カフェグローブ第11回 浮気――もうひとりの女、になること - セックスライター・タビサの宝石箱

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更新日:2005年11月30日

セックスライター・タビサの宝石箱



Cafeglobeの専売特許コンテンツ、オンナのためのセクシュアリティを考える連載が戻ってきました! しかも今回は強力な著者をイギリスからお迎えしての開催。日本に暮らしたこともあるタビサの愛のあるエッセイ、どうぞお楽しみください!
タビサの英語原文が見られます。文字の色が変わっている表現をクリックしてみて!

文=タビサ・フライト


浮気――もうひとりの女、になること
私のお腹の中に芽生えたあるもの

   彼の名前はフレッド。けっこういい男で、数ヶ月前、私たちはつきあう寸前まで行っておきながら、いろいろあって、彼はスーという女の子と知り合って付き合い始めてしまった。でもその後も私たちはたまに出かけたり、電話したり、携帯メールしたりしてた。お互いに気があることはわかっていつつ。

   そしてついに先週、寝てしまった。とてもロマンティックで、情熱的で、めくるめく一夜だった……んだけれど、今、ものすごい後悔してる。

   パートナーのいる人と寝ちゃいけないとか、そういう良識ぶったことを言いたいんじゃないの。浮気はよくないとか言うつもりもない。浮気にも理由や必然性はあるよね……大抵はあまりほめられた理由じゃないけど、ときには必要なこともあると思う。ただ私が言いたいのは、とくにあなたが「もうひとりの女」になるときには、目をしっかり見開いて飛び込む責任があるということ。あなたが他の人に与えるかもしれないダメージを、そしてあなた自身に与えるダメージをしっかり見つめるべきだと思う。


「彼女はちっとも僕をわかってくれないんだ」
「彼女とはもうずっとセックスしてないんだ」

   その夜、私は自分が負けていることに気づいてなかった。彼に勝たせてしまった。彼はスーを手放す気はなかったのに、私まで手に入れさせてしまった。普段なら、あざけり笑うようなありきたりで安っぽい「浮気男の口説き文句」でさえ、信じてしまった。(英語原文1を見る>)。たとえばこんな台詞……

   「彼女はちっとも僕をわかってくれないんだ」
誰だって聞いたことのある、浮気の超頻出フレーズ。なんて可哀そう! 辛いでしょうね。結婚している彼だけど、本当に理解してあげられるのは私だけ……なんてとんでもない。「オッケー、じゃ、彼女と別れたら連絡して」と言うべきなのに。(英語原文2を見る>)

   「もう彼女にはときめかないんだ」
この手には、「じゃあなんでまだつきあってるの? 彼女に失礼よ。自分のことも騙してるんじゃない?」とするどく突っ込むべき。

   「彼女とはもうずっとセックスしてないんだ」
きっと彼が毎晩ほっつき歩いて、酔っ払っては相手かまわず女の子を口説いているから、彼女はもうウンザリしているのかもね。あるいは無責任な彼との子どもの世話で疲れ果てているのかも。

   あの晩のシーンがもう何百回も頭の中でぐるぐる回っている。フレッドが「やっぱりスーより君と一緒にいたい」と言ったとき、キスなんかしないで、立ち上がってコートを着て「じゃ、別れたら電話くれる?」と言うべきだった。そう言っていたらこんなに傷つくこともなかったし、こんなに自分に腹を立てないで済んでいたのに。でも、私たちはそのままベッドに飛び込んでしまった。

   翌朝、ダブルベッドの普段はスーが寝ている側で目を覚ました私。「……これってよくないかもね」と彼。「うん……間違ったね」と私。朝の冷たい光の中、ベッドにいる私たちは品性下劣で、ぎくしゃくしていて、不誠実そのものだった。



日本でも、夫の浮気は
甲斐性がある印というんでしょ……?

   もし私が単にセックスがしたいだけだったなら、こんなに深くは考えなかったかもしれない。でも私はフレッドに惹かれていて、甘い言葉を信じてしまって、そこからふたりの関係は続くんじゃないかと思ってしまったの。もちろん、こういう状態から付き合い始めて長く続く人たちもいると思うけど、それって確率的にはかなり低いんじゃない? そもそも、そんなことで始まった相手のこと、ずっとずっと信じ続けるのは難しいよね。(英語原文3を見る>)

   スーには本当に申し訳ないと思ってる。フレッドに夢中になるあまり、私はいつからスーのことをライバル視するようになっちゃったんだろう。あの晩、正直言って私は「ほらね、スーより私のほうが魅力的でしょ。スー、フレッドはあなたなんかより私のほうを求めているのよ。彼には私のほうがお似合いよ」と思っていた。ああ、なんてバカげたことを。

   いや、わからないけどね。誰かの男と寝るのはそんなに悪いことじゃないかもしれない。私に言えるのは、私がこう感じた、ということだけ。イギリスの離婚率が高いのは、浮気をあまり許さないというイギリス人の気風のせいで、他の国みたいにもうちょっとそのへんおおらかになってもいいんじゃないかということも聞く。パートナー以外の人に惹かれるのは動物として自然なことという意見もなんとなくわかる。日本でも、夫の浮気は甲斐性がある印というんでしょ……?

   フレッドはたぶんスーには言わないと思う。言ってもスーなら許してくれるだろうし。私たちも、もう会わないと思うし。

   だから、別にたいしたことではなかったと言えるかもしれない。誰も気づいてないし、誰も傷ついてない。でも私のお腹の中には、小さな疑問が芽生えてしまった。いつか将来、私のパートナーも私の目を盗んで私以外の人のところに行くことがあるんじゃないかと。私よりずっと若い、ずっときれいな女の人のところに行って、「やっぱりタビサとより、君と一緒にいたい……」と。

   そのとき私には、怒る権利はない。



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女性のためのエロティック・フィクション作家。20代のとき日本に3年ほど暮らした経験あり。30代半ばのシングルマザーでもある。タビサが描く女性たちは、いつもセックスに対してポジティブで、冒険心旺盛。エロ小説としての読み応え(!)もさることながら、読むと元気になれるのでCafeglobeとしても大オススメ!

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text / Tabitha Flyte
illustration / Tsuneda Tomoko
design / Anada Masayo (Cafeglobe)

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