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断崖絶壁がけっぷちに向かって突っ走るクルマ。このままスピードを落とさずに進めば谷底にまっ逆さま。ブレーキを精一杯踏めば、ギリギリ手前で止まれるかも……。クルマに乗っているのは地球上の人類全員。崖が近づいていると叫ぶ声はまだまだ少数派で、車内でごちそうに夢中になっている人たちの楽しげな声にかき消されがちです。アクセルをさらに踏もうとしているアメリカのような国もあります。それが、今私たちが直面している地球温暖化の状況です。 何が問題なのか、どれだけ深刻なのか、どうしたら危機的な事態を避けられるのか。それを理解するためにはやっぱり今何が起きているのかや、温暖化のしくみ・原因について理解しておくのが近道。ちょっと教科書的になりますが、今回はそのしくみと影響を説明します。
「地球温暖化」とは、その名の通り、地球全体の気温が上がることです。予測では、私たちの取り組み方次第で、2100年までに2〜5℃程度上がるとされています。「2100年か、もう生きてないからいいや」と思わないでください。気温は次第に上がるので、最悪のペースで進んだ場合、2050年時点ですでに3℃を超えるのです(図1)。気温が上がると、私たち人間の暮らしも大きな被害を受けます(※1)。被害の中でもとくに怖いものとしては、 ●海水面の上昇 ●食糧不足 ●水不足 ●気象災害の多発(洪水や旱魃など) が挙げられます。 海面の上昇は、南極やグリーンランド、氷河などの氷が融けて海に流れ込むことで起きます。気温が上がるほど多くの氷が融け、国連機関の予測では、2100年までに最悪の場合88cm上がるとされています(IPCC 2001年)。これまた「なんだ1m弱か」と安心してはいられません。潮の満ち引きなどの影響で、ときには平均の数倍の高さまで海水が来る可能性があるのです。多くの港や海岸沿いの道路は、今のままでは頻繁に波をかぶるようになり、使えなくなるのです。 海面が1m上昇すると、日本全体では東京都より広い2339キロ平方メートルの土地と410万人が被害を受けるという予測がされています(環境再生保全機構)。波の浸食が強くなり、日本から浜辺が消える可能性もあります。でも日本はまだましなほう。モルディブなどの島は水没して消え、たとえば低い土地が多いバングラデシュでは家を失ったり塩害で稲作ができなくなった人たちなど、数千万単位の難民が出るといわれています。
食糧不足も非常に心配な問題です。多くの作物は、気温が数度も上がれば収量が激減します。最近の研究では、夜間の気温が1℃上がると米の収量が1割下がるという報告がされています(※2)。穀物の値段が上がれば、ほぼ穀物で育てられていると言える牛や鶏などの肉類、乳製品、卵などの値段も上がります。とくに日本は米以外の穀類はアメリカなどからの輸入に頼っているので気になるところ。スーパーでたっぷりお買い物をして、食べ残しては捨てるような生活ができるのも、もうあと何年か……なのかもしれないのです(※3)。 水不足(飲み水や農業用水など淡水の不足)も心配です。温暖化によって乾燥地帯はより乾燥が進み、砂漠化が進みます。地球の平均気温が上がると、大気中に含まれる水蒸気の量が増えて地上に湖や川として存在する水が減るといわれています。すでに農業用水や工業用水として使われすぎ、中国の黄河やアメリカ/メキシコのコロラド河が干上がって海まで届いていないなど、石油だけでなく水資源を争う戦争さえ起きるといわれている21世紀にさらに負担をかけることになるのです。 気象災害の多発については、2003年夏にヨーロッパを襲った熱波、2004年のアメリカのハリケーン、日本に上陸した台風を考えれば、説明は必要ないでしょう。温暖化によって天候の変化の幅がより大きくなり、このような災害が頻発すると予想されています。
1861年以降、1990年代は記録上最も暑い10年間でした。また世界の平均気温が最も高かったのは1998年、2番めが2002年、3番めが2003年とここ10年以内に集中しているなど、近年ますますハッキリと上昇傾向を示しています。これまでは「問題が起きるとしても子どもや孫の時代のことだろう」と思われてきた地球温暖化は、想像以上のスピードで進んでいて、すでに影響は出始めているという見方が今では主流になってきているのです。 (次回につづく) |
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