カフェグローブ9月 その1 全米一の地ビール天国!?だもの、秋風に吹かれて飲むのがウマイッんです - 渡辺葉のポートランド通信

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更新日:2005年9月14日

渡辺葉のポートランド通信

文・写真/渡辺 葉



9月 その1

全米一の地ビール天国!?ですから
秋風に吹かれて飲むのがまたウマイのっ


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 天高く、ビールがうまい!
 ……と思わず叫んでしまいましたが、サラリと透明感を増した風が、色づき始めた木の葉を揺らす今日この頃。オレゴンの地ビールはまさに味わいどきなのであります。ポートランドはなにしろ、人口当たりの地ビール醸造所数が全米一という呑んだくれ、じゃなかった、違いのワカルお土地柄。街中にも、作りたての生ビールが味わえるビアパブがいくつもある。
 たとえば、青空がすっきり爽やかな午後。私は迷わず、近所のパブ「ローレルウッド(*1)」に向かう。この店には広いテラスがあるので、そよ風に吹かれ、午後の陽を浴びながら生ビール、などという贅沢もできちゃうのだ。

 今の季節、私のお気に入りはゴールデンエール。この店ではいちばん軽い黄金色のビールで、どんな食べ物とも相性がいいし、ただそのまま飲んでもいい。口に含むとほのかにまだ青い洋梨を思わせるフルーティな香りが立ち上り、さっと舌の上で溶けるように消えていく。このビールはなにしろ、2002年度“ワールド・ビア・カップ”で金賞を受賞したビールだ。のどごしは軽いけれどなかなか実力派なのである。

「ローレルウッド」のようなマイクロブリュワリーのビールは、エールタイプが多い。一方、日本やアメリカの大手メーカーが作っているビールの多くは、ラガータイプ。ラガーもエールも原材料は同じで、水と麦、酵母とホップだ。では何が違うかというと、発酵の仕方が異なるのだとか。
 そもそもビールってどうやって作るの?と私も疑問に思ったので、ちょっと調べてみた。そこでわかったビールの製造プロセスとは……
1.麦を発芽させて麦芽にし、温風で“培燥”、つまりローストする。これが美しい色と芳ばしさの秘訣。
2.培燥した麦芽を砕いて水と混ぜ、適当な温度にしておくと、デンプン質が糖分に変わり、ほんのり甘い“麦汁”ができる(だからブリュワリーの近くでは、焼き芋みたいな甘い匂いが漂っている)。
3.ホップを入れる。ホップには苦み(&フルーティな味わい♪)をつけると同時に、麦汁を澄ませる働きもある。
4.ここに酵母を入れる。数日すると、酵母の働きで麦汁中の糖分のほとんどがアルコールと炭酸ガスに分解される。
5.これを濾過して一定期間熟成させれば、おいしいビールのできあがり。

 この過程4で、酵母が麦汁の底に沈み、比較的低温でじっくり発酵するものはラガータイプ(*2)、麦汁の上に浮いて比較的高温、短時間で発酵するとエールタイプ(*3)になる。味はどう違うかというと、ラガータイプは「スッキリ、爽やか」が身上。対するエールは「フルーティでやや複雑な味わい」が魅力だ。
 アメリカでは酒といえばこの人、と言われている酒類評論家のマイケル・ジャクソン(あのマイケル・ジャクソンではなくて、もっとフツーのおじさん的風貌の別人です。一瞬ドキっとしちゃうよね)に言わせると、ワインに例えればラガーは白、エールは赤なんだそう。確かにラガーはキリッと冷やしてゴクッと飲みたい。エールは冷蔵庫と室温の中間くらいの温度にすると、風味がふわっと開くような感じだ。

 さらに、たとえばエールの中にも、いろいろな味とスタイルがある。たとえば原材料の麦はふつう大麦だけれど、これを半分以上小麦にするとまろやかな味わいのバイツェン(*4)に。淡色麦芽を使いホップを効かせるとペールエール。麦芽をより高温で強めにローストすると、味は芳醇、色はチョコレート色かほとんど黒のポーターやスタウトになる。豆のロースト加減でいろんな味わいやボディのコーヒーが出来るのと同じように、麦のロースト加減によってもビールの味は変わるというわけだ。

 そして、ここではとてもレポートしきれないけれど、こうしたビールのそれぞれに誕生秘話があり、愛され、普及してきた歴史があり……いやー、ただ「ビール」といっても実に広く、深い世界だったのである。

 プハー(とゴールデンエールをひと口)。いやー、こうして一心にお勉強していると、実にのどが乾くものでありますなあ。ビールの種類だけでなくビールのお伴も充実しているのがビアパブの魅力。本日はランチということで、軽めにサラダ&スープを選んでみました。



次のページでは……

ゴールデンエールに相性ぴったりのランチ、どんなオーダーを?>>
ポートランド


ブリュワリーパブ、ローレルウッド
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ローレルウッドのビア・メニュー
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黄金の至福……
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ホップがきいてるレッドビア
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*1
Laurelwood Public House 1728 NW Kearney Street, Portland.
http://www.laurelwoodbrewpub.com/
ちなみに「パブ」という言葉の語源はこの「パブリックハウス」から来ている。そもそも酒場とは、大衆が集う集会所であったのだ!?


*2
低温とは、0〜15℃くらい。この過程を下面発酵という。このタイプのビールは1ヶ月ほどかけて、じっくり熟成させる。もうちょっと専門的に言うと、ラガータイプとエールタイプでは、発酵に使う酵母の種類が違う。もともとビールはみんなエールタイプだったのだが、15世紀のドイツで、冬に保存しておいた樽を開けたら妙においしいビールが出てきた、というところからラガータイプ用の酵母が発見されたのだとか。ところで私の大好きなラガー系ビール、ピルスナーの元祖はチェコの「ピルスナー・ウルケル」。プラハを旅したことのある担当編集M嬢も「チェコのビールはウマイ!」って言っていたっけ。飲みたいぞ、チェコの生ビール!

*3
比較的高温とは、13〜38℃くらい。この過程を上面発酵という。このタイプのビール、エールが多いのは英国、ベルギーなど。ペールエールやスタウトなど、アメリカのマイクロブリュワリーでさかんに作られるビールのほとんども、英国風のエールが原型なのだ。


*4
ドイツ語で“白ビール”。好みがあるけれど、レモンをちょっぴり絞って飲むと丸みのある味わいの中に柑橘系の香りがふんわり引き立って、なかなかおいしい。

 
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Profile
エッセイスト・翻訳家 渡辺 葉
渡辺 葉
ニューヨーク生活を経て、'04年春からオレゴン州ポートランドに移住。Cafeglobeでの人気連載2シリーズは『ニューヨークで見つけた気持ちのいい生活』『ニューヨークで見つけた気持ちのいい「ふたり生活」』として単行本化されている。


text & photos / Watanabe Yo
design / Takeue Tomoko


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