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【第43回】
塾長がズバッと斬る、アメリカ大統領選挙!
ケリーvsブッシュ、どっちを応援すべき?
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塾生 アメリカの大統領選(*1)、民主党も共和党も全国大会を終えたし、11月の投票に向けてラストスパートって感じですね。
塾長 このタイミングで、「ブッシュとケリー、どっちがどうなの?」と見ておきましょうか。
塾生 ちなみに、今月上旬に発表された、アメリカ国外での世論調査(*2)では、「ケリーのほうがいい」という人が圧倒的に多かったとか。
塾長 そうでしたね。でも、経済運営として見れば、どっちもはた迷惑と言えるところがあるんですよ。
塾生 や、やっぱり!? して、どんな迷惑が?
塾長 今回は、経済論理的な観点から両者をひも解きましょう。まず、経済的に忘れてならないのは、「アメリカは双子の赤字(書籍版『超・常識塾』参照)を抱えている」ということです。アメリカ経済は、世界中から借金をしないと回りません。この事実は、誰が大統領になろうとも変わりません。外からアメリカを見るときに、絶対に踏まえておかなければいけないポイントです。
塾生 双子の赤字。おさらいすると、財政赤字と貿易赤字をダブルで抱えている状態ですね。
塾長 そうそう。そこを踏まえた上で、両候補者を見比べると、言ってることには大きな違いがあります。ケリーさんは、外に向かっての赤字については何も言っていないのですが、財政赤字については、赤字なしの均衡財政に舵を戻すと明言しています。先の民主党政権、つまりクリントン時代、財政は黒字になってましたから、「クリントンが渡した健全な財政をブッシュはあっという間に赤字にしちゃったけど、それをまた元に戻します。民主党政権になれば健全財政ですよ」というわけ。
塾生 節度ある財政運営がケリーさんの主張なんですね。では、ブッシュさんは?
塾長 ブッシュ再選となれば、「今までの路線が正しいとお墨付きを得た」と彼は思うでしょう。今までどおり、財政の赤字が大きくなろうとも、どんどん減税して国民にお金を持たせたほうがいいじゃないかってことになる。「手元に戻ったお金をみなさんがどんどん使ってくださればいい」というスタンスです。アメリカの対外的な赤字が増えても、それはアメリカ国民が豊かな生活をし、アメリカ企業がガンガン設備投資をすることにつながる、とね。その結果、さらに世界に対するアメリカの赤字が増える。つまりは、世界のみなさんがアメリカに対して輸出し、世界中の国々がリッチになる。「我々アメリカの赤字はみなさんをリッチにするために形成されているのです」という、垂れ流し路線が続くことになります。ケリーとブッシュ、現象的には180度違う形になるでしょうね。
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「垂れ流し路線」か「超保護主義路線」か。 どっちしにても悪いんじゃん!?
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塾生 ケリー氏のほうが堅実な感じがしますね。
塾長 それがねぇ、ケリーになればアメリカもバンバンザイか、って言うと、そうでもないんじゃないかと思われるんです。「健全財政になる」を別の言い方にすると、「財政による景気刺激効果がなくなる」。だから、ケリー政権になれば、アメリカの景気が一段と悪くなる可能性もあるんです。特に、減税と低金利を頼りにお金を使っていた人たちが、これまでのようにできなくなるとね。
塾生 消費者がお金を使わなくなるってことかぁ。
塾長 そう。それに景気が悪くても、アメリカは自国で作っているものよりはるかに多い分量を消費する構造になっていますから、対外赤字は減らない。加えて、国外にいるアメリカ企業もたくさんものを使っている。つまり、アメリカ人が普通に日常生活をすることで、アメリカの対外収支は赤字になるわけ。おまけに効率的な経営のために、アメリカ企業はオフショアリング(*3)をやっているでしょ。雇用もますます増えなくなります。
塾生 堅実の裏返りは、そういうことになっちゃうんですね。では、日本にはどんな影響が?
塾長 財政を均衡に調整しようとするほど、景気は悪くなるが対外赤字は減らないとなると……ものすごく保護主義的な政権になる恐れがあります。ちなみに副大統領候補のエドウッズは、南部の保護貿易主義者の代表選手みたいな人。あんな可愛い顔してますけど(苦笑)。
塾生 保護主義ってことは、日本がアメリカに輸出しにくくなるってことですか?
塾長 アメリカが日本に対して鎖国をするってこと。となると、日本の輸出景気のアメリカに依存している部分はダウン。中国に依存してる部分は大丈夫としても、日本企業が中国で作ったものをアメリカに輸出してる場合もけっこうありますからそこも遮断されます。その結果、円がものすごくさがり、株も下る。株大暴落なんてことになりかねません。
塾生 景気がまた落ち込みそう……。じゃあ、ブッシュならどうなっちゃうんですか、日本は?
塾長 アメリカは、日本にとっての最大の不良債権であり続ける。日銀や日本政府、ドル預金を持っているみなさんのドル資産がいつ紙クズになるかわからない、という懸念が一段と高まります。
塾生 あ、あたしのドル預金〜(泣)!!
