
体が震えるほど緊張を感じた初舞台
スポンジのように、色んなことを吸収したい | |  |
『がんばっていきまっしょい』の鮮烈なデビュー以来、映画を中心に活躍してきた田中麗奈さん。デビュー10年目にして、向田邦子生誕80周年作品の舞台に挑戦するという。意外なことに、田中さんが舞台に立つのは今回が初めて。
「“初”というのは、当然、人生で一度しか味わえないこと。もちろんプレッシャーもあるんですが、初めてだからこそ、まっさらなスポンジのような状態でたくさんのことを吸収したいと思っています。お話をいただいた当初は、舞台に立つことを想像するだけで体が震えることもありましたけど、いざ稽古が始まると自然に体が動くので、今では『なんとかなるさ』と(笑)。映画やドラマのときとは違った筋肉を使っている感じで、とても新鮮ですね」
奇しくも田中さんは、原作となった小説『思い出トランプ』が直木賞を受賞した1980年生まれ。田中さんにとっての初舞台がこの作品になったのは、不思議な縁を感じる。観客としては、「田中麗奈×向田邦子」がどんな世界を描き出すのか、期待が高まるところだ。
「向田邦子さんの作品は、淡々として味わい深い中にも、鋭さがあって、女性ならではの視点がとても印象的でしたたね。例えば、包丁の研ぎ方や大根の切り方などの生活の細かいディテール、それから、女性のもつ意地悪な部分なんかが、じっくり描きこまれている。それらが自分にスッと馴染んでいくような感じがして、不思議でしたね」
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何があっても、真っ直ぐ歩いていく女性
ブレない自分をいつも持っていたい | |
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今回田中さんが演じる英子は、子どもを育てる主婦。家事を丁寧にこなし、夫とも姑とも円満に過ごしていたが、ある日、台所で大根を切っていたときにじゃれてきた息子の指を誤って切り落としてしまう。その日から、平凡な日常が少しずつ変わり始め、穏やかだった人間関係も少しずつ破綻していき……とストーリーを聞くだけで、スリリング。英子という女性について、田中さんはどんな風に感じたのだろう。
「息子に大怪我をさせてしまった母親って、どんな気持ちなんだろうと最初はすごく悩みました。子どものいない私には、その苦しさの全てを理解することはできない。だけど、辛いことや苦しいことがあっても、それを静かに受け止めて、真っ直ぐ歩いて行こうとする英子の強さは尊敬するし、私もそういう人に近づきたいと思いました。英子という人物を演じていく中で、私のそんな共感がうまくリンクしていけばいいなあと思っています」
真っ直ぐな強さ。それを「憧れ」と田中さんは言う。しかし5歳の頃から、「女優になりたい」という強い思いを抱き、その夢を貫き通したという強さは、役者・田中麗奈の最大の魅力、といえるのではないだろうか。
「子どもの頃から、役者になることについての迷いはなかったですね。今も、それ以外の職業に就いていたらとても続かなかっただろうなと思います。それくらい、演じることが好き。その中で、自分が大切にしていることは、やっぱり“軸をぶらさないようにしよう”ということかもしれません。個性的な役者さんたちと共演していく中で、影響や刺激を受けるのはいいことなんですが、その度にその人のもつパワーに巻き込まれたり流されたりすると、自分がバラバラになっちゃうと思うんです。だからいつも『ブレない自分をもっておこう』とは思ってますね」
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友人からは、刺激とエネルギーをもらう
理想の男性は、『リラックマ』!? | |
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オフの日には、ジムや日舞、中国語教室に通ったり、友人と食事に行ったりと、ごく普通の過ごし方を楽しんでいるという田中さん。10代の頃から芸能界の仕事をしていたため、学生生活を送っている友人とのギャップを感じることもあったが、25歳頃から友人関係も少しずつ変わってきたという。
「たぶん社会人3年目くらいから、みんな、仕事が面白くなってきて、脂がのってくるんでしょうね。これからだぜ!みたいなエネルギーを友人たちからビシビシと感じます。年下の子たちからは、逆に煽られるというか、新鮮な刺激をもらっていて。私も『負けてらんない』って思います」
今年だけで5本もの映画に出演、さらにはテレビドラマ初出演、舞台初挑戦と、仕事にまい進している田中さん。最後に、恋愛や結婚観について聞いてみた。
「お芝居に夢中になっているときは、他のことが何も手につかなくなるし、性格もちょっと男みたいなところがあるので、絵に描いたような普通の夫婦にはなれないでしょうね。自分らしいオリジナルな結婚、オリジナルな夫婦、がいいですね。そんな私を認めてくれる人なんているかなあ(笑)。理想の男性像はズバリ、動物みたいな人! 動物と一緒にいると、ホワーンとあったかい感じがしますよね。遠くから見ても和みオーラが出てる……そうそう、『リラックマ』みたいな人がいいかな(笑)」
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text / Shibata Mari
photos / Hirano Tetsuro
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『思い出トランプ』のあらすじ
英子が離婚を前提とした別居に踏み切って、1年近くが過ぎた。別居のきっかけは英子が大根を切っていたときに、息子の指を誤って切ってしまったこと。それ以来、平凡でおだやかだった英子の日常が少しずつ変わり始める。夫との溝、姑との諍い、いくつもの小さな出来事に揺れ動いていく人間関係……。市井の生活者の日常を丁寧に活写した向田邦子の傑作短編集『思い出トランプ』の中の「大根の月」を主軸に、演劇界で注目の若手作家・田村孝裕が舞台化した作品。
●2008年10月10〜19日、『青山円形劇場』にて上演
原作: 向田邦子『思い出トランプ』(新潮社刊)
脚本・演出: 田村孝裕(ONEOR8)
出演: 田中麗奈、根岸季衣、八十田勇一、宮地雅子、阿知波悟美、山口良一
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