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更新日:2005年2月23日 RSS

地球温暖化

先日2月16日に京都議定書が発効したというニュースはみなさんもうご存知のはず。でもこれって具体的な内容はどういうこと? これで温暖化は止まるの? 私たちの生活に関係は出てくる? 私たちが何かしなくちゃいけないことはある? そんな視点から、今回は京都議定書と日本の取り組みについて、わかりやすい解説を試みてみます。

文=青木陽子(Cafeglobe編集長)


地球温暖化

   京都議定書(Kyoto Protocol)とは、「地球の温暖化を抑えるために締結された国際条約」です(※1)。1997年、京都で行われた国際会議(COP3)で採択されたため、その名前が冠されています。

主な内容は、以下の通り。
●参加国のうち、先進国に属する国には、国ごとに二酸化炭素などの温暖化ガスの具体的な削減目標がある(※2)
●この目標は、2008〜2012年の間の平均値
●この目標を達成するために、先進国は発展途上国で温暖化ガスの削減支援をしたり植林をした場合、そこで削減した分を自国の削減分として加算できる
二酸化炭素を排出できる枠が余った国や事業者は枠を売ることができる。基準より排出してしまった国や事業者はそれを買い取って達成したことにできる(排出権取引)。

   とくに最後の排出権取引は温暖化を防ぐという本来の目的を見失いかねないと批判されていますが、ともかくもこの形で条約期限の2012年を見据えて各国の努力はスタートしました。

ゲ、日本は今より14%も減らさなくちゃダメ!?

   気になる日本に割り当てられた削減目標は、基準となる1990年にくらべ、-6%です(2008〜2012年の平均)。ところが! 直近の日本の排出量は、1990年比+8%。つまり、今私たちが出している量から14%も減らさなければいけないのです。実際、このままでは達成はほぼ絶望的と言われています。

   これに対して、小泉総理を本部長とする政府の地球温暖化対策推進本部は、「地球温暖化対策推進大綱(※3)」を発表して取り組んでいます。でもそれによると、日本が2012年までに削減する温暖化ガスの目標はわずか0.5%。残りは森林吸収(海外で植林をし、その森林が吸収するだろう分を加算)やこれからの技術開発などでまかなおうという、とても消極的な計画です。

   前回、今後二酸化炭素の排出量を抑えていくために大きく推進していく必要があるとご紹介した自然エネルギー(大綱では「新エネルギー」)についても、「意欲的に取り組む」としながらも、2010年度の自然エネルギーの割合目標は約3%(1999年の実績は約1%)(※4)。気温の上昇を2℃未満に抑えるためには、2010年には自然エネルギーの割合を20%程度に上げていかなければ間に合わないことを思うと、3%というのはあまりに低い、とくに先進国中排出量第3位の国(※5)としては無責任な数値と言えるのです。

二酸化炭素の削減より経済のほうが大切?

   どうしてこんなに消極的な計画なのか。もちろんそれは「二酸化炭素を出さないようにすると、経済成長が難しくなる」という経済産業界の反対が猛烈だからです。

   たしかに、今の私たちの経済は化石燃料にひどく依存しています。日本で私たちが使うエネルギーのうち、石油と石炭・天然ガスの合計はなんと8割強。これを自然エネルギーに転換していくには相当な努力が必要です。

   たとえば今は主に石油や石炭を燃やして作っている電気を太陽光発電や風力発電で置き換えるためには、ビルや各家庭の屋根、畑や海などにパネルや風車を設置して、余った電力は電力会社が買い上げる仕組みを作らなければなりません。たしかに想像するだに面倒そうですが、技術的には何の障害もないとか。すでにドイツでは、こういった自然エネルギー由来の電力を競争力のある固定価格で買い上げる制度ができています。

   一方、日本の電力会社各社は、安定した電力を作れる火力や原子力に比べ出力が安定しない太陽光や風力は扱いが難しいとして、買い取りに消極的です。買い上げ価格もドイツの数分の1程度。つい先日は四国電力が、風力から買い上げる電力の上限を発表していました(※6)

