通訳を意識し始めた高校時代から、 フリーになるまでの道
「もともと通訳になりたかったんです。でも、帰国子女ではないので、私にとって、英語はあくまでも学んだ言語。本当になれるとは思ってませんでしたね」
帆足いづみさんは、ソフトで落ち着いた物腰と、穏やかながらハキハキとした語り口が好対照な女性だ。フリーランスの英語の通訳として、すでに10年のキャリアを持っている。
「なりたいと思ったのは高校生の時です。ただ、英語の成績は普通だったし、海外に縁もなかった。1年間アメリカの高校に留学したんですが、その動機は、通っていたのが女子高でつまんなかったからで……。あ、こんな話じゃ、あんまりご参考になりませんね(笑)」。とはいうものの、帆足さんはこれまで、着実に夢を実現するべく歩んできた人だ。大学は同時通訳の授業があるところを選び、在学中から通訳学校にも通い始めた。卒業後は外資系企業に就職するが、それも通訳になることを頭に置いてのことだったよう。
「自分がお勤めには向いてないと、なんとなく思ってたんです。でも、社会勉強は必要だからまず会社で働こう、通訳の勉強は続けておいて、できるようになったらいずれは……と、いったん就職しました。でも、けっきょく半年で、やりたいことがあるなら辞めてもいいかなと、通訳の仕事を始めたんです」
通訳学校の先生や友人の紹介で、フリーの仕事をスタート。それから帆足さんは、仕事の現場でプロとしての術を学んでいった。
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さまざまな分野の通訳を経験し、
居心地のいいスタイルを確立
ひと言で『通訳』といっても、その形態は実にさまざま。話し手が言葉を切ったところでまとめて訳す『逐次通訳』、専用の施設や機器を使って話し手の発言と並行して訳していく『同時通訳』、そして1人や2人のために、その傍らで同時通訳を行う『ウィスパー通訳』などがある。帆足さんはそれらすべてを行うことができる。
「それぞれ違うんですよ。“逐次”はいったん自分の中にためて訳しますから、記憶力と内容を再構築する難しさがあるし、“同時”には瞬発力が必要。以前は、翻訳の仕事も勉強になるからとやってましたが、これも似て非なるもので。じっくり推敲してまとめる翻訳より、現場で一発勝負的に集中する通訳のほうが、自分には向いてるようです」
一つひとつ仕事をこなしていった帆足さんは、徐々に複数の通訳エージェントから依頼を受けるようになる。通訳仲間から教えてもらったエージェントに自分で履歴書を送ったり、帆足さんの仕事ぶりを聞いたエージェントから声がかかったりと、今では常時6社から頻繁に仕事が入ってくる。仕事の内容も、次第に変わっていった。
「最初の3年は、ヘルメットをかぶって安全靴を履いて行う工場見学の通訳や、家具の展示会などで1日中立ちっぱなしの仕事も経験しました。業界のテクニカルな知識も得られたし、それも無駄な経験ではなかったと思います。会議通訳へはそれから。先輩の補佐から始めて、やがて一人立ちしました」
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準備をして体調を整えて。
あとは本番でベストを尽くす
帆足さんの、現在の主な仕事の場は、ビジネスの交渉やセミナー、プレゼン、国際会議などだ。そして、手がける分野は広く、芸能とスポーツ以外なら、ほとんど何でもこなしているという。
「その時代に動いている業界のものが多くなりますが、通訳のニーズは年々高まってます。今は金融やIT関連の仕事は避けて通れないし。この数年は、日本と外資系企業の合併の交渉や、合併後の社内制度をまとめる過程に携わることも増えてますね。ほかに、動物医薬や整形外科関連もあれば、化粧品やファッションなどの仕事もありますよ」
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本番で力を発揮するためには、その前の準備が大切。それぞれの仕事で必要な用語も違えば、交渉の場では「失敗できない」という緊張感も高まってくるはず。「足が震えるぐらい緊張するときもあるけど、聞き手に伝わらないように気をつけてます。心臓に毛が生えてるほうがいいの、通訳には(笑)。あと、いくら単語を知っていても、本番で出てこないとダメですから、体調を整えることは大切ですね。睡眠時間は必ずきちんと取ってます」。
事前に資料をチェックしたり、必要な単語をまとめたり、通訳にはコツコツ努力型の人が向くのでは、と帆足さんはいう。通訳仲間には、海外滞在の経験がない人や、会社員を経て27、28歳でデビューした人も多いとか。「この仕事の楽しさは、評価がダイレクトに返ってくることです。お客さんに『またお願いします』って言われたら、ほめられた気がしてうれしいし。国内も海外も、仕事でいろんなところに行けますし、通訳仲間のヨコのつながりが強いところも魅力ですね」
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自分の時間を大切にしながら、余裕を持って仕事をすることが、これからの帆足さんの目標だそうだ。
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| 07:00 |
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起床・朝食 移動・仕事の準備 |
| 09:30 |
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企業のプレゼンテーションの同時通訳 |
| 12:30 |
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昼食・移動・仕事の準備 |
| 14:00 |
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ある業界団体による官公庁への陳情の逐次通訳 |
| 18:00 |
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帰宅 |
| 19:00 |
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夕食 |
| 20:00 |
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メールや資料などのチェック |
| 22:00 |
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リラックス・読書 |
| 24:00 |
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就寝 |
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自分にとって 必要不可欠なもの

ほとんど毎日が日替わりメニューの仕事。だから、最近は息切れしないために、時間的にも、気持ちのうえでも、余裕を持って過ごすようにしてます。半日オフの日をつくったり、出張帰りの翌日はお休みを入れるようにしたり。気のおけない友人と、美味しいものを食べながら話ができる時間も、確保してます。
あと、1日中声を出していることが多いので、家に帰ってからは「口を開けるのもカッタルイ」という気分のときもあれば、すごく話したくなるときもある。他人の言葉ばかり話してる反動でしょうね。そんなときは、長電話でおしゃべりしまくってます(笑)。それから、仕事中にメモをたくさん取るので、利き腕側がすごく凝るんです。これは、マッサージで解消。そうやって、心身ともに、自分でバランスを取るように努めてます。
プロフィール
'68年生まれ
国際基督教大学教養学部語学科に在学中より、同時通訳の授業を受講したり、通訳学校に通い始める 卒業後、アメリカン・エクスプレス・インターナショナルに就職。入社して半年後、通訳になるべく退職。
'91年より、フリーランスの活動を始める。
現在は、会議通訳を中心に、英語の同時通訳、逐次通訳、ウィスパー通訳として、幅広い分野で活躍中。 |
DATA
【会議通訳】
同時通訳が求められる会議通訳は、需要も高いが、求められる能力も高い仕事。担当する会議の業界専門用語はもちろん、業界の動きについても常識以上に知識として学んでおかなければならないため、会議準備に追われる仕事ともいえる。また、会議通訳だけではなく、会議までの案内、会議後の折衝、接待まで幅広く求められるケースもあり、各国のビジネスマナー、ビジネスルールについても長けている必要がある仕事。 |
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(取材先:ケイコとマナブ編集部)
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