カフェグローブリカちゃんドレスデザイナー - キャリアインタビュー

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更新日:2004年4月28日
キャリアインタビュー
   
  vol.78
【リカちゃんドレスデザイナー】

和氣聡子さん

日本中の女の子に夢を与え続ける、
リカちゃんのドレスデザイナー・
和氣聡子さんは一児のママ。
夢いっぱいのドレスのアイディアとともに、
彼女の母としての経験が、
リカちゃんの世界に奥行きを与えている。


楽しかった専業主婦生活。
でも、どこかで違和感があった


  女の子だったら、誰でも一度は遊んだことがある「リカちゃん」人形が生まれてから、なんと今年で37年になる。現在、リカちゃんのドレスや小物のデザイナーとして腕をふるう和氣聡子さんは、自らもリカちゃんで遊んだ経験を持つ35歳。くるくるロングヘアーに流行を取り入れたファッション、爪の先まで気を抜かないメークと、まさに歩くリカちゃんを地でいく彼女は、何と8歳の男の子のママでもある。

  和氣さんがデザイナーとしてタカラに入社したのは、5年前。出産後のことだった。もともとジーンズメーカーでデザイナーをしていたのだが、同僚と結婚し退職。その後、アルバイトをしていたが、出産を機に専業主婦になった。入居していたマンションには、同年代の主婦が多く、子どもと一緒に公園に行ったり、互いの家を行き来しあったり。時には子どもを預け、母親同士でランチに行くなど、とても楽しい主婦生活を満喫していた。

   「子どもは可愛いし、ママ友達とのつきあいにも恵まれ、子どもべったりの専業主婦としての数年間はとても楽しかった。でも、公園で子どもを遊ばせているときにぼんやり空を見上げながら、『どうして私はここにいるんだろう……』と心のどこかで違和感を覚える自分がいたんです」

  そんな和氣さんは、子どもから手が離れたら、いずれ仕事に復帰しようと思っていた。しかし具体的な道が見えていたわけではなく、どんな仕事があるかなぁ? と漠然と考えていただけ。そんなとき、「リカちゃんのドレスデザインをしないか?」と、人づてで現在の仕事を紹介されたのは、子どもが3歳になったときだった。

   「子どもが小学生になるまでは家にいようと思っていたし、ちょうどその頃、引っ越しするため、次のマンションの契約が進んでいたんです。でも、またデザインの仕事ができるというまたとないチャンスを逃したくなくて『これは舞い込んできた私の運命!』と即断し、引越しを予定していたマンションも解約しました。子どもには寂しい思いをさせるかな? とも考えましたが、この子も私の子に生まれてしまったのは運命(笑)。また、人間はしょせん一個人なので、早くから私の手を離れ、強い子に育ってほしいとも思いました」

子育てと仕事で忙しい毎日。
でも、デザインの仕事が楽しかった


  3歳の子どもを保育園に預けながら、フルタイムで働きだした毎日は、想像以上に忙しいものだった。月に20〜30枚ものドレスのデザイン画を描き、生地を選び、サンプルを作り、多くの業者との打ち合わせ。市場調査にも行く。今でこそ、子どもは自分で学校から家に帰れるようになったが、当時は毎日保育園にお迎えに行かなくてはならず、それまでに仕事を終わらせようと、夕方はそれこそ頭から湯気を立てんばかりに仕事をしていた。それでも時には仕事が終わらず、一度保育園に迎えに行った息子を連れて、会社に戻ることもあったという。

  しかし、どんなに忙しくても、和氣さんは自分も大好きだったリカちゃんのドレスをデザインできる嬉しさでいっぱいだった。流行のスタイルから、パーティドレス、アイドル風のドレスなど、人間の服と違って制約がないぶん自由にデザインできる人形の服の魅力に夢中になった。

   「実は以前、女の子が生まれたらふわふわした洋服をいっぱい着せようと思っていたんです(笑)。でも生まれたのは男の子。もちろん男の子には別の魅力がありますが、女の子が生まれたらしてあげたかったことが、リカちゃんの洋服デザインを通じてすべて実現しています。私の中では男の子と女の子、両方を育てているようなもので、精神的に非常にバランスがいいですよ」

商品企画に奥行きを与えるママ経験。
「こんにちは あかちゃん」の誕生秘話


  子どものいない人と比べると、公私ともに決定的に時間がないものの、和氣さんには強みも多い。たとえば、子どもがいかに流行に敏感で侮れない存在なのか、主婦が製品に添付されたパンフレットをどれほど懸命に読むかなど、ということについて身にしみるほど体感していること。現在も女の子を育てているママ友達がたくさんいるので、彼女たちからもらえる忌憚のない意見はとても貴重だという。

  そして何より母親になった経験が、リカちゃんの世界に大きな奥行きを与えている。2001年11月に発売されたマタニティ姿のリカちゃん「こんにちは あかちゃん」は、画期的な商品として話題を呼んだ。この商品は、マタニティ姿のリカちゃんを購入し、同封されたハガキを投函すると、約2週間後に赤ちゃんが送られてくるというもの。母子手帳や哺乳瓶などの備品がリアルに作られ、赤ちゃんが母親の体内で育っていく様子、どのように生まれるのかなどが、わかりやすく説明されている『あなたが生まれるまで』という小冊子にも、和氣さんはこだわった。

