カフェグローブ株式会社サムライ マネージャー 佐藤悦子さん - キャリアインタビュー

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更新日:2007年4月18日
キャリアインタビュー BackNumber
佐藤悦子さん

vol.99
株式会社サムライ マネージャー
佐藤悦子さん

SMAPのCDジャケット、キリンのおしゃれな広告、さらにはNTTドコモの携帯電話のデザイン……。ふと見回すと、私たちの日常のあらゆるシーンで目にしない日はないのではないだろうか。今、デザイン業界でもっとも勢いのあるアートディレクター佐藤可士和さんのお仕事。最近は、幼稚園や病院のデザインにも携わり、社会的な活躍もメディアの話題の的になっている。その見事な快進撃も、この功労者なくしてははじまらない。それが妻・佐藤悦子さん。可士和さんのスケジュール管理にはじまり、プロジェクトの進行管理、契約交渉、メディアとのパイプ役まで幅広く務める影の立役者だ。可士和さんの目指す道がブレそうになったときには、その軸を調整する重要な舵取り役までをこなす。そんな凄腕のプロデューサーが生まれるまで、これまでのステップアップ秘話をうかがいました。

「ビジネスはクライアントありき」
その精神を学んだ博報堂での経験

 「まだ見たことのないものを見たい!」

 そもそもは16年前の春、佐藤さんが未知の世界への好奇心から広告代理店の博報堂に入社し、営業職についたことからはじまる。当時、博報堂のアートディレクターだった佐藤可士和氏と社内の友人を通じて出会い、結婚を機に辞めるまでいた、およそ6年間ずっと「社会人として大切な“いろは”を学んだ、素晴らしい下積み時代だった」と当時を振り返る。

 とりわけ、みっちりと叩き込まれた「ビジネスはクライアントありき」という姿勢が、大きな財産になったという。「自分たちはクライアントのために働いている。作品は自分たちのためのものではない。クライアントの望むことは100%かなえる。なぜならクライアントだから。そのポイントを、絶対に勘違いしてはいけない。強く学ばされました」。

 「たとえばクライアントが、メディアに出したいことがあるとします。けれどもメディアにとっては、それが不都合である場合にどうするか? クライアントが要望しているのですから、何が何でもお願いします! というわけにはいきません。とはいえ、メディアはNOでした、と持ち帰るわけにもいきません。そういった双方の利害が一致しないところをまとめるのが仕事なんだ! と叩き込まれました」。

「ひとに興味を持ってもらえる話題を」
仕掛ける力を養った化粧品PR時代


 そして佐藤さんは、結婚と同時に転職した。「当時は、同じ会社でお互いに深夜まで仕事をしているのはつまらない、と思ったからでした」。そんな折に「きっと向いているよ」と薦めてくれた上司の紹介で化粧品ブランド『クラランス』のPR担当として働くことになる。ゼロからの化粧品業界だったが「まあ、3年後に自分も他のブランドのプレスと同じように活躍できていればいいかな」というビジョンで、焦らずひとつひとつ取り組んだ。

 そしてそれから1年半後、「こんな人といつか働きたい!」とインスピレーションのあった女性と出会ったことがきっかけで、その女性が勤める同業他社『ゲラン』のPR職にうつることに。「『いつか』は実際にいつ来るかはわからない。それなら『今、動こう』と思って」。

 そこで学んだことは、「メディアの人に興味を持ってもらえるニュースをつくる大切さ」だったという。単に「うちの商品、いいですよ、いかが?」とプッシュするだけでは、なかなか振り向いてはもらえない。そのために企画を考える。そしてタイミングをみながら伝える。「相手の気持ちになりきって考えるんです。今はお仕事の山場かな? 何時ぐらいならデスクにいるだろう、とか。どんな話題なら興味をもってもらえそうかな、とか」。

夫とビジネス!? 100%心を
開いて尊重しあうことで成功へ


 その頃、夫・可士和氏の仕事上の環境が大きく変化していった。本を出版したことや、亀倉雄策賞の受賞などをきっかけに、展覧会やパーティの開催、クライアントとダイレクトに行うビジネスが増えた。それにともない取材の数も増え……。


