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バングラデシュのグラミン銀行が始めたマイクロクレジット(少額無担保融資)は、最も豊かな国、米国でも注目されている。ヒラリー・クリントン米上院議員は、グラミン銀行の手法に早くから関心を寄せていた1人だ。彼女はベストセラーとなっている回顧録『リビング・ヒストリー』の中で、2ページ半を割き、グラミン銀行への訪問について語っている。電気も水もない小さな村で、古い慣習に邪魔されながらも自分の生活を切り開いている女性たちの姿に感銘を受けた様子が記されている(P284〜286)。 ヒラリー・クリントンは80年代、夫がアーカンソー州知事だった頃から、グラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁と親交を持っていた。州内の貧困層の経済的自立のため、アーカンソー州内にマイクロクレジット機関を作る手助けをしたこともある。実際、1985年時点で米国には10のマイクロクレジット機関があった。
マイクロクレジットを手がける機関は、今やバングラデシュだけでなく、他のアジアの国々、アフリカ、中南米にも広がっている。世界2186のマイクロクレジット機関の発表によると、2001年12月末時点で借り手の数は5490万人に達しているという。そのうち約半数の2680万人は最初に融資を受けたとき、最貧困層に属していた。一つの家族を5人と仮定した場合、マイクロクレジットは1億3400万人の最貧困層に何らかの影響を与えたことになる。 国連は、世界に30億人いると言われる貧困人口を「2015年までに半減させる」という目標を掲げている。世界のマイクロクレジット機関に関わる人々は、この目標を達成するにはマイクロクレジットこそが有効な手段であると考えている。
「貧困撲滅のためにマイクロクレジットを最大限生かすべき」と主張し、このことを各国の政策決定者に訴えているのが、米国NGOの「リザルツ」だ。ロビー活動を専門とするNGOで、日本、カナダ、英国、オーストラリアなどに支部がある。マイクロクレジットに対する理解を深めるため、代表のサム・デイリー・ハリス氏は自ら講演旅行をしたり、グラミン銀行とメディアの橋渡しを手がけている。 ハリス氏は4月に来日し、参議院会館で講演、「2015年までに貧困層を半減するための主要な手段として、マイクロクレジットが取り上げられるべきだ」と話した。民主党の広中和歌子議員が講演会の司会を務め「日本にも昔、頼母子講というマイクロクレジットに似た仕組みがあり、これが発展して信用金庫になった。現在の経済停滞を打破するため、こうした知恵を再び生かしていくべき」と解説を加えた。講演会の後、ハリス氏は民主党だけでなく自民党などの議員とも「マイクロクレジットの有効性」について話をしたという。
「まだ、ほとんどの人が“マイクロクレジット”という言葉そのものを知らない。道を歩いている普通の人に知っているかと尋ねても『マイクロソフトのこと?』と聞き返されるだろう。とにかく多くの人にこれがどんなものかを知ってもらうことが大切だ」とハリス氏は言う。 ハリス氏が「たくさんの人が知ること」にこだわるのは理由がある。先進国は開発途上国に様々な形で援助をしている。いくら多額の援助をしても、効果的に使われなくては意味がない。政府間の援助では、どのプロジェクトが必要かを調べる、いわば援助の準備段階で膨大なコストがかかり、本当に貧しい人に必要な額が行き渡らないことも多い。多くの人がこの問題に気づけば、援助のあり方を見直すきっかけになる。
実際、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏は自著の中で、既存の途上国援助について、怒りをこめてこう書いている。「もしネグロス島(引用者注:フィリピンの島)のプロジェクトが、国際農業開発基金の調査使節団の一回分の資金でも受け取っていれば、数百もの貧しい家族にマイクロクレジットの手を差し伸べることができたはずなのだ」(『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房・P43)。 5年の歳月と数百万ドルをかけて専門家が問題点を見直したにも関わらず、本が書かれた時点で、この島のマイクロクレジットプログラムは必要な資金援助を受けることができなかった。調査を手がける先進国のコンサルタントの懐を潤しただけで終わってしまったという。
一方、マイクロクレジット機関は地域に密着しているので余計な調査費用がかからない。もし先進国が、コストの高い仲介業者を通さず直接現地のマイクロクレジット機関に資金援助するなら、より多くの貧しい人を救うことができるだろう。 バングラデシュのグラミン銀行から始まったマイクロクレジットは、豊かな日本に住む私たちの常識を覆す2つのことを教えてくれる。1つめは「貧しい人にも借金返済能力がある」ということ。2つめは「効果的で効率的な援助の方法がある」ということだ。 ●マイクロクレジットvol.1 「21歳の女性が貧困から抜け出せた! バングラデシュで成功したグラミン銀行 」 text / Jibu Renge photos / グラミン銀行 , FINCA , SEF |
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