カフェグローブ第28回 女優・石田えりさん - Frill me, Thrill me! インタビュー

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更新日:2007年8月29日

Frill me, Thrill me!私たちが心躍るもの

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女優・石田えりさん
VOL. 28
女優・石田えりさん
映画『サッド ヴァケイション』で “揺るぎない女”を演じた石田えりさん。 その素顔は、やっぱり“揺るぎない”……?
石田えりさん
1960年熊本生まれ。77年『翼は心につけて』(堀川弘道監督)でデビュー。80年『遠雷』(根岸吉太郎監督)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、新人俳優賞をW受賞し脚光を浴びる。89年と91年に『嵐が丘』(吉田喜重監督)、『華の乱』(深作欣二監督)、『飛ぶ夢をしばらく見ない』(須川栄三監督)などで日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。他に91年豪州映画『AYA』(スルーン・ホアス監督)、97年日韓合作映画『愛の黙示録』(金朱容監督)、04年『美しい夏キリシマ』(黒木和雄監督)などがある。最新作は、TV『風の果て』(原作:藤沢周平、NHK木曜時代劇10月18日より連続8回)、舞台『野鴨』(原作:イプセン、演出:タニノクロウ、11月1日〜30日@シアター1010)。


サッドヴァケイション オフィシャルサイト連動インタビュー
演じるキャラクターを一度身体におさめてしまう
そうしたら、「あとはもう、どうにでもなれ」って感じ

  『遠雷』の野性的で自由奔放な女、『釣りバカ日誌』のしっかり者でやさしい妻、そして、『飛ぶ夢をしばらく見ない』の少女のようなあどけない女性。スクリーンで、テレビドラマで、作品ごとにいつも異なった表情を見せてくれる女優・石田えりさん。デビュー以来、変わることのないキュートさと年齢とともにに輝きを増す美しさで、同性からの支持も高い人だ。さっそく、美しさを保つ秘訣を聞いてみたところ……

 「仕事柄、食べ物や運動には気を使ってるつもりなんですが……でも怠惰というかなんというか、自分に甘くて(笑)。ちゃんと運動して、無農薬野菜食べたりしているのに、そのあとお酒飲んだりしちゃって。健康的なんだか不健康なんだか」

 とケラケラ笑う。ストイックに自分を律して、というより、自分らしさを大切に、伸びやかに日常を過ごしている。そんな印象を受ける。とはいえ、女優という仕事について尋ねると、その奥には、さすがとも言うべき誇りと意志の強さが垣間見える。

 「自分とは全然違うキャラクターを演じる場合、こういうセリフは不自然だなとか、もっとこういうセリフにしたらいいのにとか、そういうことは思わない。それだと、“私がやりたいキャラクター”になってしまって、監督や脚本家の表現したいことと違ってくると思うんですよね。だからいつも、台本に書かれたものを一言一句違わずに忠実に演じようと思っています。もちろん、より深く理解したい。でも一旦キャラクターを身体の中におさめてしまって現場に入ると、『あとはもうどうにでもなれ』って感じ」



一見、“揺るぎない女”に見えて、迷いも不安もある
そのギャップこそが、千代子の魅力

 そんな石田さんの“女優魂”が堪能できる最新作『サッド ヴァケイション』が、間もなく公開される。監督は、いまや「日本映画にアオヤマあり」とヨーロッパでの評価もすっかり定着した青山真治氏。その青山氏をして、「人間の聖と俗の部分を同時に、しかも強烈に持っていて、そこが魅力的」と言わしめた石田さん。そこまで惚れこまれた青山監督について、石田さんはこう語る。

 「青山監督とお仕事するのは今回初めて。失礼ながら、最初は『ダサい人だなー、こんな人がいい映画撮れるのかしら』なんて思ってたんです(笑)。だけど、お受けした後に監督とお会いして、キャラクターについてじっくりお話してみて、やっぱりすごく深いところで人間を見つめている方なんだと思いました。現場も緊張感がみなぎってた。あれは、監督から発せられる特別な何かがあったからでしょうね」