 「化粧品のPRで行ってきたことを、夫・佐藤可士和でも同じようにできるのではないか」と判断した。そして『ゲラン』を退社し「サムライ」のマネージャーとなった。

 「『夫とビジネスをするなんて離婚の原因になるからやめろ!』と死ぬほど上司やいろんな友だちに言われましたね(笑)。でも、私と佐藤の場合、ベースにある信頼関係のおかげか、小さなことで意見が食い違ってもたいしたことではないんです。私は彼のために働いているとは思っていないですし。私のやりたいことが“ここ”にあるから、主体的に選んでいるだけ。彼もそれがわかっているから、私と一緒に仕事をすることができている。自分のために嫌なことをやらせているとは思っていないでしょうしね。彼は『サムライはふたりのプロジェクト』と表現するけれども、私は少し違って『サムライ=佐藤可士和』で、それを如何にマネジメントしていくかが私の仕事。それだけに彼の気持ちを深く理解するように意識しています。私がいいと思うことと、彼がいいと思うことが、ずれてしまうこともあります。そういうときは、頭ごなしに主張するのではなく、どのように理解しあいながら進めていくのかが重要なことだと思っています。それだからこそ100%心を開くことのできる妻以外がマネージャーをつとめるのは、逆に難しいのではないかと思います(笑)。

“いつか”かなえたいことは“今”動く
それが出産のタイミング


 「でもビジネスはいいですよ。みんな大人同士だから話せばわかりますよね。赤ん坊は言葉も通じません。思うようにはいきませんよ」と笑う、佐藤さんは2ヶ月前に出産をしたばかりだ。

 「仕事が大変じゃないときにチャンスを見計らって産もうなどという考えは毛頭ありませんでした」。

 実際、今の「サムライ」のビジネスは次々にふくれあがっている。「“いつか”はいつくるかわからないから」。いつかほしいのなら、逆を言うといつでもよかった。「赤ん坊を授かるということが、ふたりにとってとても大切なことだったから」。

 「自分にとって今、一番大事なことは何か?」。それをいつも優先させることをモットーにしている佐藤さんらしい選択だ。結果、今、佐藤さんの毎日は火をふくように忙しい。そんなときこそ智恵をひねる。「どうしたらもっと効率と要領をよくしてパフォーマンスをあげられるかをとにかく考えます。集中力もキモですよね」。

 そのために週に2度90分のワークアウトをかかさない。「ジムでパーソナルトレーナーをつけて、体幹を鍛えています。体の軸がしっかりしていれば、行動の軸もぶれることはないだろうと思って」。肉体だけではなく、精神や日常スタイルから無駄なものをそぎ落とすことを心がけているようだ。そのシャンとのびた背筋が気持ちいいのいい印象を与える。

 今、デザインオフィス「サムライ」そして「アートディレクター佐藤可士和」を広くさまざまな人々の心に届けることができるようになったのも、また実際に大きなビジネスチャンスを次々にものにしていくことができるようになったのも、その精神があってこそと言える。特にメディアに取り上げられることが、どんなに凄いことであり、そのチャンスを掴むためにはどれほどみんな腐心をしているか、ということを目の当たりにした。「みんなが声をかけてくれることがどれだけありがたいか……。常に感謝の気持ちを忘れてはいけないと思っています」。

 これからますます未知なる挑戦を重ねる佐藤可士和さんを、「勘違いしてはいけない」「業界で名前が出て方々から注目されることが、どれほどありがたいことか」、そういいながらまっすぐ支えていくのだろう。

● 佐藤悦子さん プロフィール
 
早稲田大学を卒業後、1992年博報堂に営業職として入社。「毎日雑誌30冊を持って電車に乗ったり、千葉マリンスタジアムで着ぐるみを着て頑張ったり、大変だったけど素敵な時代でした」。同期の友人との食事会にたまたま顔を出した、佐藤可士和さんとすぐに意気投合。「『で、結局なんなの?』などと本質をまっすぐに見つめる姿勢やバランス感覚を大事にするところなど、価値観が合ったことが大きかったですね。すぐに結婚を決めました」。1998年の結婚を機に博報堂を退社。化粧品ブランド『クラランス』のPR職に転職。1999年『ゲラン』のPR職に転職。2000年クリエイティブスタジオ「サムライ」マネージャーに就任。


ある日のスケジュール
06:00 起床・赤ちゃんの世話
07:00 メール&ニュースチェック・朝食
10:00  出社・ミーティング
12:30〜14:00 ランチミーティング
14:00〜16:00 クライアントミーティング
16:00〜19:00 デスクワーク
19:00 帰宅・赤ちゃんと過ごす
22:00 夫と食事
24:00 就寝


text / Osaki Chiyoko
photos / cafeglobe
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