「皆さんがエコバッグやマイ箸を使って頑張ってゴミ削減しますね。でもその上空を飛行機がブオーンと1機飛ぶと、日本人ひとりが一生使うのと同じ程度の二酸化炭素が出ます。地球温暖化を根本から断ち切るには、こういうことも考えないといけないんです」
ガーン、飛行機が1回飛んだだけで私の一生分の二酸化炭素が……。そんなショッキングな事実を教えてくださったのは、環境事業に融資する市民組合「未来バンク」理事長を務める田中優さん。環境・平和をテーマにしたNGO活動に幅広く関わり、「日本のアル・ゴア」とも評される田中優さんと、環境・人権問題などを追い続ける気鋭のジャーナリスト・志葉玲さんのトークセッションで飛び出したひと言です。
■温暖化解決の「残り時間」はあと10年だって!
近頃では聞き慣れ過ぎてしまった感すらある「地球温暖化防止」問題。でも、そんな間にも環境問題は待ったナシで深刻化しているわけで。田中優さんは、自身の著書『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』の中で、「温暖化が取り返しのつかない状況まで進むターニングポイントは、楽観的に見てもあと10年」と指摘しています。

写真左から、ジャーナリストの志葉玲さん、田中優さん、志葉さんのパートナーでアーティストの増山麗奈さん。じつはこれ、銀座のアートギャラリー『Live & Moris』で開かれた増山麗奈さんの個展との連動企画。トークには増山さんと、おふたりの子どもも(!)参加して、アットホームな雰囲気のなか温暖化とエコの話題で盛り上がりました。
ふたりのトークは、温暖化を食い止める最大ポイントともいわれるエネルギー問題にも言及。世界経済が長く依存してきた石油は、ご存知の通り車のガソリンとなって大量の二酸化炭素を吐き出すばかりか、近い将来に枯渇することが目に見えています。そして、今やこのエネルギー確保のために世界中で戦争が起こっているのが現状。「世界紛争は、元を正せば“資源の奪い合い”。紛争が起きている地域は、“石油、天然ガス、水、鉱物資源、燃料を運ぶパイプライン”の5つのどれかを持つ場所に集中しているのです」。
■地球環境、ググッと回復させるキーポイントは2つ
温暖化も戦争も引き起こす石油エネルギーに代われるのが、自然エネルギー。すでに欧州では、2050年までのエネルギーの50%を自然エネルギーに変換すべく、風力発電に本腰を入れ始めています。いっぽう日本国内でも、ジャーナリストの志葉玲さんが取材した岩手県・葛巻町では、自治体による風力発電で、今や地域の総消費量の185%もの電力を生んでいるとか。風力や水力、太陽光……もともと豊かな山と水源に恵まれた日本は、自然エネルギーのポテンシャルも高い、と田中さんは言います。
そしてもうひとつ重要なのが、産業の仕組みを「環境によいほど儲かる」ように変えること。国内の二酸化炭素量のじつに8割を占める「発電・産業・運輸」の省エネが進むだけでも、二酸化炭素はグッと一気に減るわけです。それが進まないのは、「エネルギーをまとめ買いした方が得をする(安くなる)」仕組みがまかり通っているから。
記事の冒頭にあげた飛行機の例にしても、国内線より国際線の方が安いようなことがあるのは、国境を越える時の燃料が非課税のため。そのため、日本の地方で作った野菜を東京に運ぶより、中国から運んだ方が安くつく、という不思議な現象が起こるわけです。現に欧州では、「自国の領空を飛んだら課税する」規定を作って国際運輸コストを上げ、国内の「地産地消」を促進しているとか。同じことが日本でも実現すれば……かなりの温暖化防止に貢献できるのでは?

ギャラリー内に飾られたアーティスト・増山麗奈さんの絵。環境問題や母性、エロスなどをテーマにした作品が多いとか。
■大切なのは「問題の根本を考える」こと
自然エネルギーと産業。はい、確かに何やら壮大なテーマです。「……で、私に何ができるの?」と思ってしまいがち、ですよね。それって家庭でゴミ削減や省エネに励んでも、ちっぽけで意味がないってこと? いえいえ、そんなことはありません。要は、視点のレンズの長さを自在に変えながら温暖化問題を眺めてみることが大切、なんですよね。私の家のゴミ削減も、社会の仕組みが環境に及ぼす影響をジーッと観察することも、どちらも重要ってこと。「環境問題はトータルな視点で捉えないと本質が見えません。問題の根本は何なのか、を常に考えることが大切」と説く田中さんのメッセージが、説得力をもって響いた夜でした。(編集・田中)

記事内でも紹介した田中優さんの著書は、温暖化とエネルギー問題を取り巻く世界の現状が分かりやすくまとめられているので、ぜひご一読を。トークイベントの後で、ご本人に「持続する志」のメッセージをサインしていただきました! |