「核燃料の再処理とかって難しいイメージがあるし、僕も最初はあんまり積極的じゃなかったんですよ。でも、“もうこれはしょーがねーな”と(苦笑)。アレを聞いてしまったら、もう黙ってるわけにはいかないじゃない?」
坂本龍一さんが六ヶ所村にある核燃料再処理工場の稼動中止のために立ち上がった、その動きに繋がろう!という集まりがありました。呼びかけたのは、「100万人のキャンドルナイト」呼びかけ人代表の辻信一さん。この問題を伝えるための「STOP-ROKKASHO.ORG」というサイトを始めた理由を、坂本さんはそんな風に語り始めました。

↑坂本さんの他、「100万人のキャンドルナイト」の呼びかけ人やNGOナマケモノ倶楽部の世話人そして明治学院大学国際学部の先生として知られる辻信一さん、櫻井和寿さんや小林武史さんたちの「apバンク」顧問などとしてこれまたエコなムーブメントを起こしている田中優さん、ピースボートの小野寺愛さんなどがトークを行った。

↑明治学院大学横浜キャンパスのすり鉢状のホールは、通路まで人で埋まるほどの熱気。左端にSUGIZOさんの姿も。
坂本さんが言う「アレ」とは、この再処理工場からいかにたくさんの放射能が海や大気に放出されるかというデータ。簡単に言うと、この工場が稼動すれば、1日に原発1基1年分の放射能が放出されます。青森に原発が365基建つイメージをしてもいいかも。
とくに怖いのは、沖に延ばした排水管から捨てられる放射性廃棄物が海流に乗って南下し、何年かすれば日本全体を覆うだろうということ。これは食物連鎖を経て濃縮され、人間が食べる魚などに着々と忍び込んでくるのです。私たちの体にも、放射能が溜まり始めるのは確実なのだとか。体内からの被爆。マジ怖いです。
「でも、いちばん恐ろしいのは、こんなことが始まっているのに日本が静かすぎること。ほとんどの人が知らないし」と坂本さん。どうやって一人でも多くの人にこのことを伝えようか、自分らしい方法は?と考えて、「STOP-ROKKASHO.ORG」というサイトを作り、坂本さん自身や友人アーティストによる楽曲や映像を無料でダウンロードできるようにした。ここで面白いのは“コピーライト”ならぬ“コピーレフト(copy-LEFT!)”という考え方で、商用でない限りどんどんリミックスして再配布していいよ、アートでメッセージを広げていこう、という試み。すでにサイト上には、共感したアーティストが世界中からアップしてきたバージョンが日々追加されてきているのです。

↑坂本さんの友人のイギリス人グラフィックアーティストが提供してくれたという、怖いけどどこかキュートな(?)六ヶ所アイコン。アートは問題を身近にする作用がある。
今回立ち上がったことについては、やっぱりPSE法のときの経験があるのだとか。「あのときは2週間で7万人の署名が集まって、世間がみるみる態度を変えていくのが印象的だった。あれは家電だったから、みんな身近に感じられたんだよね。でも、みんなマクロビとかロハスとか、自分を健康に保つことは好きでしょう。六ヶ所の問題はそのあと一歩だけ先にある」。
うんうん、うんうんと会場全体が頷くように聞いている雰囲気。トークは未来バンク代表の田中優さんからのちょっぴり科学的な説明などがあり、この日のためにわざわざ沖縄から来たというラッパーのカクマクシャカさんの歌へ。

↑むんずと心をわしづかみにされ、グラグラ揺さぶられました、ハイ。彼のラップはめちゃめちゃカッコいいポエトリー・リーディングです。沖縄からこの日のために駆けつけたラッパー、カクマクシャカさん。
知ろうともしないで現を抜かしているうちに、未来はどうなるのか、まずは知ることから始めようという「無知の知」をアカペラで熱唱。ラップなんて普段あまり聞かない……と思っていたけれど、うっかり涙がポロポロとこぼれてきてしまいました。ラップって、ポエトリー・リーディングだったんだと発見でした。
そして、アーティスト30人くらいに声をかけたTシャツ計画があること、明治学院大学生たちが始めた署名サイトの稼動などなど、今後の動きがいろいろな人から発表され、この日の会は終わりに向かいました。最後のシメには西表島の石垣金星さんによる歌が。

↑西表島からいらした、石垣金星さん。みんなの願いが叶うようにと願いながら歌ってくださいました。八重山のどこかの島の浜辺で、満天の星の空の下、みんなで輪になって座って聴いているイメージが浮かびました。感謝。
「これは昔から人が集まったときの最後にうたう唄。みんなが今日願ったことが叶いますようにという唄なんです」と前置きして、ゆったりとしたメロディが始まりました。テスト稼動も始まってしまったし、六ヶ所はもう止まらないんじゃないの?戻れないんじゃないの?とじつは黒っぽく乾きかけていた希望が、八重山のきれいな海の水を含んで生き返るような……。大丈夫、止まるよと思えた夜でした。(編集部・アオキ) |