   「人形を購入してから、赤ちゃんが届くまでに時間をあけたのは、赤ちゃんとはみんなが楽しみに待って生まれてくるものだということを体験してほしかったから。ハガキを投函してからの2週間、赤ちゃんが育っていく様子を冊子で見ながら、『あなたも、こうやってみんなに待ち望まれて生まれてきたのよ』ということを教えてあげたかったんです」

 その後、アイドルブームに合わせ、アイドルのリカちゃんを企画。今年は、リカちゃんファミリーが都市型マンション、ハートヒルズに引っ越したという設定で、リカちゃん家族の新しいおうち、ヒルズ内のママのブティック、ハートヒルズ幼稚園に通う妹たちなど、複合都市を彷彿とさせるさまざまな商品が発売されたばかりだ。

   「昔から、お人形ごっこ遊びの内容はそれほど変わりませんが、いかに今のテイストを入れられるかが商品企画の課題です。単なる遊び道具ではなく、その時その時の時代と文化を映すのが、リカちゃんなんです。人形遊びとは、非常にアナログであるけれど、手先の器用さや情緒を育ててくれるとても有効な玩具。モノがあふれるこの世の中で、永遠に変わらないリカちゃんを通して、女の子たちに社会性ややさしさを身に付けてもらうことができればうれしいです」

   「私自身、リカちゃんで遊んだこともあり、思い入れはとても大きいんです。それにすでにリカちゃんは、タカラの商品でありながら、日本の女の子にとってなくてはならない財産となっている。だから無責任なことはできない……、というプレッシャーも強いですが、日本の女の子に夢を与え続けるこの仕事に、私は誇りを持っています」



ある1日のスケジュール
06:30 起床。朝食をとりながらソファーでぼんやり。ニュースや天気予報などを見る
07:00 子どもを起こす。洗濯機を回しながら、子どもの洋服を用意。子どもが朝食を食べている間にシャワーを浴びる
07:53 子どもを見送る。洗濯物を干しながら自分の支度。洋服選びやメークには時間をかける
08:40 出勤
09:00 朝礼
09:30 生地を合わせたり、バランスを見ながらデザイン画を起こす
12:00 昼食
13:00 リカちゃんチーム開発ミーティング
16:00 商品生地サンプルや人形パッケージの色校チェック、商品企画書作成など
19:30 退社、買物
21:30 帰宅後、子どもと夕食。宿題のチェックと一日の出来事を話す。夕食の片づけの後、家の掃除
22:00 入浴
22:30 子どもが寝た後、夫の夕食の準備
24:00 夫が帰宅。会話をしたり、ネイルケアやビデオ鑑賞など自分の時間を楽しむ
02:00 就寝


プロフィール
ジーンズメーカーでデザイナーとして勤務した後、社内結婚。その後、アルバイトをしていたが、出産を機に専業主婦へ。子どもが3歳のとき、(株)タカラに入社し、リカちゃんの企画開発やドレスデザインを担当する。オシャレが大好きで、忙しい日々でも服選び、メーク、ネイルケア、ヘアスタイルなどの研究には手を抜かない。



オフの過ごし方

土、日の昼間は、ほとんど自由な時間はありません。家事をして、生地を選びに出かけたり、デザインを描いたり。日曜日は子どものサッカーの試合の応援に行ったりもします。本当の意味でのオフは、忙しさで壊れる前に早めに取る有休ですね。そういう日は、街に出て、洋服を買ったり、アロママッサージに行ったりしてストレスをリセット。また毎晩、眠るまでの約2時間は、ネイルケアをしたり、ビデオを見たり、自分の時間を楽しんでます。

また子どもの夏休みや冬休みの期間は、実家の母に一定期間手伝いに来てもらうのですが、その間はもう毎晩残業か夜遊び(笑)。いつも遊べない同僚と夕食に行ったりしています。「私にはこの期間しか時間がないの!」と予定を合わせてもらってます(笑)。



子育てしながら、
企業で働くには?


タカラの場合、周囲の理解があるので、非常に助かっている部分が大きいです。私の場合は、入社時にすでに子どもがいたので、最初から問題だったのは、とにかく時間がないこと。子どもが小さいときは、夕方保育園や学童保育のお迎えに行かなくてはならなかったので、仕事を終わらせるために夕方近くには「誰も話しかけないで」オーラを出して仕事をしていました(笑)。

今は子どもも3年生になったのでずいぶんラクになりましたね。私の場合、どうしても子どもとの時間が少なくなりがちなので、家に帰ったらなるべく子どもと話をするようにしています。家事は、時間がないのである程度までしかできないと割り切っています。また、うちの場合、夫も仕事が忙しくもともと「夫の助けはないもの」と思ってますので、ストレスはたまりません(笑)。その分、実家の母の助けは借りていて、シーズンごとに来てもらっては、たまりにたまった家事を手伝ってもらってます。

だから子育てと仕事の両立、ということで人にアドバイスできるようなことは特にないんですが……。全てを完璧にしようとしないことですね。


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text / Tanaka Akiko
photos / Cafeglobe
 

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