松の内も明け、いよいよ日常が本格的にはじまった。ところで、みなさん、もう「姫はじめ」はなさった?

きゃー、恥ずかしい。原稿でこの言葉を書いたの、初めてだ。そもそもこの言葉を口にしたことがない。そんな「姫はじめ」。

今回のテーマにしようと思ったのは、cafeglobe編集長からもらった「そういえば、姫はじめという日本語がありますよね」という年末のメッセージが発端だ。

「ありますねえ。言葉にしたことないけど。昔は言ってたのかなあ。『姫はじめ、しよっか』とか『おたく、もう姫はじめはお済みになったの?』とか」
「ぎゃー、恥ずかしい。夫婦で『姫はじめ』とか言ってるところ、あるんですかね」
「ぎゃー、恥ずかし過ぎる!」
そんなやりとりをして、昨年ラストの入稿を終えた。

すると、その翌週、なんと一緒に住んでいるパートナーが「姫納め、しようか」と口にしたのだ。......いた! ここにいた! 言葉は違っているけれど、口にする人が身近にいた!

「待て待て。先日、姫はじめのことを編集長と話したばかりだよ。そもそも姫はじめってなに。どういう語源があるの。だいたい、その姫納めって言葉は正しいのか」

恥ずかしさが過ぎて、つい理屈っぽくなってしまった。

彼は「姫はじめがあるんだったら、当然納めるのもあるでしょう」と答えたが、「いやいや、行為のことじゃなくて、語源のこと!」と慌ててGoogle先生に頼りはじめたわたし。

Wikipediaによると「姫始めとは、頒暦(はんれき)の正月に記された歴注のひとつ。正月に柔らかく炊いた飯(姫飯/ひめいい)を食べ始める日とも、「飛馬始め」で馬の乗り初めの日とも、「姫糊始め」の意で女が洗濯や洗い張りを始める日とも言われている」と書かれてある。諸説があるようだが、現在では「その年になって初めて夫婦などがセックスをすること」という解釈が一般的なようだ。

ちなみに「その年ラストのエッチ」は、彼が口にした「姫納め」ではなく、「事納め」または「密事納め」というらしい。言葉も間違ってるしで、幾重にも恥ずかしい。まあ、わたしも知らなかったわけだが。日本語って奥深いですなあ。

だいたい、「姫」という字面と語感がむずむずする。なんでだろう。恥じらいや処女性が想像されるからか。段々、姫という言葉を書くだけでこっぱずかしくなってきた。

ここまで書いてきて、姫はじめの「姫」は「秘め」と同音だということに気づく。複数の意味が込められているのだろうな。恥じらい始め、女性ホルモン活性化始め、秘め事始め。

この原稿を書き終えるころには、「ひ」と入力するだけで「姫はじめ」と予測変換されるようになっているかもしれない。

そういえば、エロ系出版社に勤めていたころ、先輩から譲り受けたワープロの予測変換がすごかった。

わたしは当時、ペット雑誌の編集をしていたのだが、まわりの島(編集部)はエロ系雑誌ばかり。わたしが原稿で「肉球」と書こうと「に」のキーボードを打つだけで、ここでは表記できないような熟語(しかも造語)がズラズラと予測変換されたっけ。うっかり見落としたら大変。「かわいいプニプニ肉○(ピー)、いつまでも触っていたい!」なんて、とんでもない文章になっていた。

ところで、姫はじめってどういうテンションで向き合えばいいんでしょうかね。

普通の営みなのに「今年最初の」と思うと妙に神妙な気持ちになってしまう。襟と正すとはこういうことか、とか。そもそも、今年最初の......でなくとも、同じ屋根の下で暮らす者同士、どのテンションで挑めばいいのか、最近はまったくわからなくなってしまった。

恋人関係のときは、デートの日は「当然、夜はそうなるよなあ」となんとなく予測できるから、ランジェリーも気合い入れたものを選んだりする。食事も終わり、ひとしきり歓談も終えたあとで「縁もたけなわですが、さらにたけなわに」な感じで、セクシーゾーンに違和感なく突入できる。

恋人時代は、食事も歓談も、すべてが前戯。デートの日取りが決まったときから、照準はその日の夜に合わさっている。

しかし、同居している場合はどうだろう。毎日、気合い入れたランジェリーなんて身につけてないし、お風呂に入ったあとですっぴんだし、パジャマだし......の就寝体勢で「その気」になるには、かなりのアイドリングが必要になる。

だいたい、相手がその気なのかどうかもわからない。相手だって「あとは寝るだけ体勢」でいるからだ。どのタイミングで、どのテンションで「あの〜、今夜あたりそろそろ......」となるのか。

バツイチのパートナーは、結婚していたころ、小さな子どももいたので、お互い言葉や態度で「その気」を伝えることが難しかったという。

「だから、夜ごはんのとき、テーブルの箸の置き方で合図してた」と彼。ひ〜、生々しい。ジェラシーではなくて、他人の秘め事を知ってこっぱずかしい!

そういえば、昔、新婚さんを紹介するテレビ番組で『YES・NOまくら』というのがプレゼントであった。あれ、子どものころはまったく意味がわからなくて、YES・NOの文字は単なる『I ♡NY』みたいなデザイン的なものだと思っていたけど、大人になって初めて知る本当の意味。なにもかもがこっぱずかし過ぎる。

結婚している友だちのひとりは「おやすみ〜」と言うときに、どちらかの鼻の穴がピクピクとしたときは、「その気だよ」という合図なのだという。......わかりにくい。花粉症の時期や風邪をひいたときなど、どうしているのだ。

合図を決めることもこっぱずかしければ、合図を決めたところで、すでに日常と化してしまったパートナーシップで「その気になる」までが、これまた恥ずかしい。こうやって、夫婦やカップルは、「セックスレス」の道を知らないうちに歩いてしまうのですね......。

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