7月7〜9日に開かれる洞爺湖サミット。議長国の日本は、温暖化対策が主な議題のこのサミットでリーダーシップを発揮できるか? 今回は3月中旬におこなわれた「G20」会議などの今までの動き、日本のとるべき立場や主張がどうなのか、専門家への取材をもとに、ぐぐっと掘り下げます!

サミットは、G8(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシア)の首脳とEUの議長が毎年集まり、国際社会のあらゆる問題について話し合う会議。今年のメインテーマは、アフリカ問題と地球温暖化に関する問題。舞台となる北海道の洞爺湖は、山と湖に囲まれた自然が豊かな場所なので、環境問題のイメージにあうとされた。(photo / 北海道洞爺湖サミット道民会議)
■日本提案の温暖化対策案は総スカン。どうして?
サミットは首脳が3日間集まって話すだけと思われがちですが、そうではありません。前年出た課題について各国が会議や交渉を重ねて準備し、総まとめとして毎年首脳がサミットで会議をするのです。今回の洞爺湖に課せられたトピックのうち、3年がかりで開かれてきた大きな課題がG20会議でした。
G20は、2005年にイギリスでおこなわれたグレンイーグルスサミットで実施が決まった、地球温暖化問題、クリーンエネルギーなどについて話し合う会議。G8だけでなく、ブラジル、中国、インドなどの開発途上国も含む20ヶ国(だからG20)の環境・エネルギー担当閣僚が参加する会議で、2005年から毎年集まり、その結果が今年の洞爺湖サミットで報告される予定です。
このG20の最後の会議が、3月中旬に千葉で開催されました。ところが、日本が議長総括で京都議定書の約束期間が終わる2013年からの枠組み(次の議定書)として「セクター別アプローチ」を提案したところ、途上国からの反発が強く会場は騒然。どうしてこんなに嫌われたのでしょうか。

オイルショック以来、猛烈に省エネに励んで来た結果、優秀なエネルギー効率を誇る日本の製造業。これ以上、欧米が掲げるほどの省エネをしたら経済成長できないと、日本の炭素排出量の総量規制を厳しくしないように経団連などは活発に動いている。日本のセクター別アプローチはここから来ているのではないか、と世界は睨んでいるのです。 ■アイディアとしてはいい面もある日本の提案だけど
このセクター別アプローチは日本独自の提案です。鉄鋼・電力・機械・セメントなど産業部門ごとに国を横断して束ね、省エネの進み具合(エネルギー効率)をチェックしようという案。セクター(産業部門)ごとに省エネ目標を設定し、結果的に地球全体で温室効果ガスを削減していこう、という方法です。
この考え方だけを聞くと悪くなさそうですが……。そこで、世界の環境政治のエキスパートである慶応大学環境情報学部教授・浜中裕徳先生にお話を伺いしました。
「セクター別アプローチは、考え方としてはいい面も持っています。各産業の具体的な省エネ対策の技術や実例を、国の壁を越えて共有することができます。例えば中国の製鉄工場で改善できる点なども見つけやすくなる。また今までのように、国ごとの排出削減目標の達成はそれぞれの国が自分で考えてやりなさいという方法だと、特に途上国の場合、具体策を作りにくい。セクター別アプローチなら、産業ごとに他国の削減技術を取り入れ、活用しやすくなる」

