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更新日:2003年10月9日 RSS

この事件が意味しているものは?
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報道や広告に登場する「オンナ」について考えよう。
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文/和田真由子


第31回:結局、どーすりゃいいの!?
朝日新聞VS週刊文春の「乳がん検診」論争を読む

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   私の住んでいる東京都S区では、30歳以上の女性は年に1回、「乳がん」と「子宮がん」の検診が無料で受けられる。いちおう「自分の体の声に敏感である」ことをモットーにしている(体調不良や疲れを押して無理に頑張らないことの正当化でもある。言うなれば「自分に甘い」)私なので、「健康保険の保険料と引き換えの無料検診はムダにできない!」と毎年欠かさず受診している。でも、先月の朝日新聞の一連の記事にはビックリしたなあ。乳がん検診をちゃんと受診していながら、乳がんを見逃された女性が、結構いるっていうんだもん。

   朝日新聞が8月下旬から数回にわたって掲載した記事によると、自治体の乳がん検診で主流の「視触診」は、ほとんど乳がんを発見する効果が無いのだそうな(※3)。本来は「マンモグラフィー」や「エコー(超音波)検査」などの調査を併用するべきなのだが、それを実施している自治体は全国で半数程度だそうで……。

検診は産婦人科でも不十分、
「乳腺外科」にかかるべき?


   そういえば、私の受けているS区の検診内容も、たしかに「丁寧なおさわり検査」だけだった(※4)。朝日には「私のシコリも検診では見逃された。あの検診で見逃されずちゃんとがんと診断されていれば、手遅れ(乳房切除や生命の危機)にならなかったはずなのに。悔しい」という反響が続々(130通以上)届いているそうだ。朝日は「マンモグラフィーやエコー検査の導入」「乳がん検診の担当医師を、専門外の産婦人科医ではなく『乳腺外科医』にする(※5)」「市町村が負担している乳がん検査の費用を、国が負担する」ことなどを提案した。

   そして9月。厚生労働省は「触診のみの乳がん検診制度を、マンモグラフィー導入も視野に入れて見直す」ことを公表。ああよかった、これで乳がんに対する女性の不安がちょっと減ったかも……と安心していました。

自覚しない人はそのままでよし、
自覚したらどうせもう手遅れ!?


   ところが朝日のこの快挙(?)に、週刊文春が「朝日新聞『乳がん検診』キャンペーンに異議あり!」(9月25日号)という記事で噛みついた、あるいは「待った」をかけた。異議を唱えた人物は近藤誠という放射線科医で、『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋社刊)など、医学界の常識を覆すようなセンセーショナルな「がん」関連書を出版し、がん医療の世界では(「権威」というのとは別の意味で)有名人らしい。朝日のキャンペーンと、厚労省の対応を「税金のムダ」と斬って捨てた近藤氏の主張(※6)は、「がん」自体についての常識的理解をひっくり返すような主張に基づくので、ちょっと説明しておきましょう。

  「いわゆるがんは、成長が遅く転移もしない、比較的安全な『のんびり』タイプと、根本的な治療法がなく危険な『急速転移』タイプに分かれる」「もしそのがんが『のんびり』タイプなら、わざわざ定期検診でがんを早期発見しようとしなくても、『乳房にシコリがある』などと自覚症状を感じた時点で精密検査を受ければ十分間に合い、手遅れなことにはならない。また、もしそのがんが『急速転移』タイプなら、検診で見つかったときにはすでに他の部位にも転移してしまっていて、手遅れなことがほとんど(※7)」。「結局、『検診』でがんを発見しようとすることには意味がない」。それなのに高価(1台3000万円以上らしい)なマンモグラフィー機を自治体に導入し、自覚症状のない人まで無料でマンモやエコー等の検査を受けさせるのは、ハイコスト&ローリターンというわけだ。……マジっすか!? この説、にわかには信じがたいんだけど。

   さらに、週刊文春と同じ週の『週刊朝日』(9月26日号)までもが「乳がんから身を守る」という記事で、「乳房X線『マンモグラフィー』も万能じゃない」と見出しに掲げているのだ。え、触診だけじゃダメって書いてたのは朝日新聞なのに。一体なんなんだ!?(※8)

