更新日:2005年2月9日 RSS

地球温暖化


第1回2回では、温暖化の原因と、いかに現在が待ったなしの深刻な状況になっているかをお伝えしてきました。でも、「怖いわ〜」程度でちょこっと省エネしているくらいでは、残念ながら何も解決しません。あるいは漠然とした不安から目をそらしたり、「きっともう手遅れだし……」と悲観的になってしまう人もいるかもしれません。

じつは、しばらく前まで私もかなり悲観的でした。でも、「努力さえすれば、今からでも間に合うかも!」と思えたのが、環境保護NGOグリーンピース(※1)がヨーロッパから専門家を招いて開いた自然エネルギーに関するレクチャーだったのです。レクチャーで聞いたことをインタビューと合わせてご紹介します。

文=青木陽子(Cafeglobe編集長)


地球温暖化

   今、世界の温暖化問題専門家の間では、地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑えようという動きになっています。現在の予測では、プラス2℃が、『極端な大惨事が起こらないだろう気温の上限』としてはじき出された数字なのです」

   今回来日したグリーンピース・インターナショナルの気候変動専門家、スヴェン・テスケさんはそう切り出した(以下紺色の文字)。研究者というよりは、アウトドアショップのお兄ちゃんのような風貌。低くよく通る声で、わかりやすく説明してくれる。

  「『極端な大惨事』とは、まさに映画『ザ・デイ・アフター・トゥモロー』のような状況のことです。もちろんあれはハリウッド作品です。でもあの映画の基本的なメッセージは正しい。このまま気温の上昇を止めなければ、映画のように数時間でこそなくても、地球が氷に閉ざされるようなことは大いにありえます。上昇を2℃未満に抑えられれば、ああいった事態はほぼ起こらないと言えるだろう、という計算なのです(※2)

   よし、2℃ね。で、それには私たちはどのくらい何をしなければいけないのでしょうか? 「厳しいですよ。2050年までに先進国は二酸化炭素の排出量を今よりも80%カットしないといけないんです

   へ? 80%マイナス? 「そう、今の2割にしないと。2050年というとだいぶ先だなと感じるかもしれませんが、今の化石燃料に頼り切った経済や社会を考えれば、もうあまり時間がないのが現実です。あと45年で社会のしくみをすっかり変えなければいけないわけですから」

中国や発展途上国の成長で、世界の電力需要は
50年で現在の倍に。化石燃料ではまかなえない

   みなさん、どうか慌てずに。二酸化炭素の排出を8割減らすと言っても、イコール私たちが使えるエネルギーが8割減というわけではないのだとか。

  「予測では、2050年までに、世界全体での電力需要は2000年の倍になります(※図3)。中国を始めとした発展途上国が急速に経済成長することが原因です。もちろん、この急増するエネルギー需要を化石燃料でまかなっていたら、地球環境はあっという間に破綻します。そこで必要なのが、まずは技術革新やライフスタイルの工夫などでエネルギー効率をよくすること。もうひとつが、太陽光・熱発電や風力発電、地熱発電などの自然エネルギー(代替エネルギー)に切り替えることなんです」

  自然エネルギーこそが、平均気温の上昇を2℃未満に抑えるための最後の切り札だというスヴェンさん。たしかに、自然エネルギーは、いちど設備さえ整えてしまえば、いくら電気を作っても二酸化炭素の排出は基本的にゼロ。

  「地球に毎日降り注いでいる太陽エネルギーは、現在の世界のエネルギー需要の2850倍あります。風力は200倍あります(※図4)。これらをうまく活用する社会に転換していけば、エネルギーを好きなだけ使えるようにだってなるのです。さらに嬉しいことに、太陽光・熱や風力はいくら使っても資源が尽きないという大きなメリットもあります」

日本の二酸化炭素排出量は世界第3位。
責任は重大だし、国としてできることもたくさん

   スヴェンさんは、2050年までに世界で使われる電力の7割強を自然エネルギーで生み出すことができれば、二酸化炭素の排出量を大幅に削減し、2℃モデルが達成できる(!)計算になるといいます(※図5)

   たしかに最近は日本でも風力発電のあの3枚羽の風車をテレビコマーシャルなどで頻繁に見かけるようになったし、太陽光発電パネルを屋根に載せた住宅の広告も見かけるようになりました。でも図3のように伸びるような気配は今のところ……ないのでは? なんといっても、今の政府は自然エネルギーの後押しにはまったくと言っていいほど後ろ向き。

  「政治が環境問題解決に弱いのは、政治家の任期が4年程度と、環境問題のスパンに比べて短かすぎるからですね。政治家はたとえ志はあっても、とりあえず次期も当選しないとならないので、大半の人はそんな長期の問題に関わっていられないというのが本音でしょう」私たち有権者が“環境問題に取り組まないと次の選挙で落ちるかも?”と政治家に思わせられない限り変わらない、ということらしい。

   意外に知られていないことだけれど、じつは日本の二酸化炭素排出量はアメリカ、ロシアに次いで世界第3位。この責任はとても重いし、でもポジティブに考えれば、日本が腹をくくって二酸化炭素の排出量を急激に減少させることができれば、地球という船が沈まないようにすることに大きな貢献ができるのです。

   では、最終回の次回では、「京都議定書って結局何を決めてるの?」ということや、日本の取り組みについてわかりやすくまとめてみたいと思います。
(次回につづく)







第4回
京都議定書ってどんなもの? 私たちはこれからどうするべき?/2005年2月23日

第3回
最後の頼みの綱は、太陽や風など自然エネルギー。早く切り替えなくちゃ/2005年2月9月

第2回
なんでこんなコトになっちゃった? 温暖化のしくみをやさしく解説!/2005年1月28日

第1回
温暖化は本当に深刻なの? どのくらい危険なの?/2005年1月12日


text / Aoki Yoko (Cafeglobe)


二酸化炭素を出さないけれど
1割高な自然エネルギー電力と、
普通の電力。選べるとしたら
あなたはどっちを使う?
自然エネルギー電力
普通の(火力・原子力)電力


-view result-


※1
グリーンピースは、1971年に誕生した国際的な環境保護NGO。アムステルダムの本部のほか、世界38ヶ国に支部を置き、核問題・地球温暖化、原生林保護などの問題に取り組んでいる。政府や企業の意向に左右されないようにと、世界に290万人いる個人からの会費や献金のみで運営資金をまかなっている。ヨーロッパでは行政や公的研究機関などと協業することもあり、かなりリスペクトされているNGOだが、長くNGOアレルギーのあった日本では、個人会員はわずか5000人にとどまっている。
Greenpeace Japan



風力発電の研究者でもあるスヴェン・テスケさん(右)はグリーンピース・インターナショナルの自然エネルギー担当ディレクター。左はグリーンピース・ジャパンで気候変動問題を担当している中島正明さん。

※2
難しいのは、すでに大気中に出てしまった二酸化炭素は簡単には取り込めないこと。新たに放出される二酸化炭素を減らして上昇を2℃未満に抑えることができたとしても、南極などの氷が溶けることによる海面上昇はある程度続いてしまう。2004年のアメリカのハリケーンや日本の台風、バングラデシュやヨーロッパの洪水などのような、局地的な自然災害は今よりも増加すると予測されている。それでも、「まだまし」というのが2℃モデルなのだ。



図3:世界の電力消費量予測
2000年から2050年までに、とくに発展途上国の経済成長によって世界の電力需要は現在の倍になると予想されている。この電力の大半を化石燃料を燃やすことでまかなうわけにはいかない。OECD加盟国(先進国)は、エネルギー利用効率の向上と人口減などからエネルギー需要は微減。(提供/グリーンピース・ジャパン)


図4:自然エネルギーは有り余るほど存在する!
地球上には、人間が使っているエネルギーの2800倍もの太陽エネルギーが毎日降り注いでいるのだとか。今ある技術ですぐに使えるエネルギーだけで見ても、3.8倍もあるのだそうだ。これを使わない手はない。(提供/グリーンピース・ジャパン)

図5:電力の由来別構成モデル
オレンジ色の部分が太陽光・熱、風力など自然エネルギー由来の電力。黒が化石燃料、グレーが原子力由来の電力を示す。2050年までに自然エネルギーを70%強にまで高めていくことで、気温の上昇を2℃未満に抑えるというプランになっている。原子力は、その危険性もさることながら、ウラン資源があと40年で枯渇する可能性が高いため、次第に使われなくなると想定されている。(提供/グリーンピース・ジャパン)


関連リンク
<Cafeglobe.com記事より>
Letter from the Editor
あらためて、環境問題について、かなりマジメに(2004年12月15日)


<そのほかのサイト>

GreenPeace Japan気候変動
世界的に名高い環境NGOの温暖化情報サイト。

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
(財)日本環境協会内に設けられた、地球温暖化対策に関する普及啓発を行う機関。無料で利用できる資料が揃っている。

気候ネットワーク
地球温暖化防止を目的として活動するNGO/NPO。日本国内のさまざまな環境グループとネットワークを作っている。

UNEP(ユネップ/国連環境計画)
国連の環境保護部門。IPCC、京都議定書などはここがリーダーシップをとっている。(英語)

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