慶応大学教授の前には環境省地球環境審議官として活躍していた浜中先生。特に地球温暖化に関する会議については、実際に会議の参加していたことも多かったとのこと。今も環境政策の第一線で、世界各国の政府関係者と意見を交わしている。(photo / Akutsu Miho) ■数値目標から逃れようとして?日本は信用を失った
それでもセクター別アプローチが不評を買った主な原因は、浜中先生によると2つ。1つめは、昨年12月の国連気候変動バリ会議での日本のイメージダウン。
バリ会議は、京都議定書の次の議定書を作るため、世界各国が話し合いのテーブルについた場でした。この時、EUが「1990年に比べて20%削減する」などと数値目標を宣言したのに対し、日本は「アメリカや中国などみんなを引き込むのが大切」ということやセクター別アプローチのことばかり述べ、具体的な削減数値に全く触れなかったのです。結果、「日本は態度がうやむや」という評価となり、この会議に参加していたNGOメンバー100人が毎日選ぶ、最も不名誉な「化石賞」を連続してもらってしまったほど。もちろんこれは世界中に報道されました。日本ではあまり報道されませんでしたが。
セクター別アプローチの根底にあるのは、日本産業界からの圧力ではないか、という声も。日本の産業界は1970年代のオイルショックを受けて省エネ努力をし、世界トップレベルの省エネ効率を実現しています。「これ以上の省エネは乾いた雑巾を絞るようなものだ! 今までの努力も認めてもらえる方法にしてほしい」という声が強いのです。でも、この声は世界のメディアでも報道されているので、「日本は京都議定書よりも厳しい数値目標を逃れたくてセクター別アプローチを提案している」と不信感を抱かれています。
不評を買っている2つめの理由は、「各国がセクター別アプローチをもとに国ごとの総量を計算し、そこから数値目標を決めよう」という今回3月の日本の提案への反発。バリ会議では「セクター別アプローチは、先進国が技術提供・援助を具体化させるための方法」という説明だったので賛成した国もありました。しかし今回3月のG20では、日本がその前提には触れずに各国の総量での数値目標設定を提案したため、経済発展の勢いを止めるとして総量目標の設定に反対している中国、インドなどは猛反対。「なにぃ? 自国の数値目標が設定される!? さらに自分たちで努力しろとは! それは困る!」ということになったのです。
■ねじれ国会で、政治が世論に耳を澄ませている今がチャンス!!
うううむ、このままだと日本は温暖化対策に消極的な国というイメージを持たれ、国際社会から孤立しかねません。日本はどうすればいいの?
「今回の洞爺湖サミットは日本が議長国。これは、日本が温暖化に積極的なことを示す絶好のチャンス。今までのようにセクター別アプローチを主張するだけではなく、自然エネルギーの大幅拡大など地球温暖化対策への積極的な解決策を提案し、日本は総量削減に積極的だということを示すべきだと思います」(浜中先生)
もっとも、日本のプレゼンスもさることながら、いちばん大切なのは温暖化の進行にブレーキをかけること。私たち市民としても、もっと温暖化対策に積極的になって欲しいと政府に声を上げていきたい。浜中先生いわく「今のねじれ国会では両党が世論を非常に気にしている」ので、今はまたとないチャンスなのだとか。

声をあげる方法のひとつが、イベントに参加すること。例えばこれは2005年に始まったJ8(ジュニア・エイト)サミット。サミットと同時期にG8各国と開発途上国から選ばれた14〜18歳の子どもが集まり、地球温暖化などの世界の問題について話し合い、世界と首脳陣にむけて発表します。各国首脳もしっかりとこの意見に耳を傾けるので、ぜひ子どもたちを応援して! 提言や応援メッセージもこちらで受付中。(photo / J8サミット事務局 ©UNICEF

洞爺湖サミットへのアピールの意味も込め、子どもたちに地球にやさしい知恵を教えながら沖縄から北海道まで行脚するというアースキャラバン。92年のリオサミットで12歳で伝説的なスピーチをおこなった環境活動家のセヴァン・スズキさん、冒険家の高橋素晴さんと西表島の子どもたちだ。あなたの近くでもイベントが行われているかも。チェックしてみて!(photo / 鷲尾和彦)
環境に関するイベントやワークショップに参加する、署名をする、ブログに意見を書く、地元の政治家に手紙を書く……もちろん、家族や友だちと温暖化などについて話すことも有効です。日本が、洞爺湖サミットで本当の意味で地球の未来を見据えたリーダーシップがとれるよう、今後の動きにしっかり注目して、市民として意見を表していきましょう。
(取材・文/阿久津美穂 Slow Media Works)
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