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イタリアのラジオには「大沢悠里のお色気話」の類のくだけた番組はなく、FMは日本同様に音楽放送、AMはマジメな話題中心で、聴いていてたいして面白いものがない。その「マジメ系」の最たるものは、カトリックの国らしくキリスト教放送。一日中説教や聖歌、お祈りが流されている。なかでも有名なのは「総本山」ヴァチカン市国の「ヴァチカン放送」で、これは全世界に流されている。 ところが、そのヴァチカン放送が今、大きな話題となっている。発端は昨年、ローマにあるヴァチカン放送・送信搭の付近住民による行政への訴え。地域一帯で小児白血病や腫瘍が多発するので調べてみると、規定値を遥かに超える電磁波が測定されたというのだ。 それを受けて人気民放番組では、ヴァチカン放送からの強い送信電波の影響で電話やインターフォンの受話器でも放送が聞こえてしまう家庭、頭痛を訴える人々、子どもを白血病で失った母親などを次々と映し出した。また、新聞各紙もこれに追随するかたちでこの問題を取り上げ始めた。 そうした報道が人々に衝撃を与えたこともあって、ついにイタリアはヴァチカン放送を相手に訴訟を起こす動きに出たのだ。 ところが先日12日、ローマ裁判所は公判を秋まで延期すると決定。それによって電磁波と症状の因果関係の究明もストップになった。イタリア半島のなかにあってもヴァチカンは外国扱い。「イタリア憲法における市民生活の権利と外交の優先順位は?」といった複雑な問題がからむようだ。 一方でヴァチカン側は、依然放送を止めようとしない。裁判延期に痺れを切らした住民は、ヴァチカンまでのデモ行進を計画中である。 すでにイタリア外務大臣も動きだし、「ヴァチカン送信搭問題」は両国の外交問題に発展する兆しだ。 ところでこのヴァチカン放送、周囲のイタリア人を見渡すと、「オレ、英語の音楽放送しか聴かないぜ」という大多数の若者はもちろん、中高年でも聴いている人をあまり知らない。このように、あまり縁がない放送だけに「なんでオレたちが被害を被るんだ」という思いはさらに募るようである。 |
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| text / Oya Mari photo / Akio OYA |
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