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漠然と描いていた
「姉妹で店を持つ」という夢
学校を卒業し歯科助手として勤めていた春菜さんは、「いつか姉妹でお店を持つ」という夢を思い描きながらも、日々をやり過ごしていた。「仕事のやりがいをそれほど感じることもなく、仕事は時間内に終わらせるものと割り切っていました」。同じく会社員をしていた2つ違いの姉・一記さんと「一緒にお店をやりたいね。こんなメニュー作って、こんなお店にしようよ」と、イラストを画いては夢を語り合う日々が3年間続いた。
2人は夢を現実のものにするため、行動に起こす。それぞれにパン教室に通った後、お姉さんはパン屋さんに転職、春菜さんは移動式カフェのパイオニアとして知られる「モトヤエクスプレス」に入り、コーヒーの淹れ方から接客の基本、移動販売のノウハウなどを学んだ。
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| 右が春菜さん。左が、普段は奥の調理場で1日中ドーナツ作りに勤しんでいるという姉の一記さん。「表に出るのは得意ではない」というところをなんとか捕まえてパチリ。
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移動式カフェ「ハリッツ」をスタート
そして2人は、「ハリッツ」を移動式カフェとしてスタートさせる。「当時27歳。年齢的なものもあったかも知れないけど、すごく焦っていた。もう少し遅くなっていたら絶対できないだろうと思ったから、姉と『すぐにやろう。やって失敗したらその時考えよう』と話しました。そういう勢いってすごく大切な気がするんです」。
いざ始めてみると、簡単なものではなかった。乃木坂や神谷町などオフィス街を中心に販売を始めたが、売る場所を見つけるのもひと苦労。やっといい場所を見つけて少しずつお客さんがついてきたと思った矢先、ヤクザらしき人に止められたこともあった。「明らかに会社員ではなさそうな人が突然やってきて、『ここ、うちの敷地なんだよねぇ』と一言。すぐにピンと来ました。連絡先などを聞かれ、結局翌日からはそこに行けませんでしたね(笑)」。天候にも左右されやすく、半年ほどは売れ行きも不安定。昔から仲の良かった姉とケンカをする日もあった。
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| 一軒家を自分たちで改築したという店舗。店内にはテーブル席が4つほど。ドーナツ「ビター85」(231円)、「プレーン」(136円)と、コーヒー「アメリカーノ」(280円)。
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「当時は余裕がなくて、ちょっとしたことで姉と言い合いになったりも。でも、やるなら2人でと最初から決めていた。姉と私は趣味や感性も似ているし、言わなくても分かる部分があるんです。たまにケンカをしても姉妹だから何でも言い合って、わだかまりはなし。次の日には自然と仲直りできるのも、姉妹ならではですね」
慎重で職人タイプの姉と、行動派の妹。互いの性格を熟知しているからこそ、役割分担も明確だった。春菜さんはコーヒーと接客を担当し、姉の一記さんはドーナツ作りを担当。微妙に配合や形状を変えながら試作を何度も繰り返し、ひたすらドーナツを作った。
お客さんの笑顔が見たいから
これからも2人で続けていきたい
そんな2人のチームワークと味へのこだわりが、やがて口コミで評判となり、ハリッツは店舗を構えることになる。「オフィス街でやっていた頃のお客さんが今も来てくれます。通勤途中にわざわざ店に立ち寄ってから会社に行くお客さんもいて。すごく有難いですね」。
当初5種類しかなかったドーナツのメニューも、今は全部で20種類以上。日替わりで10種類ほどを提供しているが、毎日400個以上作り続けてもすべて完売する。予想外の人気にドーナツ作りが間に合わずお客さんから叱られることもあったが、今は持ち帰りを5個までにするなど工夫し、お客さんにもだいぶ理解してもらえるようになってきた。スタッフも採用し、現在は4人でやっている。
ハリッツは今後拡大していくのだろうか。「大きくしたいと考えた時期もあったけど、今は2人の見える範囲で、ひっそりとやりたい。ハリッツがおいしいのは目の届くところで作っているからだと思うし、やっぱりおいしかったと言ってもらえるのがいちばん嬉しいから」。春菜さんは笑顔で答えてくれた。
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