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西麻布霞町の交差点近くに、人目を引くビルが2軒隣り合って並んでいます。なんじゃこりゃ? 思わず運転中の車を停車させて写真を撮ってしまいました。左側の菱形のテラコッタタイルを貼り付けた丸いビルは『ペンローズ・タワー』で、その右隣にある建築『ザ・ウォール』と同じイギリスの建築家、ナイジェル・コーツによるものです。
1993年頃、この建物は両方いっぺんに姿を現し、『ザ・ウォール』はひと頃、『j’mens』(編集部注・男性ダンサーによるショーが人気だったエンターテイメント・バー)など人気店をテナントに持ち、隆盛を極めました。それ以後も話題のデザイナーによるカフェやら和食屋さんやらが入っては消えています。『ペンローズ・タワー』のほうも全館同じテイラーの服屋が入ったり、贅の極みを尽くしたテナントで華やいだ日々があったものの、現在は「テナント募集」の張り紙が。空いていることが多いようです。

このビル群は、もともとイギリス非営利芸術団体のビルらしく、「ペンローズ・インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート(PICA)」とも呼ばれます。設計者ナイジェル・コーツとのコラボによって1988年末から5年かけて建設され、1993年10月14日のオープンによって完成、という意匠的には非常に特別なアートビルであります。
双方ともいくつものエレメントでつくられており、左側の『ペンローズ』は、菱形テラコッタタイル、それを囲む筋タイル、その筋タイルの交差している部分のスタッドライト、スライド式スクリーン、シリンダー状の鉄骨階段、シースルーエレベーター、屋上にあるパラボナアンテナのようなデザインとやりたい放題、インパクトの固まり建築です。右側の『ザ・ウォール』を見ると、砂岩を使った壁がまるで廃墟のようなイメージ。ナルニア国物語に登場するような不思議な生き物がいたり、建物がパワフルすぎて、近づくとじんわり脇に汗かきます(笑)。
この建物、ちゃんと朽ちないで残っているのがすごいですね。かなりいい状態で。これはコーツが遊びの空間をはるかに超えた、建築家としての「リアリティ」を技量としてもっていたという証明ですよね。
しかしこの装飾美はバブル後日本が切り捨ててきた感覚で、いまや「バブルの遺産」としか見られていない現実がさみしい気がします。最近の建物はどんどん右へ習えで、機能優先のミニマム主義になってしまって、……もっとこういう「孤高の建物」「現代的な唯一無二の建築」が普通に正統な評価を受けていいはずなのにな、と。これはコーツが「東京という画用紙」に書いた大アートですからね。バブルがあったからこそ生まれた日本人の大事な共有財産なのに。
僕が見学している間に建物好きの外国人の見学者が数名、壁のタイルに触ったり写真を撮ったりしてました。う〜む。複雑。
このふたつの建物はまだまだ時を刻んで、本当の使命を果たすべく、更に輝いて残っていってほしいです。
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