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ツアーが始まりました。
客席側からは見えないですが、ホールにもいろいろな“部屋”があります。舞台を客間やリビングだとすると楽屋はベッドルーム、ケータリングスペースはキッチン、スタッフルームはさしづめ、調べものをする書斎といったところでしょうか。“間取り”もさまざまで、それに応じて本番へのテンションの上げ方を僕は調節します。
貸物でも人気の“デザイナーズ”物件、ホール界でも増えました。ハイテックでソリッドなデザインのホール。初日を迎えたSHIBUYA-AXや全国にあるZepp系などがそれで、楽屋から舞台までの導線が近いので、わざわざ水分補給できるキッチンや着替え用のクローゼットを仮設しなくても済むのです。トイレも舞台すぐ脇だったり、合理的、シンプルな間取りが非常に使い勝手が良いです。

一方、楽屋が畳だったりする昔ながらの風格あるホールはどんどん老朽化が進み、建て替えが始まってます。跡地に巨大ホテルが建った場所もあり(旧富山市公会堂→ANAホテル)、建物好きにとってはせつなくなるような話です。日本が高度成長期に建てた味わい深い和洋折衷の空間、使い勝手よりもそれぞれの個性が際立っていて、何回も使ううちに不便ささえもしっくりきて、もうそこじゃなきゃダメ!
と思うくらいのめりこむホールもあります。
ここらへんの感覚、物件が手放せなくなるのと同じですね。ちょっぴりレトロで個性的な空間がなくなりつつあるのは賃貸物件に限らず、ホールや会館も同じで、僕は固唾を飲んでそれを見守っています。

ちなみに、ツアー最終日6月5日は渋谷公会堂(略して渋公)で迎えます。あらゆる音楽やエンタテイメントを創り出し、今も愛され続ける素晴らしいホールですが、この夏には建て替えです。「8時だよ、全員集合」の生放送中、舞台が回ったあの“お盆”は改築後なくなるので、僕の千秋楽でそれを回す演出を考えています。渋公にも喜んでもらえれば、嬉しいなあと思います。
楽屋では緊張をほぐしたり、汗を拭いたり、自分の顔を鏡に映したり、悔し泪や嬉し泪を流したり。そして楽屋から舞台に向かう、そででの一瞬の間には、僕達は普段会うことのないような「ホールの神様」と無意識に対話をします。
「今日もいい時間になりますように」
「一生懸命頑張るので守ってて下さい」
きっと「ホールの神様」はそんな僕らの背中をじっと見守り続けてくれてるんでしょうね。
そういう「ホールの神様」みたいな存在、普通の住空間にも宿っているのかもしれないですね。
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