2011年秋冬の新作から私のおすすめ。(上)ドレス\178,500、ショートブーツ\102,900、(下)ノーカラージャケット\166,950、スカート\85,050、ショートブーツ102,900/ドリス ヴァン ノッテン(ドリス ヴァン ノッテン青山店)
2005年秋冬のコレクションより。異なる素材やプリントのレイヤードなど、その美世界は昔も今も変わらない。
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ドリス ヴァン ノッテン青山店 tel:03−5766−8608
http://www.driesvannoten.be/
MIYAKO AKIYAMA/
エディター、ラグジュアリー・ラボ主宰
1969年東京生まれ。東京女子大学卒業後、雑誌編集者に。元『セブンシーズ』『ハーパース・バザー日本版』編集長。趣味は毎朝のイヌの散歩と週イチの乗馬、ときどきの歌舞伎・オペラ・相撲鑑賞。好物はシャンパンと生肉、おすし。「値段の大小ではなく、ゼイタクなモノやコトは心と暮らしを豊かにしてくれる」をモットーに、ラグジュアリー・ラボを主宰。ブログ「酒と肉とモードの日々」も好評更新中。
今年の2月にスタートしたこの連載ですが、私事の都合により今回が最終回となります。
残念ですが、最後に私がファッションにおいて一番大切にしている言葉について考えてみたいと思います。それは「不易流行」という言葉。かつて松尾芭蕉が俳諧の極意を語るために使った言葉だとされており、不易は変わらないこと、流行はご存じのように時に応じて移り変わりゆくことを指します。その解釈には諸説あるのですが、私の理解は、この一見相反することを指す「不易」と「流行」は実はともに真である、というもの。シーズン毎にガラッと変わる流行を提案してくるエッジの効いたブランドも、十年一日のごとく同じものを着ている人も、突き詰めればメビウスの輪のごとく同じところに存在し、等しく美である、という意味ではないかと長年考え続けてきました。禅問答みたいですよね? わかりにくくて申し訳ありません。
では私最愛のデザイナー、ドリス ヴァン ノッテンで考えてみましょう。彼は1958年、ベルギー・アントワープにテーラーの3代めとして生まれました。アン・ドゥムルメステールなどとともにアントワープ・シックス(アントワープ王立芸術アカデミーの卒業生からなるデザイナーグループ)の一員として80年代に注目されるようになり、その後の活躍はご存知の方も多いでしょう。ここにご紹介するのは2011年の秋冬コレクションですが、今シーズンはディアギレフ、ニジンスキーなどにインスピレーションソースを得たとあって、どことなくバレエリュス(ロシアのバレエ)のタッチを感じさせるものに仕上がっています。資料には「自由な心をもつ女性……何にもとらわれることなく、ごく自然に生まれるそのスタイルと振る舞い」とありますが、これは確かにさまざまな物事を経験し、知識を得たうえであえて自由に振る舞う、確信犯のためのスタイルだといえます。つまりは成熟した、精神性の高い女性のためのモードです。
そのうえで、これらのスタイルを2005年の秋冬のものと比べてみましょう。もしこれが他ブランドのものであれば、5年も前のスタイルはどこか古めかしく、現在のものではないのが歴然と判るものですが、ドリス ヴァン ノッテンはさにあらず。今もなお新鮮に、欲しいと思わせてくれる作品です。もし私がこのルックを私物として持っていたとしても、今年の秋それを堂々と着ることができるでしょう。これはデザイナーの女性観や美に対しての概念が変わることなく、ぶれていないから成せる技です。
では彼は「不易」一辺倒のデザイナーなのか? 答は断じてNOです。ドリス ヴァン ノッテンは現在という時代が持つ空気感を絶妙に取り込むこと=「流行」にも長けています。つまり「不易」と「流行」を難なく同じ場所に混在させてしまうのがドリス ヴァン ノッテンという稀有な存在であり、それが故に彼は私の心を惹きつけてやみません。
最終回という気負いがあったせいか、少々堅苦しい話になりました。連載がスタートした今年2月から、3月の大災害を経て、ファッションやラグジュアリーについての価値観も大きく変化したと思います。その重要な時期に、このような貴重な機会をいただけたことに感謝します。ありがとうございました。