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ツアーで名古屋を訪れたときに足をのばし、「愛・地球博」の「サツキとメイの家」を観に行きました。「となりのトトロ」に出てくるあの一軒家です。
昭和30年代のサツキとメイが住んでいたあの家が、昭和初期の建築手法とエイジング(経年変化加工)によって、映画に忠実に蘇りました。家具や調度品もかなりリアルでびっくりでした。
昔ながらの茶の間、手押しポンプのある台所、井戸のある裏庭、日当たりのいい縁側や五右衛門風呂。 サツキとメイがこの家を初めて訪れたときにやったように、僕ら一行は押入れや箪笥の中を覗いたり、中の物に手で触れてみたり、自由に家中を探検しました。勢い余って女性用肌着が入っている引き出しを開けてしまい、あわてて閉めるなんてハプニングもありましたが、夢中で子どもに戻っている時間はほんとに楽しかったです。
昭和初期建築の家には、ところどころ「場の気配」「空気のよどみ」のようなものがあります。ふすまや障子のようなもので「仕切る」だけの空間では、向こう側の誰かの息づかいや明かりを感じながら生活できます。人が人の気配を察しながら、関わり合ったり離れたり、そこに心地良い「安心感」が漂うんですね。

僕が住んでいた昭和40年代の公団の茶の間をふと思い出しました。今の建築における間取りはそれぞれが完全に独立し、関係を遮断するところにプライバシーを守るというプライオリティがあるように思うけれど、当時は狭い空間をただふすまで仕切るだけ。それ故に家族が簡単に集れたし、お互いを何気なく感じられる隙間がありました。茶の間って場所は、ある種独特の「磁場」であり、「いわくありげ」な雰囲気がする場所でありました。濃密なコミュニケーションのために「必要な狭さ」と、それぞれが適度に独立して寛げるように工夫された「仕切り」。これを取っ払うと一気に公な雰囲気を醸し出す大箱となり冠婚葬祭などに使われるわけです。
まさに、日本の風土から生まれた「間取り設計の妙」が昭和初期建築の家には詰まっているように思います。 水場は低く、外に近い。
外と内が手と手を結び、四季の移ろいを家の中を通る風の匂いで感じられるような心に贅沢な暮らし。 「人と人」「人と自然」が密接に関わり合ったこの時代の空間レイアウトのアイディアは、現代の日本人にも充分に生かせるものがたくさんあるなと、この日僕は感じました。
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