豊かさにしがみつくか、将来のリスクを見るか

   また、たとえば化石燃料から自然エネルギーに転換するということは、化石燃料を扱っている事業は衰退するということでもあります。もちろん、化石燃料産業は全力で抵抗するでしょう。今回アメリカが京都議定書を批准していないのは、ブッシュ政権の基盤である石油産業(ついに世界最大の企業になったエクソン・モービルなど)が働きかけたからと言われています。

   まぁ、言ってしまえば、社会は変わることに対して消極的なものです。誰だって今機能していることは変えたくない。石油の研究をやめて太陽の光の研究をしろと同じ会社に言っても時間がかかる。ましてや石油産業はロビー活動や政治献金をする資金力がありますが、太陽光産業はまだ小さいので資金力はありません。政治の動きも遅くなるわけです。

   私たちフツーの市民だって、一度手に入れた快適さを手放すのは気が進まないものです。便座ヒーター、乾燥機、大型の冷蔵庫やテレビ、エアコンなど、30年前はなくても平気だったはずなのに。でも、私たちもこれらを手放さないまでも、使い方を考える必要はあります。

   つまり、政治や経済のレベルでも、生活のレベルでも、ここで私たちはひとつ肝を据えて、多少の軋轢や苦労、不便は乗り越えて取り組む決意をしないといけないのです。暮らしていくためには今期の収益も大切ですが、私たちが数十年後に快適に暮らしていられるかが怪しくなっている今、それだけではリスクが大きすぎるのです。

まずは個人ひとりひとりが変わり、行動すること

   地球の温度上昇を2℃未満に抑えるためには、2050年までに先進国は二酸化炭素の排出量を今より80%カットしなければいけない、と前回ご紹介しました(または地球全体でただちに50〜70%カットが必要とも言われています)。でも、京都議定書が2012年までに参加国全体で削減しようとしているのは5.2%でしかありません。さらに、世界の二酸化炭素排出量(第1位)の36%を出しているアメリカが未批准の状態です。それでも、世界の大半の国が二酸化炭素の削減を決意して、法的拘束力のある条約のもとに一歩を踏み出したのはとても意義のあることです。

   今回の連載では、いかに地球が危機の崖っぷちまで来ているかと、それに対して私たちの取り組みができていないか、動きが遅すぎるかについて説明をしてきました。これを読んできてくださった方は、「危ないのはわかったけど、私個人に社会や政治を変えていくことなんて到底無理」と思っているかもしれません。でも、個人が変わらなければ社会は変わらないのです。

   いかにもキレイゴトですが、本当だと私は思っています。今回の京都議定書がなんとか成立したのは、EUの熱意があったことが大きいと言われています。EU諸国の政府が熱心なのは、ドイツや北欧に見られるように市民の環境への意識が高いからに他なりません。環境NGOも、政府と一緒に京都議定書のために動くなど、社会の中で大きな役割をになっています。

   2月16日に行われた京都議定書発効の記念行事で、2004年のノーベル平和賞を受賞したケニアの女性環境活動家、ワンガリ・マータイさんは「個人の行動が、京都議定書が有効になるかを決めている。私たちには違いを生み出す力がある。地元でも世界規模でも、変化を生み出すことができる」とスピーチしていました。

   まずは自分の暮らしの中で、常にどちらの選択がより二酸化炭素を出さないか考えて行動してみる。環境にやさしい商品を買う(買わないで済めばもっと◎)、環境NGO/NPOや活動に参加してみる、選挙に行く、地元の政治家に手紙を書いてみる、企業に声を送ってみる、勤めている企業に内側から働きかける、二酸化炭素を削減しようとしている企業の株を買うなどなど、できることは色々あります。そしてひとりでも多くの人が動くことで、確実に社会は動きます。今日から、ぜひ始めてください。(おわり)