検査費を負担するのは自治体か、自分か……
論点の違いは、「ガン対策にどう税金を使うか」らしい


   ……じーっと記事をつき合わせてやっとわかった。一見対立するような三者(二社)の主張は、ある点で一致している。自分の胸にしこりや引きつれなどの異常を感じる人(※9)は、最終的には「精密検査」を受けなきゃダメだ、ってこと。朝日サイドは、異常を感じている・いないに関わらず、検診の第一段階に(従来、第一段階の視触診より先の、第二段階の検査とされてきた)マンモグラフィーやエコー検査をプラスし、さらに細胞診など第三段階の「精密検査」まで受けられるような一貫したシステムにせよと主張し、文春サイドは何らかの異常を感じる人だけは、ちんたらした検診などすっ飛ばして(たぶん私費で)第三段階の「精密検査」を受けろ、異常を感じない人は検診など受けなくてもよろしいと言っているのだ。

  「疑わしきは精密検査すべし」というのは共通。そうすると対立点はわかりやすくなる。その精密検査の費用(高価なマンモ機器や専門医・技師の人件費)を負担すべきは誰か? 国、都道府県、市町村が無料検診を行うべきか、個人が自己負担すべきか? そりゃ民草としては行政に費用負担してもらいたいけど、乳がん検診無用論には「無料検診に回す予算があったら、専門医にかかりやすい制度の整備や、抗がん剤やホルモン剤の開発予算に回すほうが最終的に助かる人が増える」という意見もあるらしい。ちなみに、自己負担で乳がん検診を受けると、効果があるとされるエコー+マンモグラフィーの検査費用は5000〜1万円くらいになるようだ。ちょっとしたしこりを感じたとして、エコー+マンモの検査を1万円近くかけて受けるだろうか? 私がマメに乳がん検診受けている理由として、「無料」という要素はけっこう大きいんだよね。うーむ。あなたならどうでしょうか?


■今回の投稿テーマ■
(これまで乳がん検診を受けた経験があるかどうかに関係なく質問します。)乳がん検査に1万円くらいの費用がかかるとします。胸にちょっと気になるしこりを発見したら、あなたは自費負担でもすぐに検査を受ける?

up

(※3)
がん検診の有効性評価をまとめた、厚生労働省の補助金による研究班(2001年)の報告については、ガンに関する医学論文やニュースを集めたサイトを参照。
●Global Risk Communications Newsletter
がん検診の有効性評価、報告書まとまる


大豆などに含まれるイソフラボンを日常的に摂取する人は、乳ガン発生率が低いというニュースも。
●イソフラボンで、乳がんのリスク低下
味噌汁と納豆食べなくっちゃ!

(※4)
関係ないけど、私は女性医師を選んで、婦人科検診行ってます。なんかねー、やっぱりねえ。でもCafeglobeの担当編集は信頼できれば男性医師でも気にならないらしい。

(※5)
産婦人科医は「専門外」だったなんて! へぇ〜×20! ショック……。

(※6)
乳がん検診は対象が女性だけだから「ムダ使い」と批判されるのか?と勘繰ったけど、近藤氏はほとんど全種類のがん検診を不要と考えているらしい。セクシズムによる「乳がん検診」批判ではないようだ。

(※7)
とはいえ「早く発見・治療できれば後者の危険ながん(浸潤性がん)でも根治できる」という説のほうが主流らしい。

(※8)
マンモグラフィーの画像を読む医師や技師の技術レベルが問題だ、ということみたい。レベルの低い専門外の担当医に検診されて下手に安心するくらいなら、検診はかえって問題では、という見解も、がんを見逃された当事者から出ている。
●「マンモグラフィ精度管理中央委員会」のサイトでは、技術レベルの高い医師・技師を捜せる。
マンモグラフィ精度管理中央委員会

(※9)
自覚症状の無い人については、週刊文春の近藤氏は検査不要だと主張。朝日新聞は「自分で見落としているものが見つかることもあるので必要」とのこと。いずれにせよ、毎月自分でチェックすることは必要だと私は思う。




text / Wada Mayuko
illustration / Yoshida Nami



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