塾長 要するに、ブッシュなら今のまんまの垂れ流し、ケリーなら超保護主義と、どちらに向かっても経済運営の観点では「アメリカは世界にとってマイナスよ」という状況が間違いなくあると思うんですよね。我々はそこを見失ってはいけないんですよ。
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アメリカはダイエーだった!?
日本が彼らに意見できる正当な根拠 |
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塾生 それにしても塾長、その2人しか人材はいないんですか? 双子の赤字を大きな問題に考えてないのかなぁ。
塾長 考えられる人材がアメリカの上層にいない、ということ自体が問題ですよ。アメリカは大きな島国ですからね。かつて“Pax
Americana(パックス・アメリカーナ=アメリカがもたらす平和)”と呼ばれていた時代は、「アメリカよければ世界よし」だったんですが、そういうのに慣れちゃっているから、今のように“one
of them”という状態、言ってみれば「みんないいところはいいが、悪いところはダメ」という状態に対して、アメリカはすごい苦手。
塾生 かつての神童が大人になってほかの人たちと肩を並べちゃった、みたいな感覚なんでしょうか。でも、「みんないいところはいいが、悪いところはダメ」っていうのはどういうことですか?
塾長 たとえば、日本はお金はあるがほかはない、中国は成長力はあるがほかはない、アメリカは腕力はあるがほかはない、ロシアは……というように、みんなそれぞれ何もない部分と「ここだけはできる」という部分があって支え合っている状態です。それがグローバル時代の現状。みんなお互いにバッテリーのような存在になってるんですが、自家発電はできない。無極的相互依存状態です。
塾生 リーダーシップをとることに慣れているアメリカとしては、それが苦手なわけで。
塾長 そうそう。ヨーロッパ人は昔からそういう状態に慣れてますけどね。ただ、ヨーロッパは今の世界では主役ではない。今、主役の人たちはそういうのがみんな苦手です。つくづく、アメリカは「コップの中の嵐」(*4)だと思いますね〜。それに振り回されてるんですから、世界は情けないもんです。
塾生 うーむ。ホントにはた迷惑だと実感してきました。苦々しい存在だなぁ、アメリカ経済って。
塾長 ホント。経済運営ということで言えば、アメリカは世界中に迷惑をかけている。ということを、最大の胴元である日本が言ってもいいと思うんですけどね。あらかた日本が支えているわけですから。
塾生 そっか、日本はアメリカに対して胴元、つまりお金を貸してあげてる“元締め”。けっこう立場は強いはず。
塾長 そう。我々はアメリカに対して産業再生機構の位置づけにあります。というより、整理回収機構と言ったほうがいいかもしれない(笑)。
塾生 そっか! アメリカはダイエーだったんだ。
塾長 そうそう(笑)。目下、誰が親分になるかで盛り上がっていますが、誰がなっても本質は変わらないじゃないの、というのが今回のつっこみどころです。ブッシュとケリーには、再生計画をバシバシ出させないといけません。将来の社長が中・長期的な経営計画がどう出してくるか。「無謀なことは許さない」と、産業再生機構としては言わないとね。何せダイエーなわけですから。大統領選を、別のアングルから見るとこういうことですよ。
塾生 11月の投票まで、経済的にどういう議論がされるのか。みなさん、注目しましょう!
※次回をお楽しみに!
illustrations / Yamamoto Masako
editor / Yawataya Mayumi
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今回の参考書籍
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◆『攻撃計画』
(ボブ・ウッドワード 著、伏見威蕃 訳、日本経済新聞社、2,200円)
◆『週刊ダイヤモンド』
9月4日号内、書評「今週の逸冊」(浜 矩子 著)
「かつてウォーターゲート事件の全貌を暴いたウッドワード氏の『攻撃計画』は、目下売れに売れている本。イラク戦争の根拠を、アメリカの上層にいる指導者たちにインタビューした内容です。手前みそながら、それについて私も『週刊ダイヤモンド』で書評(バックナンバーの記事がHPで有料閲覧できます/編集部注)を書いていますので、そちらも合わせて読んでみてください。」(塾長)
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<用語説明> |
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(*1)
【アメリカの大統領選】
アメリカの大統領・副大統領を決める選挙は、4年に1度行われる。2大政党制のアメリカでは、共和党(現職ブッシュ大統領所属政党)と民主党(ケリー候補所属政党)がそれぞれを候補者を立てて闘うスタイル。7月下旬にボストンで民主党全国大会が、8月下旬から9月頭にかけてニューヨークで共和党全国大会が開かれ、目下11月2日の一般選挙に向けて、ブッシュ、ケリー両候補が選挙戦を交わしているところ。
(*2)
【アメリカ国外での世論調査】
去る9月8日、カナダのある世論調査会社と、アメリカのメリーランド大学が、世界35カ国約3万4000人に対して、アメリカの大統領選について世論調査を行った結果を発表。ブッシュ大統領とケリー上院議員のどちらの勝利がよいかという質問に、30カ国でケリー氏という結果に。
(*3)
【オフショアリング】
海外への業務移管や業務委託。また,雇用の海外移転のこと。
(*4)
【コップの中の嵐】
仲間うちだけの、外部には大した影響を及ぼさないもめごと。
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