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更新日:2006年10月15日
         


“マイクロクレジット”って知っていますか? 「大企業にしかお金を貸さない」日本の銀行に慣れてしまっている現状。マイクロクレジットとは、そんな私たちの発想にはなかった、“小額無担保融資”のことです。最も持続的で効果的な貧困削減の手段とされ、いま世界中から注目が集まっています。
この画期的な試みを2回にわたって紹介します。

(※この記事は2003年8月に掲載したものです。)

文/治部れんげ(『日経ビジネス アソシエ』記者)
写真提供/グラミン銀行FINCASEF


●vol.2●
世界に広がるマイクロクレジット
借り手の半数は貧困を脱出

  バングラデシュのグラミン銀行が始めたマイクロクレジット(少額無担保融資)は、最も豊かな国、米国でも注目されている。ヒラリー・クリントン米上院議員は、グラミン銀行の手法に早くから関心を寄せていた1人だ。彼女はベストセラーとなっている回顧録『リビング・ヒストリー』の中で、2ページ半を割き、グラミン銀行への訪問について語っている。電気も水もない小さな村で、古い慣習に邪魔されながらも自分の生活を切り開いている女性たちの姿に感銘を受けた様子が記されている(P284〜286)。

  ヒラリー・クリントンは80年代、夫がアーカンソー州知事だった頃から、グラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁と親交を持っていた。州内の貧困層の経済的自立のため、アーカンソー州内にマイクロクレジット機関を作る手助けをしたこともある。実際、1985年時点で米国には10のマイクロクレジット機関があった。


すでに1億人以上の生活を変えた

  マイクロクレジットを手がける機関は、今やバングラデシュだけでなく、他のアジアの国々、アフリカ、中南米にも広がっている。世界2186のマイクロクレジット機関の発表によると、2001年12月末時点で借り手の数は5490万人に達しているという。そのうち約半数の2680万人は最初に融資を受けたとき、最貧困層に属していた。一つの家族を5人と仮定した場合、マイクロクレジットは1億3400万人の最貧困層に何らかの影響を与えたことになる。

  国連は、世界に30億人いると言われる貧困人口を「2015年までに半減させる」という目標を掲げている。世界のマイクロクレジット機関に関わる人々は、この目標を達成するにはマイクロクレジットこそが有効な手段であると考えている。


世界への普及に奔走する米国NGO

  「貧困撲滅のためにマイクロクレジットを最大限生かすべき」と主張し、このことを各国の政策決定者に訴えているのが、米国NGOの「リザルツ」だ。ロビー活動を専門とするNGOで、日本、カナダ、英国、オーストラリアなどに支部がある。マイクロクレジットに対する理解を深めるため、代表のサム・デイリー・ハリス氏は自ら講演旅行をしたり、グラミン銀行とメディアの橋渡しを手がけている。

  ハリス氏は4月に来日し、参議院会館で講演、「2015年までに貧困層を半減するための主要な手段として、マイクロクレジットが取り上げられるべきだ」と話した。民主党の広中和歌子議員が講演会の司会を務め「日本にも昔、頼母子講というマイクロクレジットに似た仕組みがあり、これが発展して信用金庫になった。現在の経済停滞を打破するため、こうした知恵を再び生かしていくべき」と解説を加えた。講演会の後、ハリス氏は民主党だけでなく自民党などの議員とも「マイクロクレジットの有効性」について話をしたという。


本当に貧しい人が助かる援助をするために

  「まだ、ほとんどの人が“マイクロクレジット”という言葉そのものを知らない。道を歩いている普通の人に知っているかと尋ねても『マイクロソフトのこと?』と聞き返されるだろう。とにかく多くの人にこれがどんなものかを知ってもらうことが大切だ」とハリス氏は言う。

  ハリス氏が「たくさんの人が知ること」にこだわるのは理由がある。先進国は開発途上国に様々な形で援助をしている。いくら多額の援助をしても、効果的に使われなくては意味がない。政府間の援助では、どのプロジェクトが必要かを調べる、いわば援助の準備段階で膨大なコストがかかり、本当に貧しい人に必要な額が行き渡らないことも多い。多くの人がこの問題に気づけば、援助のあり方を見直すきっかけになる。


