてもらいたい。この願いに重きを置いていることも伝わります。

1950年代に渡米し、当時のアメリカカルチャーに衝撃を受けたことで作家として大きく花開いたロバート・フランク。真実を追い続け、作品を撮り続けたひとりの写真家のメッセージに込められるものは、社会の本質とものの価値なのです。

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アートを学ぶ学生によるみずみずしいアイディアにあふれる

さらに驚いたのは、この展示は東京藝術大学の学生が企画段階から入ってすべてを仕切っているということ。教育に対して力を入れているロバート・フランクとの展示は、一般的なギャラリーや美術館よりもずっとリアリティがあってクオリティーの高いものかもしれません。

ちなみに前述のカタログ、会場入り口で目に止まったので、欲しいと申し出たところ「募金していただいた方にお渡ししています」と。本こそ芸術、カタログだって、そうですよね。う〜ん、徹底しています!

日本語での解説と企画から実行までの様子を知りたかったので、募金してきました。

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強い信念に触れること。歴史を理解しながら、その本質を読み解くこと。展示によってもたらされる、考える時間と空間。アートと一括りに言っても、その存在が伝えたい言葉は種々多様なのです。

来春にはドキュメンタリー映画『アメリカンズ』の公開も控えるロバート・フランク。今月中にこの展示に触れておくのは、なかなかに「乙なアート」の楽しみ方◎。

24日に行われるパフォーマンスによるクロージングイベントも見逃せません!!!

Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo

会期:〜2016年11月24日(木)


場所:東京藝術大学大学美術館 陳列館
(東京都台東区上野公園12-8)

開館時間:10:00~18:00(会期中無休 / 入館は17:30まで)


入場無料

Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo