毎晩家族で楽しく過ごしたいなら、ムーブメントを起こそう
数年前、ファッション誌の編集をしていたとき、ノルウェーのオスロに暮らす女性たちを取材する機会があった。初めての街はいつも発見がいっぱいで楽しいものだけれど、この街ではショックを受けた。かなり、考えさせられた。
だって、午後5時には仕事を終えたカップルがレストランで仲良くディナーを囲んでいるのだ。ノルウェーのビジネスアワーは朝8時から午後4時で、残業はほとんどない。建前じゃなくて、本当にほとんどない。だから、午後5時には多くの人が買いものを終えて家に着いているか、レストランで注文を始めている。子どものいるカップル(半数近くが籍を入れていない事実婚)なら、保育園や幼稚園で子どもをピックアップして、家族揃ってお夕飯を食べている。
そんな光景を目の当たりにして、私はうらやましくて身悶えした。「なんでこれが日本でできないのー?」と同行の日本人女性カメラマンと嘆きあった。
育児や介護の公的サービスが整っているから、子どもを持つ女性でもごく普通に働き続けられる社会(北欧では共働きが一般的)。短時間労働だから、大切な人と過ごす時間や趣味の時間をしっかりとれる暮らし。家庭も仕事も手に入れられる人生。
考えてみよう。日本で結婚して子どもを持つとする。よっぽど環境に恵まれるか血のにじむような努力をしないかぎり、子どもを預けて働き続けることは難しいから、やっぱり専業主婦かそれに近い状態になる。となれば、夫に一家を支えられるだけ稼いできてもらわなければならない。彼は頑張るだろう。出世しようと残業も厭わない、優秀なサラリーマンになるだろう。でも、それじゃあ夫に会えるのはせいぜい週末だけ。その週末も、彼は疲れて寝こけているかも……。そんな生活より、オスロの人々のように、昼間は子どもは預けてふたりとも短時間働き、毎晩の長い夜を一緒に楽しめるほうが人生豊かなんじゃないだろうか。
もっとも、今でこそ高福祉・男女平等・短時間労働のお手本のようなノルウェーも、30年ほど前までは今の日本のような状況だったそう。しかし社会を変えていこうという運動が起き、国民全体の意識改革を進めることでやっと今の状況が実現したのだそうだ。人口比でノルウェーの30倍大きな日本。図体が大きい分動きにくいけれど、この国でもムーブメントを起こすことはできないだろうか。失業率5%時代を迎え、やっとワークシェアリングという言葉がマスコミで囁かれるようになってきた今が、チャンスかもしれない。
|
 |
 |
女性の社会進出が進んで、ノルウェーの出生率は1.8前後まで上がっているという。写真はオスロ郊外。人口50万人の小さな首都だから、15分もクルマで走れば、すぐにこんな風景に出会える。
|
|