多額の調査費用をかけて何もしない国際機関

  実際、グラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏は自著の中で、既存の途上国援助について、怒りをこめてこう書いている。「もしネグロス島(引用者注:フィリピンの島)のプロジェクトが、国際農業開発基金の調査使節団の一回分の資金でも受け取っていれば、数百もの貧しい家族にマイクロクレジットの手を差し伸べることができたはずなのだ」(『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房・P43)。

  5年の歳月と数百万ドルをかけて専門家が問題点を見直したにも関わらず、本が書かれた時点で、この島のマイクロクレジットプログラムは必要な資金援助を受けることができなかった。調査を手がける先進国のコンサルタントの懐を潤しただけで終わってしまったという。


豊かな日本に住む私たちに
新しい常識を教えてくれる

  一方、マイクロクレジット機関は地域に密着しているので余計な調査費用がかからない。もし先進国が、コストの高い仲介業者を通さず直接現地のマイクロクレジット機関に資金援助するなら、より多くの貧しい人を救うことができるだろう。

  バングラデシュのグラミン銀行から始まったマイクロクレジットは、豊かな日本に住む私たちの常識を覆す2つのことを教えてくれる。1つめは「貧しい人にも借金返済能力がある」ということ。2つめは「効果的で効率的な援助の方法がある」ということだ。


マイクロクレジットvol.1
「21歳の女性が貧困から抜け出せた!
バングラデシュで成功したグラミン銀行 」



text / Jibu Renge
photos / グラミン銀行 , FINCA , SEF




1995年にヒラリー・クリントン米上院議員(当時は大統領夫人)が娘のチェルシーさんと一緒に、グラミン銀行を訪れた。借り手の女性たちと話をして感銘を受けた様子は自身の近著『リビング・ヒストリー』にも描かれている。
写真提供/グラミン銀行


ザンビア
アフリカ・ザンビアのマイクロクレジット機関から融資を受けた女性。ザンビアには3800人の借り手がおり、そのうち女性は96%。返済率は98%に上る。運営は米国のFINCA(The Foundation for International Community Assistance)。中南米、旧ソ連、アフリカの20カ国で「ビレッジ・バンキング」と名づけた独自の手法で少額無担保融資を手がけている。
写真提供/FINCA


南アフリカで融資を受けた女性。子どものころから生活は苦しく、それは結婚しても変わらなかった。だが、友人から地域のマイクロクレジット機関について教えてもらったことがきっかけで、生活を立て直すことに成功したという。自身は貧しくて学校に通えなかったが、生活を立て直せたことによって娘を大学に行かせることができたそうだ。彼女にお金を貸したのは92年から活動しているNGO、SEF(Small Enterprise Foundation)。
写真提供/SEF


集会を開くSEFの借り手たち。返済日やビジネスプランについて話し合いをする時は、グラミン銀行と同様、このように集まる。
写真提供/SEF



サム・デイリー・ハリス氏
リザルツ代表。1946年生まれ。前職は高校の音楽教師。1980年にリザルツを設立。リザルツのメンバーは、新聞記者や政治家に手紙を書いたり直接話をすることで、世論形成や政策決定に影響を与えることを目的にした活動をしている。かつて米国政府が国内の子ども向け予算を減らそうとした際、それを阻止したり、医療保険に入っていない子どもの数を減らすなどの成果を上げてきた。日本、カナダ、イギリス、西ドイツ、メキシコに支部があり、それらをつないで電話会議を開くことも多い。


リザルツについて
マイクロクレジットを広める活動をしている日本の団体が、日本リザルツだ。1997年に日本政府がユニセフへの予算を減らそうとした際、ロビー活動を行い国会議員140人の反対署名を集めたこともある。日本リザルツのサイトでは、マイクロクレジットに関する基本情報も掲載されている。また、来年2月にバングラデシュで開かれる「マイクロクレジットサミット」へのリンクもある。

日本リザルツのサイト


関連リンク
岡山県に本部を置くNPO「AMDA」によるミャンマーレポート。サイト内ではほかに、バングラデシュやケニア・ナイロビなどでのマイクロクレジットプロジェクトについても報告されている。

NPO「シャプラニール=市民による海外協力の会」による日本でのワークショップの報告

広中和歌子参議院議員(民主党)のサイト


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