■子どもの病室訪問ボランティアを続けて16年
NPO法人『病気の子供支援ネット 遊びのボランティア』は、病室の子どもたちに遊びと笑顔を届けて16年になる。毎週土曜日、ボランティアのスタッフが小児病棟を訪れるのだ。最初は表情が硬くてもボランティアたちの笑顔にすぐ打ち解け、ベッドのうえで折り紙で遊ぶ子。体調が安定している子はベッドを出て、プレイルームの積み木やゲームに目を輝かす。
子どもの看病にあたる親たちは「子どもは『ボラン、ボラン』っていつも楽しみにしているんですよ」「ボランティアさんたちが来てくれるおかげで、私たちも用事をしたりほっと息をついたりする時間ができるんです」と語る。そう、ボランティアスタッフは子どもたちに楽しい時間と日常の安らぎをもたらすだけでなく、子どもに朝から晩までずうっと付き添い、疲れきってしまう親たちにも、ゆとりのひとときも提供しているのだ。

小児病棟での長期入院は、子ども本人にとっても看病する家族にとっても辛いもの。病棟保育士の配置も一部進められてはいるものの、全国の小児科病棟の約2割に満たないのが現状だとか。
■地道な活動を重ね、病院側の理解を得るまでに
代表理事をつとめる坂上和子さんが「子どもたちと遊んであげてほしい」と、病院に子どもを通わせる家庭から相談を受けたのは91年のことだ。当時、訪問保育士をしていた坂上さんは、さっそく仲間に呼びかけをスタート。だが病院独自の規則や慣習の壁は決して薄くはなかった。当時はまだボランティアへの理解も今よりもずうっと低い時代。ならば実績をつくろう、と病院側の理解を得るため詳細に活動の記録をとり、それを目に見えるようにした。
がらんとしていたプレイルームにおもちゃや絵本を運び、歩けないこどもたちのために個室も訪問する。もちろん衛生状態には細心の注意をはらう。ぐったりしていた子どもが起きて遊び始めた、誰とも口をきかなかった中学生がボランティアと話すようになった……地道な病院訪問は着実な成果をあげて途切れることなく続き、現在に至るまで無事故を誇っている。
小児がんと闘う8歳の少女がいた。病気のせいで失明。クリーンルームで治療を続けていたために、ベッドの外に出たくても出られず、外にも行けない。ベッドサイドまでスタッフが2人、来ることになった。あやとり、編み物、風船、楽器遊び……。目が見えないぶん、指先の感覚を大事にする遊びが中心になった。ストレスをためてベッドをたたいて泣いていた少女から涙が消え、笑顔が戻ってきた。ベッドサイドにはあたたかな空気が流れ、少女の笑い声が廊下に響くまでに。以前は母親がトイレに行くのですら「ママ、行っちゃだめ!」と言っていたが、母親は安心して買い物や銭湯に行けるようになった。病状が進み、集中治療室に入るようになっても、スタッフは毎日通い続けた。少女が天国に召された後、スタッフたちは少女が行きたがっていたディズニーランドに出かけ、彼女を偲んだという。

ボランティアスタッフは、病棟内のプレイルームやベッドサイドなど、子どもの症状に合わせた遊びを考える。スタッフとの触れ合いは、子どもにとっては「普通の生活」に触れる貴重な時間でもある。
■ボランティア運営だけでは厳しい側面も
とはいえ、ボランティアベースの活動を続けるのは並大抵のことではない。おもちゃや絵本はボランティアスタッフが自費で買う場合が多く、コーディネートのための通信費だってかかる。だが、坂上さんたちの活動に行政からの支援はなく、会費や寄付が頼りだ。「ぜひ私たちの活動を理解して支えてほしい」と坂上さんは訴える。『病気の子供支援ネット』を支援するには、ボランティアスタッフとしての参加以外にも、会員となって年会費を支払う方法もある。その年会費も、気軽に、そして息長く支援をしてほしいという思いから、1000円と安く抑えられている。保育や教育、経理やパソコンなど、スキルをもつ人たちの参加も募集中だ。病室の子どもたちに笑顔を運ぶ活動を、あなたも応援してみてはどうだろう。
取材・写真&ライティング/エンゼルあつみ |