前回紹介したアルデンヌの城めぐり拠点となる町のひとつがDinant(ディナン)でしょう。ブリュッセルからも列車で1時間半ちょっとの距離と、訪れやすい位置にあります。

町の真ん中を流れるのがMeuse(ムーズ)川。水源はフランスにあり、複数の支流と合流しながらベルギーを斜めに横切り、オランダを北上し、北海に流れ入る川です。

ちなみに、ムーズというのはフランス語で、オランダ語名はマース。オランダの町マーストリヒト(「マース川の浅瀬」という意味)を流れるマースは、この下流にあたります。

絵葉書にしたくなる街

思うに、ディナンの一番の魅力は、絵葉書にしたくなるような外観でしょう。とくに、ムーズ川を前に、断崖絶壁を背にして建つノートルダム教会は、何度見ても、カメラを取りだしたくなる美しさ。絶壁の上には、11世紀から築かれた城砦があり、上からの眺望を楽しむこともできます。

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ディナンの城砦を背にしたノートルダム教会

ムーズ川の右岸と左岸を結ぶのは、シャルル・ド・ゴール橋。第一次世界大戦時、のちのフランス大統領となるシャルル・ド・ゴールがこの町で負傷したことからつけられた名前です。

アドルフ・サックスの生誕地

橋の上には、カラフルなサクソフォン像が並び、これまた観光客の被写体として活躍しています。なぜサクソフォンか? それは、ディナンが、サクソフォンの発明者Adolphe Sax(アドルフ・サックス)の生まれた町だからです。

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シャルル・ド・ゴール橋に並ぶカラフルなサクソフォン像

これを記念し、ディナンでは4年に1度、サクソフォンの国際コンクールが催されています。世界最高峰のサックス・コンクールと言われ、次回は2018年を予定しています。

歯が折れそうな硬さのビスケット

名物はディナンのクック(couques de Dinant)と呼ばれるビスケット。一説には、15世紀から作られているとも言います。キャトルエピスと小麦粉を蜂蜜だけでこねて焼いたもので、店の周囲にはスパイスと蜂蜜の香りが漂います。

ジンジャーブレッドに似た香りですが、大きく異なるのは、その硬さ! ディナンのクックは、歯が欠けるのを覚悟しないと噛めないほど硬いのです。

何しろ、大の男ですら、素手ではなかなか割れない代物ときています。あとから、絵のように壁に飾る人も多いと聞いて、そりゃぁそうだろうと頷きました。

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とても素手では割れないディナンのクック
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飾るのが正解?

とても子どものおやつには向きそうにないディナンのクックですが、ベルギーでは、12月6日聖ニコラの祝日に子どもたちに配る風習があるそうです。

ジビエ料理にビールにチーズ

周囲は、渓谷に森にと、自然豊かな地域とあり、とくに秋冬は狩猟が盛んに行われます。そのため、このあたりは、ジビエ料理も絶品。キジ、鹿、イノシシなど、濃い素材もおいしくいただけます

私が今回泊まったのは、ディナン郊外の『Castel de Pont-à-Lesse(カステル・ドゥ・ポンタレス)』ホテル。森の中にある静かなホテルで、レストランのジビエ料理もなかなかのものでした。

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美味だったキジ料理

また、チーズやビールの製造で知られるMaredsous(マレッツ)修道院があるのも、ディナン近隣の森の中です。カトリック最古のベネディクト会に所属しており、現在も約35人の修道士が共同生活を営んでいます。

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マレッツ修道院

ディナンの近くには、前稿に挙げたように、お城もそこここに点在し、観光場所には困りませんが、ムーズ川沿いを散策するだけでも、リフレッシュできる風景が広がります。

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鏡のようなムーズ川

いつ行っても寛いだ気分になれるベルギー・アルデンヌ。目も舌も肥えた大人の女性でも満足できる旅先のひとつとして、欧州旅行リピーターに特にすすめたい場所です。

ディナン市, Abbey Maredsous, Castel de Pont-à-Lesse