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| 日本という国のおおもととなるもの、憲法 途方もないこの仕事に取り組む原動力は…… だれもが一度は学校の授業で読んだことがあるだろう日本国憲法。60年前につくられた日本の根本的なルールを定める法律を、変えるとしたらどうしたらいいのか。西垣さんが取り組んでいるのは、この途方もない仕事だ。この国を良くするため、憲法改正が悲願である元首相とも、臆することなく議論を交わす。分厚い専門書を読み込み、国家のデザインについて想いをめぐらす。そのときにもきっと、彼女のもうひとつの顔、3児の母……が役に立っているに違いない。子どもたちが生きる未来のためにも、この国を良くするにはどうしたらいいだろう、と。 西垣さんはもともと経済産業省のいわゆるキャリア官僚。やはり官僚だった父親の助言もあり、可能性を広げようと法学部へ。サークル活動やアルバイトなど、学生生活も楽しみながら、就職の選択肢も広げるべく、勉強して公務員試験に合格。就職活動の時にはほかの省庁もまわったし、一般企業も受けたけれど、いちばん、一緒に働きたいと思った人が多かったのが通産省だった。「他省庁や企業では組織の型にはまる人が多かったなかで、通産省はいちばん視野が広く、自分が磨けるという感じだったので」。
入省2年目にして、責任ある仕事に 各国と渉り合いこの仕事の醍醐味を知った ところが。1年目の生活は「自分を磨く」どころの話ではなかった。朝から晩までとにかくめまぐるしく、ハードな日々。ひたすらパソコンを打って資料をつくり、コピーしてホッチキスでとめて省内のあらゆる部署に配る。その合間にも会議の日程調整や資料の問い合わせが入る。とにかく考えるいとまもなく、次から次へと雨あられのごとく降ってくる雑用をこなす毎日。午前様は当たり前、土曜日も出勤、日曜はぐったりと寝て、目が覚める時間は夕方。のろのろ起き出してごはんを食べて寝る。起きたらまた1週間の始まりだ。 だが2年目からは仕事が劇的に変わった。輸出検査や基準認証の仕事の担当になった西垣さんは、APEC(※1)やウルグアイラウンド(※2)の会議に出席。日本を代表して各国と交渉する面白さを味わう。「いきなり責任ある仕事を任されて、この仕事の醍醐味を知りました。官僚という仕事は、自分が関与できるものごとのスケールが大きく、達成したときの喜びは何ものにも代え難いものでした」。
その後、米大学院への留学をへて1998年に政府が推進するバイオテクノロジー戦略の担当に。当時、「バイオ」はまだ創生期。西垣さんは政府一体となって日本のバイオ技術を推進させていくエンジンの役割を担う。仕事は充実していたが、役所の廊下にバスタオルを敷いて寝泊まりするような激務の日々。 そんななかで、西垣さんは流産してしまう。この経験が西垣さんをいったん立ち止まって考えさせた。仕事はしたい。仕事のない自分は考えられない。でも、子どもも欲しい。それは結婚当初からずうっと願っていたことだ。さてどうする。 出した結論は、バイオの仕事から退くことだった。「自分で異動の希望を出したのに、異動当日にはわんわん泣きました」。比較的余裕のある職場に移り、その後妊娠、2002年5月に男女のふたごを無事出産。復帰してから現在のシンクタンクに出向、憲法改正案づくりに携わることになる。毎日6時半に帰ってふたごの世話をし、寝かしつけ、気合いで再び起きて洗濯物を干す。その後は、午前3時までひたすら憲法の勉強をし続けた。
「出産が、憲法改正案発表と重なる!」 苦悩する彼女を救った夫のひとこと そしてまた妊娠。「今度はびっくり。事故でした(笑)」。しかも今回は出産直後の時期が、仕事のピークである憲法改正案発表に重なることがわかった。前の経験から、妊娠中でも仕事を続けることはできる、と思った。でも、生まれたばかりの赤ちゃんとふたごを育てながら仕事をするのはどう考えても難しい……。 頭を悩ませていたとき、夫が「俺が育休をとればいいじゃん」と言い出したのである。 その言葉通り、夫、山田正人さんは産後即職場復帰した西垣さんからバトンタッチ、1年間の育児休暇をとったのだった。その経験は、仕事一辺倒だった山田さんの暮らしを大きく変えた。 いま、西垣さんは夫と分担しながら、実家に頼ることもなく、仕事と子育てを両立している。ベビーシッターの手は借りてはいるが、すべておまかせにはせず、7時前後には必ずどちらかが帰ることにしている。「こどもが小さくて、成長の激しい時だからこそ一緒に過ごして日々の変化を感じたいんです」。 仕事と子育て、両方というのは大変では? キャリアアップに不安になることはないのだろうか? 「両方とも自分にとって不可欠なものだから。公務員という仕事で国のために、というのなら、自分の出世よりも、自分の生き方でロールモデルを見せるほうが少子化対策になるのではと。時間は有限だけれど、緊張感をもってやれば、能率は落ちません」 あくまでも片ひじをはらずしなやかに、でもやることはぴしっと。ふたごちゃんたちが大人になるころには、西垣さん、そして山田さんの生き方がごくあたりまえのことになっているのかもしれない。 |
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text / Angel Atsumi photos / Cafeglobe |

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