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更新日:2007年9月6日 RSS

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プランニング・プロデューサー手塚るみ子(てづかるみこ)さん
VOL. 27
プランニング・プロデューサー
手塚るみ子(てづかるみこ)さん
伝説の鳳凰がテクノにのって羽ばたく日
手塚るみ子が放つ新しい『火の鳥』とは?
手塚るみ子(てづかるみこ)
漫画家・手塚治虫の長女。広告代理店でセールスプロモーションなどの企画・制作に携わった後、独立。『私のアトム展』をはじめ、手塚作品をもとにした企画のプロデュースや執筆、ABCラジオ『EARTH DREAMING〜ガラスの地球を救え』のパーソナリティなど、幅広いジャンルで活動。また、音楽レーベル『Music Robita』を設立、2003年の『鉄腕アトム』生誕にあわせたトリビュートCD『Electric-Brain feat. ASTOROBOY』をはじめ、数々の音楽企画も手がけている。



父が自分の世界に入ってきたときに
自分の生きるべき道が見えてきた

  自ら音楽レーベルを主宰し、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している手塚るみ子さん。父は、いわずと知れた日本マンガ界の巨匠・手塚治虫だ。第一印象はとにかくキュート! 『ブラックジャック』に登場する少女・ピノコは彼女がモデルとなっているのだそう。

 今秋リリースされるテクノユニットSYSTEM7のニューアルバム『PHOENIX』をコーディネイトした彼女。アルバムには、るみ子さんの音楽と手塚作品への情熱が込められている。

 「89年に父が亡くなって、残された自分が何をすべきかを考えたときに、手塚作品がいわゆる“古典”と化すのはイヤだ、若い人達も手塚の漫画に触れることができるきっかけを作りたい、と思ったんです」

 広告代理店の仕事を辞めてフリーとなり、様々な人たちとのコラボレーションで父の作品を伝えていく仕事をしようと決心した。最初にプロデュースしたのが、アトム生誕40周年に際して、113人のアーティストがそれぞれのイメージでアトムを描いた『私のアトム展』(1993年)。その後、もともとの音楽好きが講じて、CDプロデュースなど音楽関連の仕事が増えていくことに。

 「でも、父の名前も彼が残した仕事もあまりにも大きいから、メッセージを伝えきれていないのではという不安もあって。30代半ばまですごく葛藤していた」

 その不安が拭いきれたのは、自身の音楽レーベル Music Robita を設立し、自分が好きなテクノ系のアーティスト一人ひとりに声をかけて楽曲を依頼、初めて満足のいくコンピレーションCDが出来上がったときのことだ。

 「それまでは、父の作品の中に自分が入り込んで、何かを持ち出そうと必死になっていたけれど、それが逆転したの。強引に父を私の世界に連れていったことで、開き直れたのね。父はテクノを知らないけれど、私は音楽で父の世界をこの世につないでいこうと決めたら、すっきりして」


世界はなんと美しい!と思った瞬間
全ての時間軸が一気につながった

 こんなにもるみ子さんが音楽に惹きつけられるようになった理由に、ダンスミュージックとの出会いがある。1998年に『レインボー2000』という野外音楽フェスに参加したときの強烈な印象は、今でも忘れられないのだとか。

  「星空の下、小高い丘に座りながら、地球があって、人がいて。音楽が流れている光景を眺めていたときに、自分たちが愛するもので満ち満ちている宇宙があり、しかも争いが一切ない完璧なバランスが見えたの。それは、父が生前、とくに『火の鳥』というライフワークで伝えようとしてきた世界にすごく近かった」

 漫画『火の鳥』は、“生死とは何か”という、有史以来人間の前に立ちはだかる壮大なテーマにアプローチした大作だ。のちに、イギリスのテクノユニットSYSTEM7に出会ったるみ子さんは、彼らの躍動感溢れる音楽と『火の鳥』の世界観がピッタリ合致していることに気付き、『火の鳥』の英訳版をプレゼントした。すると、メンバーも感銘を受けてすぐに意気投合し、アルバム制作が実現したのだという。

  「私がダンスミュージックにこだわる理由は、そこに言葉がないから。直接的なメッセージよりも、リスナーが想像力を働かせて心で感じ取ったことのほうがずっと大事だと思う」

 このアルバムを聞いて、原作を読みたいと思う人が増えるといいなと語る、るみ子さん。確かに、日本の歴史や自然観、文化や宗教に対する思考が凝縮された『火の鳥』には、今の社会が抱える問題を紐解くヒントが沢山詰まっているように思えます。



伝えたい手塚作品はまだ沢山あるから
手塚治虫の娘は楽しいよ!

 子どもの頃は、放任主義で育てられたというるみ子さんだが、その裏には両親の優しさが溢れていた。「兄弟の中でも私がいちばん危なっかしい子どもだったのに、親からは“こうしなさい”と何かを押し付けられたことはなかった。たとえ失敗しても、あえてほったらかし。だけど、模索しつつも進んでいけば、知恵や経験も増えるし想像力も広がるもの。最初に親が答えを出しちゃったら、そこで止まって成長しないでしょう?」

 「答えはひとつつじゃない」ということは、数々の手塚作品にも描かれている不朽のテーマだ。「誰が悪人で、誰がが善人で、何が正しくて、何が間違っているか、じゃないんです。Aという道が駄目だったときに“人生は終わりだ”じゃなくて、Bという道に行ってみてもいい」

 そして、手塚治虫の“文化的遺伝子”は、こんなところにも現れている。「環境をテーマにしたラジオ番組でパーソナリティをしているけれど、“環境を守ろう”とか“命を大切に”みたいな押し付けがましいことは言いたくないの。いろんな生き方を人間は選べるんだ、ということを伝えていきたい」


 自分が何をしたいのか、を人々に見つけてもらうことがいちばんだから、そのヒントとなるものを、手塚作品を通じて今後も発信し続けたいのと、ニッコリ。

 「手がけたい手塚作品は、まだ山ほどあるもの。だから、手塚治虫の娘は楽しいよ!」


text / Sato Yo
photos / cafeglobe.com
 
SYSTEM7
●SYSTEM7『PHOENIX』 SYSTEM7は伝説のプログレッシヴバンド「GONG」出身のスティーヴ・ヒレッジとミケット・ジローディ夫妻のテクノユニット。壮大なスケールで描かれた漫画『火の鳥』を、躍動感溢れる楽曲群で構成。

10月24日全国CDショップ等にて発売開始、2730円(税込)。 発売元:Wakyo Records, Music Robita

マキシシングル「HINOTORI」初回限定盤発売中!

HINOTORI火の鳥
●手塚治虫『火の鳥』(角川文庫) その血を飲めば永遠の命を持つとされる「火の鳥」をめぐって、3世紀の日本から、35世紀の超未来までを舞台とし、過去と未来を交互に、それぞれ独立した数奇な人間のドラマで描いた長編大作。「黎明編」「未来編」ほか全13巻。

ELECTRIC-BRAIN feat. ASTROBOY
●『ELECTRIC-BRAIN feat. ASTROBOY』 2003年、アトムの物語上の誕生日を記念して、国内外の人気テクノミュージシャンが「自分流のアトム」をサウンドで表現したトリビュート・アルバム。
発売元:Music Robita