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ナチュラルな色づかい、使いやすい形
おしゃれなバッグの素材は“ジュート”
バングラデシュの特産である麻の一種「ジュート」を使い、デザイン性を重視して作られたバッグや小物たち。表参道ヒルズや各地のデパートなどでの展示、販売で話題を集め、今や予約に生産が追いつかないほど。そのバックグラウンドを知って「元気がもらえるバッグ」と呼ぶ人もいる。日本とバングラデシュを往復し、ブランドの企画・デザインから製造、販売までをこなす山口さん。見た目は、おしゃれで笑顔が魅力的なごく普通の25歳。だがたどってきた人生は、そこからは想像できないほどに濃く、山あり谷ありのドラマに満ちている。
いじめられっ子が筋金入りの不良に
強くなりたいと柔道の稽古に励んだ
小学生のとき、いじめを受けた。6年間、一度も給食を食べることができないほどに壮絶なもので、不登校にもなった。中学校に進むと、それは非行に転化する。髪を金髪に染め、暴力沙汰に万引き、喫煙。「警察にお世話になることなんてしょっちゅうでした(笑)」。
「ケンカが強くなりたい!」と、柔道で有名な工業高校に入学。タバコも酒もきっぱりやめ、毎日ひたすら柔道に励んだ。そして高3の夏、あこがれだった日本武道館での全日本ジュニアオリンピックに出場し、7位になった。
ここでまた人生が急旋回。それまでは柔道一色の毎日だったのが、「大学ではちゃんと勉強をしたい」と死に物狂いで勉強をはじめたのだ。半年後、見事、慶応義塾大に合格。
ワシントン国際機関でインターン
エリート? いやそんなのじゃダメだ
大学では勉強に没頭した。哲学、社会思想、経済……図書館にこもって手当たり次第に読み、授業にも出まくった。「資本主義のなかで労働者の役割とは、哲学としての教育は何か。今の私の基本はここでつくられています」。
大学でいちばん面白いと感じた授業が開発学だった。4年の春に途上国の開発援助を行う国際機関のインターンに選ばれ、米国ワシントンへ。しかしエリートたちが働く清潔で優雅な職場に、山口さんは違和感を感じた。ボスに「あなたは途上国に行ったことがありますか?」と聞いてみた。返事は「ないわ。私たちは頭がいいからオフィスで働いて政策をつくればいい」だった。
その答えを聞いた山口さんは持前の行動力を発揮する。自分は自分の目で現場を見て政策を作りたいと、アジアの最貧国バングラデシュに旅立つ。空港までもが異臭を放つような場所だった。首都でも道は舗装されておらず、汚物があちこちにあり、排気ガスで10m先も見えない。
道路に汚物、交通は麻痺、水道も電気もない
そんななかで出会った本物の仕事
衝撃だった。たった2週間ではこの国のことはわからない、と滞在中に大学院の入試を特例で受けさせてもらい、入学する算段をつけてしまう。しかし、いざ住み始めて自分の甘さを思い知る。アパートには自分で水道と電気をひかねばならない。役所に行けばわいろを要求される。政情不安で毎月1回はストで交通は麻痺常態になり、治安も最悪。大学のフィールドワークで地方の村を訪ねれば「日本人だから助けてくれるよね」と見知らぬ人にもすがられる……。
「こんなとこ、変えられない」と無力感に襲われるが、今度は民間ビジネスの場を見てみたいと日本の大手商社のドアを叩き、無給で働かせてもらうことに。そこで訪れた工場で可能性を見出した。「輸出工場で働く人たちの目の輝きが違うんです。自分たちは自立している、っていう誇りに満ちていて」。そしてある見本市でジュートバッグに出会う。
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| 2007年春のコレクション。仕事にも使えそうなバッグから、財布、ポーチなどの小物まで。天然ジュートや本牛革の風合いを活かしたデザイン。 |
素朴で、ちょっとごつくて質実。でも生命力を感じさせ、温かくて優しい。ジュートを言葉で表現するとこんな風だろうか。ロープや穀物袋などに使われることが多いこの素材に、山口さんは魅せられる。ジュートが通常の植物の5倍以上も二酸化炭素を吸収すること、バングラディシュが世界の輸出量の90パーセントを占めること、などを知った。
そこでバッグ作りにとりかかった。デザインを手がけたのは山口さん自身。洗練された商品に囲まれた日本人の眼鏡にかなうものを作るために、工場では数十回ダメ出しした。貯金をはたいて作った160個は、ブログなどを通じてあっという間にはけた。バッグづくりを本格的に学びたいと、日本に戻って3ヶ月間工房に弟子入りし、次に作った650個もデパートへの飛び込み営業などの成果で、売れた。
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| ジュート製のざっくりした風合いは、デニムなどのカジュアルスタイルと好相性。軽く、使い勝手が良いのも魅力。 |
ところが。ここは途上国。そう簡単に順風満帆……というわけにはいかない。せっかく慣れた工場でパスポートを盗まれ、別の工場をようやく決めたと思ったら夜逃げされる。
「数日間部屋に閉じこもりました。途上国でやるのなんて、やっぱり無理なんだ、もうやめよう、という時にブログを通じていろんな人に励まされました」。
挫折から立ち直り、再起動
直営店もオープン予定、そして……
立ち上がり、そして新たな現地代表兼デザイナーを雇い、再出発。今年の2月にモデルチェンジして生産をはじめる。バッグと小物9型ずつ、4色展開だ。貧しい国だからと、憐れみやお情けで買ってもらうのではない、あくまでもデザインの良さや品質で勝負する。それが結果として途上国を潤し、環境にも良い、ということになる。
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| 売り場で、顧客の声を直接聞くのも大切な時間。山口さんのブログを読んでるという人が「頑張ってください!」と声をかけていくこともある。 |
今、大手百貨店から多くの誘いがかかり、現地での生産もフル回転中。スタッフも増やし、山口さんは今、次のステージに来たと感じている。「もう、トライアルアンドエラーというわけにはいかない」。9月には直営店を開く予定だ。
夢は2010年に売上の10パーセントでバングラデシュに学校をつくること。そして、マザーハウスの名の由来である、バングラデシュでアパートの前に住んでいたストリートチルドレンたちが安心して住める家ができること。はやくその日がくるといい。
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山口絵理子さん プロフィール |
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慶應義塾大学総合政策学部卒業。ワシントン国際機関でのインターンを経てバングラデシュBRAC大学院開発学部修士課程に入学。在学中大手商社のダッカ事務所にてインターンとして勤務。夜間の大学院に通う。帰国後ビジネスを通じた国際貢献を実践すべく、2006年に株式会社マザーハウスを設立。
●マザーハウス
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| ある日のスケジュール |
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| 07:00 |
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起床。メールをチェック |
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| 09:00 |
| 入谷にある倉庫を覗いて作業の確認&指示出し |
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| 10:00 |
| 販売店などとの商談 |  |
| 14:00 |
| 講演など |  |
| 16:00 |
| 店頭で接客。顧客の生の声を聞く |  |
| 18:00 |
| 社員5人でミーティング |
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| 20:00 |
| 築地のオフィスへ。事務作業、企画など |
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| 25:00 |
| 帰宅 |
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| 27:00 |
| ブログを更新して就寝 |
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起業したい人へのアドバイス |
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| 私は起業してまだ1年ですが、大切なのは「なんでそのビジネスを、誰のために、なぜ自分がやらなきゃいけないのか」ということを自分のなかではっきりさせることだと思います。それを誰かに聞かれたとしても、100%の自信をもって答えられるかどうか、ということだと思います。 |
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