第4回
京都議定書ってどんなもの? 私たちはこれからどうするべき?/2005年2月23日

第3回
最後の頼みの綱は、太陽や風など自然エネルギー。早く切り替えなくちゃ/2005年2月9月

第2回
なんでこんなコトになっちゃった? 温暖化のしくみをやさしく解説!/2005年1月28日

第1回
温暖化は本当に深刻なの? どのくらい危険なの?/2005年1月12日


text & photo / Aoki Yoko (Cafeglobe)

次の選挙、候補者が
自然エネルギー推進派かどうか、
投票するときの重要ポイントの
ひとつにしたいと思う?
YES
NO
わからない


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※1 国際条約
「議定書」という言葉は使われているが条約と変わりなく、違反をすれば条約違反になる。2月初旬現在141ヶ国が批准。
京都議定書について分かりやすい解説はこちら(JCCCA)


※2 国ごとの数値目標
1990年の排出量を基準にして、日本は-6%、EUは-8%(ただしイギリス-12%、ドイツ-21%、フランス0%などEU内での再配分はある)、米国は-7%などになっている。ただし米国やオーストラリアは京都議定書を批准していないため、批判されている。また、中国、インド、ブラジルなどの途上国には、現在は数値目標はない。



今進めるべきは、ドイツなどに習い、風力や太陽エネルギーなどの自然エネルギーで作られた電気を電力会社がきちんとした価格で買い上げ、販売するしくみ。そうしなければ自然エネルギーの拡大にスピードがつかない。photo(c)北海道環境財団


※3 日本政府の対策は?
地球温暖化対策推進大綱の原文はこちら(環境省)
大綱とはいえ、抽象的な言葉が長いばかり。興味のある方はぜひ上記リンクを開いて一読を。この春見直されることになっているので、京都議定書が発効した今、今後の動きにも要注目。



※4 新エネルギーの割合目標
日本政府の2010年度の新エネルギー導入目標(エネルギー総合工学研究所)
これは「地球温暖化対策推進大綱」にある目標数字をグラフ化したもの。
見てわかるように3倍の伸びに設定されているが、これでも日本で消費されるエネルギーの3%にすぎない。
しかも、グラフ中灰色の「廃棄物発電」はゴミ焼却発電。とくにプラスティックやビニールゴミの焼却は石油を燃やすのと同じ。新エネルギーに加えるのは理論上おかしい。



※5 日本人一人が出してる二酸化炭素の重さは?
日本の一人当たり二酸化炭素排出量は9.4トン。9トン出しているというのも実感として重いが、東南アジア諸国が一人当たり1.6トンということを考えるともっと心に重い。しかしアメリカはなんと19.8トン。正直「何やってんの?」と言いたくなる。
ちなみに、ガソリン1000リットルあたりの二酸化炭素排出量は2.3トン。リッター7kmの燃費のクルマなら、7000km程度で2.3トンも出してしまうということ。

















※6 新エネルギーの割合目標
四国電力、風力発電の電力購入20万kWに制限(NIKKEI NET)
四国電力が自社で持っている電力発電設備の総出力は686万kW。ざっと「風力発電から仕入れるのは3%程度に抑えたい」ということになる。


























関連リンク
<Cafeglobe.com記事より>
Letter from the Editor
あらためて、環境問題について、かなりマジメに(2004年12月15日)


<そのほかのサイト>

GreenPeace Japan気候変動
世界的に名高い環境NGOの温暖化情報サイト。

全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)
(財)日本環境協会内に設けられた、地球温暖化対策に関する普及啓発を行う機関。無料で利用できる資料が揃っている。

気候ネットワーク
地球温暖化防止を目的として活動するNGO/NPO。日本国内のさまざまな環境グループとネットワークを作っている。

UNEP(ユネップ/国連環境計画)
国連の環境保護部門。IPCC、京都議定書などはここがリーダーシップをとっている。(英語)

*リンク先外部サイトの内容に関して、Cafeglobeは責任を負いかねます。また、必ずしもその内容に賛同しているわけではありません。ご自身の判断でご利用ください。

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