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更新日:2008年5月9日

環境とか未来とか大切にしたいね、通信


第45回 日本の西の端、西表島が漂着ゴミに喘いでいる
地元まかせではなく、国や企業も協力を

■命の揺りかご、マングローブがプラスティック汚染に

  きれいな海。見ているだけでも心が洗われます。これから沖縄はまさにシーズン、たくさんの人が訪れることでしょう。沖縄本島よりさらに南西には、大小の島々からなる八重山諸島があります。そのなかで最大の西表(いりおもて)島は、いまだ手つかずの自然が残り、国内最大のマングローブのジャングルがあります。

  このマングローブジャングルは、島の自然にとってはなくてはならない存在です。落ち葉はプランクトンや魚貝類の食べ物となり、網の目のように張り巡らされた根や茎は生きものたちのちょうどよい隠れ家になります。またマングローブが生える干潟や湿地は貝類、甲殻類をたくさん養う力を持つため、天然の水質浄化フィルターの機能も果たしています。人間が土地開発などで出してしまう土砂や赤土、生活排水や農牧業排水などが海を汚すのを食い止める働きもしています。

潮が引いた西表島のマングローブ。美しい海を維持するため、マングローブはなくてはならない場所。たくさんの生物の貴重なすみかです。ちなみに、マングローブは植物の名前と思われがちですが、じつは河口など海水と淡水が混ざり合う干潟や湿地に生える植物の総称(あるいは林全体のことも指す)。西表島にはヤエヤマヒルギなど7種が生えている。


  でも、この大切なマングローブジャングルがいま危機にさらされています。理由は漂着ゴミ。発泡スチロールやプラスティック製品、ペットボトル、洗剤容器、ドラム缶、漁具類などありとあらゆるゴミが大量に漂着しているのです。

  塩分の濃い泥湿地に生息するマングローブは、厳しい環境に対応できるようあの根が絡み合う独特な形になったと考えられています。その特徴ある根に一度からまったゴミが自然に外れることはほぼ不可能。ほおっておくと林全体がゴミ箱のようになってしまうのです。ゴミから有害な化学物質が溶け出し土壌汚染が進んでいることも判明しました。住民やボランティアによる清掃活動も行われていますが、漂着ゴミは次から次へと流れてきます。

潮の満ち引きで、次第に林の奥深くまで入り込んでしまう漂着ゴミ。西表の場合、黒潮に乗ってやってくる中国や韓国からの生活ゴミ、漁船が捨てる浮きや網、魚のトロ箱などが目立つ。


プラスティックのゴミを貝と間違えているオオヤドカリ。オオヤドカリは国の天然記念物でもある。「漂着ゴミは人間を含む生態系に大きく影響することです。魚の匂いが染みこんでいるトロ箱の発泡スチロールを天然記念物のオオヤドカリが食べてしまう。そのヤドカリをオカガニが食べそれを魚が食べ、その魚を人が食べる。化学物質汚染は人間にも汚染が広がっているんです」(西表エコプロジェクト代表・森本孝房さん)



■ゴミとはいえ、地元まかせでは解決できない規模

  集めた漂着ゴミの処理にも難題が。ゴミを船で石垣島などへ運ぶ運送費用が非常に高く、たとえば海岸2kmの漂着ゴミで約140万円かかるのです。

  環境省が昨年から試験的に対策調査を始めましたが、この程度の調査では不十分と、漂着ゴミ収集に携わってきた西表エコプロジェクトの代表・森本孝房さんは見ています。「冬は北風が持ってくる北部の漂着ゴミしか調査できません。でも南風が吹けば南部にもゴミが上がるでしょう。それら全部のゴミ処理にどれくらいの費用と手間がかかるか、延長して調べてほしい」。

1ヶ月に1〜2回、ボランティアによって干潟や海岸近辺のゴミ拾いが行われている。回収されるゴミは、「トン袋」と呼ばれる大型の袋で21袋になったことも。


  先日某テレビ局の番組で、西表島の漂着ゴミ処理対策として、ゴミの大半を占めるプラスティックを薬品で溶かして縮小することで輸送コストを抑えるという対策や、プラスティックを石油状の燃料資源に戻す機械が紹介されていました。しかし現実には薬品や装置が高額なこと、漂着ゴミに付着した汚れを落とす作業が必要なことなど課題も多く、すぐには実用的でないとか。

  「私たちの活動だけでは限界があります。国、企業と地域が協力しなければコストの問題は解決しないでしょう」と森本さんはいいます。漂着ゴミは日本以外からのものが多いのですが、どの国の人も、いままで捨てていたゴミが資源になると知れば、簡単に捨てることはなくなるでしょう。まずは国内で調査・処理方法の確立を呼びかけ、他の国にもリユース・リサイクル技術などを伝えることが急がれます。

  きれいな島、海を残したい。失ってからでは遅いのです。


文/環境ライター・鞍作トリ 写真/西表エコプロジェクト
関連LINK
漂着ごみ、資金難で搬出できず 西表エコプロジェクト(八重山毎日新聞)
美ら海ねっと(八重山環境ネットワーク)
西表島エコツーリズム協会
西表島バナナハウス(森本孝房さんのエコツアー会社)

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