カフェグローブ第5回 『ヘレナとエリザベス』の著者リンディ・ウッドヘッドさん - Frill me, Thrill me! インタビュー

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更新日:2004年3月17日
Frill me, Thrill me!
05
『ヘレナとエリザベス』著者リンディ・ウッドヘッドさん
今ある美容業界の土台を築いた
ふたりの女性の壮絶な人生を描きたかった

Lindy Woodhead
リンディ・ウッドヘッド
映画、音楽、ファッション業界を経て、1974年、ロンドンにPR会社を設立。イヴ・サンローラン、エルメス、ルイ・ヴィトンなど、数多くのメゾンブランドのPRを手がける。また、1987年から2年間、イギリスの高級デパート「ハーヴェイ・ニコルス」の取締役としても活躍。1999年より執筆業へ専念。2003年、4年間にわたるリサーチとインタビューをもとにつづったビジネス・ノンフィクション『ヘレナとエリザベス』を発表。



私たちの“美の基準”、作ったのは彼女たちだった

  20世紀初頭、美容業界の頂点を極めたふたりの天才的な女性企業家、ヘレナ・ルビンスタインとエリザベス・アーデン。今では、だれもが知っているメガ・コスメブランドの創始者たちに、リンディ・ウッドヘッドさんはなぜ注目したのだろう?

  「20世紀にここまで成功した女性はめったにいないわ。女性にまだ参政権もなく、娼婦や女優しか化粧をしなかった時代に会社をつくり、自らのブランドを確立した。そして、女性にメークアップの習慣を根付かせただけではなく、今では当たり前となっているデパートでの販売を始めたり、雑誌などに芸術性の高い広告を打ち出すなど、他の業界の発展にも深く関わっているの。
 また、“美はカラダの内側からつくられる”と提唱し、エクササイズやヨガなどを生活の中に取り入れるといった現代にも通じるライフスタイルにも大きな影響を与えました。言ってみれば、ふたりは現在の美容の原点をつくった最初の人」

  彼女たちが築きあげたコスメブランドについてよく知っている人は多いけれども、そのブランドの華やかさの影にあるふたりのダイナミックな人生について知る人はほとんどいない。もちろん、それらが書かれた本もなかった。だから、「ふたりの活躍によって“いかにさまざまな業界が影響されたか”までもがわかる本を書きたかった」と語るリンディさん。

  今日までの美容業界の歴史までもが一望できる非常にボリュームのある作品は、まさに“美のテキスト”。中には、当時サロンで行われていたトリートメントの様子がわかる写真もあり、包帯で顔全体をぐるぐる巻きにした女性の姿を見たときには、少しぎょっとさせられたりもしたけれど……。



働くことは学ぶこと
成功のヒントはすべての中にある!

  ふたりの女性の並ならぬ成功の陰には、明確なヴィジョンと強い信念、そして日々の努力の積み重ねがあった。自ら経営者として成功しているリンディさんにも、成功の理由を聞いてみた。すると、「難しい質問ね」と笑いながらも、時には厳しい表情も交えつつ語ってくれた。

  「働くことは学ぶこと。誰よりも早く新しい情報を取り入れ、それを自分のものとしてしまうの。たとえば、1950年にヘレナが京都を訪れたとき、とても気に入った和紙をさっそく持ち帰って、化粧品のパッケージに使ったように。彼女たちは、すべての経験からビジネスのヒントを得ていたわ。成功のためには、ビジネスの現場で役立つ知識やスキルを身につけて、常に人の一歩先を行かなくてはなりません。

  そして、他人よりも一歩抜きん出た“次の瞬間”には、たくさんの人があなたのポジションを狙っている、それくらい厳しいものと捉えること。ビジネスはプロの世界。遊びの要素は全くない、とてもタフな世界であるということを真剣に受け止めなければならないわ。

  最後に、“No”と言える強さを身に付けることも大切。女性が働く環境はかなり改善されてきたけれども、世間はまだまだ男性優位。とくに女性は、他人によく思われたいと思って、すぐに“YES”と言ってしまいがちなところがあるでしょう? 私は35年かかったけれども、“No”と言えるようになったとき、それまでよりもずっと強くなれたし、楽になったわ。これはビジネスの世界だけでなく、家庭においても大切なこと」

  めまぐるしく変化するファッション業界の中にいて、ビジネスパーソンとしてかなりの地位を築いてきたリンディさんでさえ、「女性として、ビジネスの世界で生き残ることは簡単ではなかった」と語る。今は、ビジネスの第一線から退き、執筆業に専念。プライベートとのバランスのとれた生活を満喫している。

  「今は、書くことが何よりも大きな喜びをもたらしてくれるの。みんながやさしく見守ってくれて、ファッションをはじめとして各業界で経験を積んだ私ならではの本の語り口がおもしろい、と温かい反応を示してくれることがとてもうれしい」

  『ヘレナとエリザベス』のリサーチのため、頭の高さまで積まれたファイルを読み進める中で、貧しい家庭で育った彼女たちの幼少時代の記録を辿るのがとくに大変だったのだそう。引越届や出生証明書から調査したり、ふたりが訪れた国々へ実際に行ったり……など、地道な作業をも厭わず楽しみながらこなしたという。そういった緻密さ、仕事に対する粘り強さが、リンディさんの成功の根底にあるのでは? と感じた。


これからの時代を生き抜いていく女性へ
「自分を信じて、前進し続けて!」

  人生のなかで何かを成し遂げたい! と思っていても、「何で? いつ? どうやって?」といったことにまだ確信を持てず、将来に漠然と不安を感じることもあるんです、といった悩みを打ち明けると……。

  「そんな30歳やそこらで、まだ何も達成していないと焦る必要はないわ。私なんて、53歳で初めての本を出したんだから(笑)! 心配せず、予期せぬことが起きてもパニックを起こしたりせず、常に自分を信じて前進し続けることが大切よ」

  すでに、2作目となる本のリサーチを始めたというリンディさん。次の作品では、20世紀前半にハリウッドで活躍したふたりの女性について書くのだそう。

  「女性が参政権を得て、映画やジャズなど新しいものが生まれ発展した、激動のそして活気に満ちあふれたすばらしい時代。そんな時代を強く生き抜いて成功した女性について書けることがとてもうれしいの。今からワクワクしているわ」



text /Miyasato Rina (Cafeglobe)
photos /Cafeglobe



『ヘレナとエリザベス』 リンディ・ウッドヘッド著/桃井緑美子訳
アーティストハウス
上下巻各\1,500(税抜\1,429)
本の詳細はこちら(Amazon.co.jpへ)


ヘレナ、32歳。最初のサロンをオープンして1年がたち、次第に有名になりつつある頃の写真。(c)THE HELENA RUBINSTEIN FOUNDATION

エリザベス・アーデン「ラディアント・ピオニ―」という新色の口紅とネイルの広告。ルネ・“R・R”・ブージェの挿絵が印象的。(c)COURTESY OF VOGUE, CONDE NAST PUBLICATIONS INC.

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