日本にいると水はいつでも水道から出てきて、文字通り「湯水のように使える」ものだと思ってしまうけど、その認識を改めなければならない時期がきています。実は「21世紀は水の戦争がたくさん起きてしまうかも」と言われるくらい、水は貴重な資源。今回は世界と日本の水事情を追いました。
■水をめぐってアメリカとメキシコが緊張状態に

まずは驚きの事実を。日本水フォーラムによると、地球上にある水約14億km3のうち淡水はたった2.5%。しかもその大半は氷や地下水なので、人間が容易に使える水は全体のわずか0.01%にしか過ぎない。温暖化で気温が上昇するとさらに利用可能な淡水が減るという計算もある。 既に世界中で水不足は大きな問題になっています。メキシコの首都メキシコシティでは都市開発で自然な水の流れが塞がれたこと、雨水が農地の灌漑用に近郊に送られてしまうことなどで都市部の水源が枯れつつあり、専門家の間では「あと10年でこの街は完全に干上がるかもしれない」と言われています。またアメリカ・カリフォルニア州も2020年までに新たな水源を見つけなければ水不足に見舞われるとか。
世界人口の4分の1近い人が住むのに、世界の淡水資源の6%しか持たない中国はもっと深刻な状況で、なんと600の都市のうち400が深刻な水不足に直面しているそうです。こうした現状を分析した国連世界水発展報告書では、今世紀半ばまでに少なくとも48ヶ国の20億人が水不足に直面すると予測されています。

中央アジアでは、慢性的な水不足で耕作ができない地域が多発。これは、森林が失われて山岳地帯の保水力が落ちたこと、以前は雪や氷河の形で高山に保たれていた水が温暖化で溶けやすくなったことなどが理由だという。写真のアフガニスタン北部のエリアでは、日本のNGOの指導もあり、大きな河川からの灌漑や井戸によって少しずつ水が入るようになってきたが、依然として水不足が大規模な難民の発生などの深刻な被害をもたらしている。(写真:ペシャワール会) こういった状況から、水は21世紀の戦争の火種になるという予測も多く発表されています。すでに、中東では水資源がイスラエル人とパレスチナ人の対立の原因のひとつとなっていたり、アメリカとメキシコも国境地帯の地下水を巡って緊張が高まっていたり、と兆候はたくさん出てきています(出典:『水戦争の世紀』)。
■野菜や肉も、水を使って生産されている
世界で水が足りなくなってきていることには、日本も無縁ではありません。食糧自給率が40%を切る日本は、大量の水を使って育てられる穀物や肉類等の農産物、衣料、木材などの多くを輸入に頼っており、それらの生産の過程で使われる水の量は、なんと途上国12億人が必要な水の量に相当するとか(出典:日本水フォーラム)。
このもとになるのが、食糧や商品が作られるまでに使われる水の総量を計算に入れる「バーチャルウォーター」。たとえば野菜なら灌漑用の水、食肉の場合は家畜が飲む分はもちろん飼料穀物を育てるのに必要な水などを加算します。これらの食材が輸入であれば、それだけの水を輸入したに等しいと計算するのです。

日本は降水量が多いからたくさん使っても環境に影響はないのでは?というのも実は間違い。水の浄水から下水処理、水道管に圧力をかけて重い水をすみずみまで送るためにたくさんのエネルギーが使われている。節水は省エネ、二酸化炭素削減になるのだ。

わあ、おいしそうなローストビーフ! ……でもちょっと待って。牛を育てるのには大量の水が使われる。例えば牛肉80グラムとごはん茶碗1杯半(約110グラム)のお米で牛丼弁当を作るためには、約2トンもの水が使われているのだ。 では、私たちができることは? すぐにできるのが、節水の工夫。日本中の人たちがシャワーの時間を10秒短くすると、25mプール約4つ分の削減になるとか。さきほどのバーチャルウォーターの考え方から、輸入食材を避けて国内で生産された食材を買うのも毎日の生活の中でできます。また、海外ではロンドンやニューヨークで「遠くから来るミネラルウォーターではなく身近な水道水を飲もう!」とキャンペーン中。私たちも見習いたいですね。開発途上国の人たちの目線にたって水問題解決をおこなうエキスパート、オックスファムやピースウォーターキャンペーンをおこなうピースウインズなど、開発途上国で支援活動をおこなう国際NGOサポートするのも有効です。

毎年「ウォーター・プラネット・キャンペーン」をおこなっているThink the EarthプロジェクトのHP。マイ水筒を持つライフスタイルを提案したり、水のことを身近に感じられる写真を集めたページがあったり、水に関するエピソードがあったり、楽しく水のことを考えられる工夫がいっぱい。 日本なら、蛇口をひねれば簡単にあふれ出るきれいな水。でも実は、水は限りある資源なのです。未来のこと、世界とのつながりを考えながら、ありがたく大切に使いたいですね。
取材・写真&ライティング/阿久津美穂(Slow Media Works) |