 石田さんは、主人公・健次(浅野忠信)の母親・千代子を演じる。この千代子なる人物、物語のかたちを決定づける、いわば“もうひとりの主役”。重要な役どころだ。千代子は幼い息子を捨て、別の家庭を築く。そしてふたりは、数十年後に運命的な再会をすることになる。母への復讐を胸に秘めて現れた息子に、千代子の偉大なる母性が立ちはだかる……。この映画のテーマである『すべてを包みこみながら美しく生きる、揺るぎない女』、石田さんはどう感じただろうか。

 「千代子は果たして良い人なのか、悪い人なのか? 多分、あんまり良い人じゃないでしょう(笑)。死ぬまで自分を貫いて、きっと最後まで『私が悪かった』なんて言わないんじゃないかしら。でもそんな、一見強くて揺るぎないように見える千代子にだって、一瞬の迷いや不安が当然あるんです。やっぱり、すべてを包みこめる人なんていないんじゃないかな。包みこんでいるフリはできてもね。だって、あの聖母のようなマザー・テレサだって、ときどき見せる険しさってあったでしょ? でも、それが人間らしくもあり、魅力でもあると思うんです」



50歳になったらもっとラクになるの?
それってすっごくワクワクする!

石田えりさん  身勝手さとやさしさ、強さと弱さ、そして揺るぎなさと揺らぎ。これらの相反する性質は、確かに千代子の中に同居する。だからこそ、石田さんの言うとおり、それがキャラクターの魅力にもなっていて、観客を強く惹きつけるだろう。ところで石田さん自身は、揺るぎない女なのだろうか?

 「根本は揺らいでないと思うんですけど、日々の細かいところでは……もう、まったく具合が悪い(笑)。些細なことでのたうち回ったり、右往左往したり。くよくよ後悔することも多いんですよ」

 では、ズバリ、男性を包みこむ女、ですか?

 「自分のことで精一杯(笑)。自分自身も包みこめないのに、相手までっていうのはムリ! だけど、無条件の愛で包みこんであげたいですよね。子どもがいたらそういう境地に達するのかしら?」

 率直に、屈託なく、答えてくれる石田さん。このナチュラルさと、いい意味で“隙のある”感じが、同性からの共感を得る所以ではないだろうか。女優・石田えりとしての確かな存在感。そして、ひとりの女性として、場の空気を和ませてくれる気配り。石田さんの笑顔の美しさは、自分の気持ちに誠実に生きてきたからこそ、のものなのだろう。

 「知人の50代の女性がね、『えりちゃん、50歳になったらラクになるわよー』って言うんです。『えっ? すでにラクなんだけど、これからもっとラクになるの?』って思うとワクワクしますよ。だから、20代、30代の皆さん、今のうちにたっぷりのたうち回ってね(笑)。未来は明るいんだから!」

 迷ったり、悩んだり、オロオロしたり。だけど、そうか。のたうち回るのも悪くないか。石田さんみたいな年齢の重ね方ができるのなら……。  その場にいた全員をしびれさせ、唸らせて、インタビューは終わった。


photos / Shimabukuro Tomoko
text / Shibata Mari
styling / Enami Mariko
衣装協力 / マリナ リナルディ
 
あらすじ/
北九州市、若戸大橋のたもとにある小さな運送会社。社長の間宮は、かつてバスジャック事件の被害にあった梢のほか、様々な理由から行き場のない人たちを住み込みで雇っていた。ある日、妻の千代子とかつて彼女が捨てた男との間に出来た息子・健次が会社に現れた。千代子は健次と、妹分で知的障害者のゆりを家に住まわせ、間宮はそれを快く受け入れた。一見、楽しげに働くフリをしながら、健次は母への復讐を狙っていた……。


ELDNACS(エルドナックス)
『サッド ヴァケイション』
監督・原作・脚本:青山真治

出演:浅野忠信、石田えり、宮崎あおい、板谷由夏、中村嘉葎雄、オダギリジョー、光石研ほか
※第64回ヴェネツィア国際映画祭 正式出品作品

9月8日(土) シネマライズ他にて全国順次ロードショー

『サッド ヴァケイション』のサイト

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