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更新日:2005年4月27日 RSS


渡辺葉のポートランド通信

文・写真/渡辺 葉



4月 その2

鳥たちに会いたくて、森へ……
そこには不思議がいっぱいだった


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 「ピイピイ」と声がしたので窓の外をふと見ると、すてきな訪問者が来ていた。薄茶色の羽をした2羽の小鳥。彼らはエサ箱のまわりやテラスの手すりにちょん、ちょんと飛び乗っては、ピチュピチュとしゃべりながらエサをつついている。

 鳥のエサ箱を置いたのは、アパートの隣人が勧めてくれたからだ。「春から夏にかけては巣作りの時期だから、ちょうどいいわ」と、鳥にエサをあげるためのハンドブック(*1)を貸してくれ、ついでにキビやトウモロコシ、ヒマワリの種などの混ざったエサもおすそわけしてくれたのだった。

 ちょうど空いた木の箱があったので、本を参考に簡単なエサ箱を作り、テラスの手すりにかけてみた。丸一日しても誰も来ないのでちょっぴりショボンとしていたところに、初のお客が来てくれた……というわけである。
 この近所にはいろんな鳥たちがいる。通りを隔てたアパートの軒下では、ホシムクドリ(*2)が巣を作っている。必ず3羽いるところをみると、前の年の子どもが両親を手伝っているのかもしれない。軒下の小さな穴に巣を作っていて、朝になると「ピーユ、ピーユ」という鳴き声と一緒に3羽が順番に出てきて電線の上に飛び乗り、どこかへ飛び立っていく。日中、ときどきワラなどを加えては戻ってきて、軒下の穴の中にヒョイと姿を消す。テラスに彼らも来るといいな……と願っていたのだけれど、ホシムクドリは地面でエサ探しをするのが好きらしい。

 ときどき空を仰ぐと、鷹が上昇気流に乗って旋回しているのを見かける。ウィラーメット河周辺に棲む雁(*3)がカギの字編成で飛んで行くこともあるし、晴れて暖かい日には、ハチドリがブーンと羽音をたてて花の蜜を吸っていたりする。西の森に住むカラスたちが朝、街へ“出勤”するところだって見られるのだ。

 鳥たちを見ていたら、森に行きたくなった。街では出会えない鳥たちにも会えるかもしれない……。
 うちのアパートを出て5分ほど行くと、森林公園への入り口がある。2500へクタールもの広さ――ってどういうものなのか今いち実感がわかないけれど、とにかくかなり広い。徒歩で回ったら、きっと2、3日はかかるだろう。

 私がいつも行くのは、ほんの入り口のところ。でも車がビュンビュン通る道路を越えて一歩踏み入っただけで、ここは違う“場”なのだとわかる。神経のどこかがふわっと緩んで、自分の体がスポンジみたいに形や色、音、匂い、そして気配といったものを吸い込んでいく感じだ。そして無性に、うれしくなる。

 頭上高くに木々が緑の天蓋を作り、その下にはシダや苔、名も知れない草がびっしりとはえていた。高みから落ちたドングリが芽を出したのだろう、あちこちに私の肩くらいの高さのクヌギの子どもがすっくと立って、風に揺れる木漏れ日に葉をかざしている。ふと足下を見ると、うちのテラスにいるのと同じgeumが、誇らしげに黄色い花を咲かせていた。

木の梢で、鳥の声がする。
「ピーヨピーヨピッ、ツピピピピッ」

 よく見ると、小さな影があっちの枝からこっちの枝へと飛び移っている。そこここで「ヒヨヒヨヒヨ」とか「ヴィーヤ」とか、いろんな鳥がいろんな声でしゃべっていた。道はなだらかな坂を上り、バラ園へと続いている。(次ページへ



次のページでは……

バラ園を抜けていくと、プチプチと不思議な音。出会ったのは……?>>
ポートランド


テラスにえさ箱をつけたら……
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森の中にはこんな苔むした階段が……
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木々の間には、こんなふうに……
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森の日なたでは……
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わが家のテラスでも……
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バラ園に通じる小道への……
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*1
『North American Birdfeeder Handbook』。北米大陸の鳥たちのうち、特に人間がエサをあげることのできる鳥たちについて書いてある。それぞれの鳥の見分け方や鳴き声、巣作りの習慣なども載っていて面白い。鳥類のための自然保護団体、オーデュボン・ソサエティ刊。

*2
英語名はStarling。濃い青や紫、緑の輝きを持った黒い羽に黄色いくちばしが美しい鳥で、おしゃべり。モノマネも得意らしい。

*3
gooseの日本語訳を引くと、「雁、または鵞鳥」と出てくる。河辺で見かける彼らの風体はどちらかというと鵞鳥なのだが、「鵞鳥が空を飛んでいる」と書くとなんだか不思議な感じがしてしまう……のは、こちらの勝手なイメージのせいかも。ウィラーメット河はポートランドを南北に流れ、やがてコロンビア河と合流して太平洋に注ぎ込む。
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Profile
エッセイスト・翻訳家 渡辺 葉
渡辺 葉
ニューヨーク生活を経て、'04年春からオレゴン州ポートランドに移住。Cafeglobeでの人気連載2シリーズは『ニューヨークで見つけた気持ちのいい生活』『ニューヨークで見つけた気持ちのいい「ふたり生活」』として単行本化されている。


text & photos / Watanabe Yo
design / Takeue Tomoko