地球温暖化の影響としてよく使われているホッキョクグマ(シロクマ)の写真。映画にもなりましたよね。温暖化のために近い将来絶滅する可能性も言われていますが、果たしてどのくらい深刻なのか、国際的な自然保護NGOの「WWF」に伺ってきました。

WWFが2002年にカナダ・ハドソン湾で行った調査によると、ホッキョクグマの子グマの生存率は44%まで下がっていたという。2006年には、絶滅危惧種の中でも今から100年以内に絶滅してしまう可能性の高い「危急種」に指定された。photo / Polar Bear, Ursus maritimus, mother with cubs. Churchill area, Manitoba, Canada ©WWF-Canon/ Michel TERRETTAZ ■ホッキョクグマは100年後にはいなくなる!?
北極の氷は、温暖化の影響を受け、かつてない速さで溶けています。IPCC第4次評価報告書によると、地球温暖化によって、ここ100年で世界の平均気温が0.74度上がっているのですが、北極ではその2倍以上も気温が上がっているとか。北極はもともと陸地ではなく海に浮かぶ巨大な氷のかたまり。多くの研究者が「世紀末までに、夏は、北極海の氷がすべて溶けてなくなるだろう」と言っています。

北極の衛星写真。左のグレーがユーラシア大陸、右が北米大陸。白い部分が残っている氷。北極の氷は2007年9月24日に記録史上最少の面積になった。前回の最小面積(2005年)から、さらに日本列島2.8個分の氷がなくなったことになる。photo / JAXA この影響を最も大きく受けている動物が、地上最大の肉食動物と言われているホッキョクグマ。ホッキョクグマは陸の動物ですが、氷原や氷山が狩りの場所。息つぎのために氷の間から顔を出すアザラシなどを獲っています。泳ぎは上手な動物ですが、ハイスピードで泳ぐアザラシを水中でつかまえられるほどではありません。そのため、氷が減る=狩りの機会が減って食糧不足になるのです。なかでも影響を受けているのがメス。メスは春と秋にたくさん獲物をとって脂肪をたくわえ、冬は巣穴にこもり、ほぼ絶食状態で春先に出産、授乳・子育てをします。ここ数年は栄養不足などの影響で、子グマの生存率が下がっています。
WWFは、2002年にホッキョクグマの生息域南限に位置するカナダのハドソン湾で調査をし、ホッキョクグマが温暖化によって危機に追い込まれているという報告を発表。「The Polar Bear Tracker 〜ホッキョクグマ衛星追跡プロジェクト」という継続的な調査も実施、ホッキョクグマに発信器つきの首輪をつけ、衛星で追跡しています(追跡の結果はこちらから)。

追跡しているホッキョクグマは、北極圏3箇所12頭。発信器をつける際にそれぞれにクマの栄養状態を記録し、その移動を衛星で追跡することによって、氷の消失がホッキョクグマに及ぼす影響を調べています。「調査は各種の研究機関の共同で行っていますが、WWFは温暖化との関連調査や、調査の資金集め、Webサイトなどを通じた情報発信をおこなっています。ぜひ多くの方々にホッキョクグマの厳しい現状を知ってもらい、地球温暖化への危機感を高めてもらえれば、と思っています」(WWFジャパン気候変動オフィサー・小西雅子さん) photo / WWF cameraman Thomas THOMASSON filming the tagging of polar bears (Ursus maritimus). Arctic, Norway, Svalbard ©WWF-Canon/ Tanya PETERSEN どうやら、このまま温暖化が進み北極の氷が溶け続けると、ホッキョクグマの絶滅は本当に避けられない状況。「でもこれはホッキョクグマだけの問題ではないのです」とWWFジャパン気候変動オフィサー・小西雅子さんは言います。「ホッキョクグマは、全ての生きものがきちんと生きることで初めてしっかり生きられる、北極での食物連鎖の頂点。一方、人間はいわば地球全体の食物連鎖の頂点。このまま温暖化が進めば、人間の中にも温暖化の影響で困難に直面する人たちが増えてくると思います。ホッキョクグマが『かわいそう』ではなくて、それは人類の明日の姿なんです」。
■シロクマを救いたい! 私たちにできることは?
シロクマは救いたいけど、世界の温暖化を止めるなんてスケールが大きすぎて私には関係ない……。私ひとりが何かしても、何も変わらないし、と思っていますか? ちょっと待って。私たちにできることはあります!
まず、シンプルだけれど大事なのは、関心を持つこと。地球温暖化というのは、ただ地球が暖かくなって氷が溶けるだけじゃなくて、生活をおびやかされる動物や人間がたくさんいるということ。そしてホッキョクグマは明日の我が身だということを心に留める。そのうえで、希望を捨てずに、温暖化をくいとめるためにできること――フードマイレージの小さな食品を買う、カーボンオフセットをしてみるとか、携帯電話の充電器を毎回コンセントから抜くなどなど、一見地味だけど、日々実践できることを始めることが大事です。
これに加えてWWFの小西さんからは、こんな面白い提案が。自分のCO2排出量を半減させることを目標に、数十万円でブランドバッグを買ったつもりで、ヒートポンプ式の給湯器や家庭用コジェネ発電機を買ってみる!それだけで、家庭のCO2排出量は半減できるとか。そして政治にもの申すこと! CO2排出が多いのは産業部門。政治の力で法律を作り、排出量を削減させる必要があります。そのために、選挙ではCO2削減政策を支持している政党や政治家に投票したり、日頃から政治の動きにも関心を持って、行動することが大事、とのこと。

こんな携帯ストラップを買うことも、私たちができることの1つ。これはWWFと三越伊勢丹ホールディングスの共同チャリティキャンペーンで販売されるもの。全国の三越、伊勢丹32店舗で4月1日から販売され、価格の300円のうち100円がWWFに寄付される。伊勢丹新宿店と日本橋三越本店では、4月1〜7日『美しい地球・守りたい命とWWF展』が開催される。このストラップが入場券がわりになる。(photo / BE@RBRICK TM & ©2001-2008 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.) 「ホッキョクグマは明日の我が身だ!」と心に留め、地球温暖化による気温上昇を食い止めていくために、できることからやっていきましょう。
(取材・文/阿久津美穂 Slow Media Works)
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