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更新日:2012年1月25日 RSS

日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話

vol.134 次にやってくるのは日本危機?(後編)
日本は政府の累積赤字がすさまじい額だけれど、そのほとんどは国債として日本の個人や法人が持っているから大丈夫−−そう言われてきたのもそろそろ過去の話? ヨーロッパ各国の国債の格付けが次々下げられている今、日本国債とわたしたちの生活の今後を考えてみました。

高齢者が貯蓄を取り崩し始めたそのとき、
国債は?
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Cafeglobe(以下C)  前回は、そのほとんどを国内の機関や個人が持っていることからこれまで安全と言われてきた日本国債も、今後の景気の動きによっては必ずしも安心できない状況に陥る可能性があるというところまで伺いました。これにはいったいどう対応したらいいんでしょう。何か私たちにもできることはあるのでしょうか。

浜さん(以下H)  国債が暴落して金融機関が倒産するか、日本国が倒産するかという状況になれば、私たちの貯金だって全額保証ではありませんから、いわゆるペイオフのリミットの範囲内でしか返ってこないことは覚悟しないといけませんね。

C  でもあの1000万円までは保証されるという仕組みも、プールされている資金が底をついてしまえば終わりと聞きました。

H  そうですね。いざとなった時に、実際にどれだけの返済余力が準備されているかは、要するにその場になってみなければ解らない。

C  悲観的な予想としては、いままで中国(中期国債)ファンド、あるいは間接的ではありますが預貯金などの形で結果的に国債を買い支えてきた高齢者が貯蓄を取り崩し始めているので、あと10年もすると純粋な国の借金のほうが大きくなってくるという見通しを読みました。

H  その問題はあります。この連載でも何度も言ってきたことですが、いままでの日本は、財政は大赤字だけれど民間は大黒字だから債権大国のポジションを維持してこられたわけです。しかしこれから人口の減少が急速に進む中で相対的富裕層である高齢者もお金を使い切るとなっていくと、民間の債権ポジションも危うくなっていきますね。政府の赤字と民間の黒字との関係が逆転して、債権大国としての立場を維持出来なくなる前に、なんとかしておかなければならないということです。

C  それはつまり……?

H  この、世界でいちばん豊かな蓄えが続いている間に、カネをうまく分かち合うための仕組みを作り上げることが肝心だと思います。所得税の最高税率を引き上げるとか、消費増税をやるにしても、高額所得者が多く購入する品目について傾斜的に税率を高くするとか。あるいは社会保障制度の弱者救済力を高めるように不合理の解消や柔軟性の向上を実現するとか。それこそ税と社会保障の一体改革ということを打ち出しているのですから、分かち合いのための仕組みづくりについて知恵を絞ってもらいたいものです。

 

対外投資と富の
再配分の仕組みづくりが肝!
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C  あとは、浜さんが以前からおっしゃっている、投資などで食べていく国を債権大国である間に目指すべきだということですね。実際、2011年の日本の対外投資は648億ドルで史上最高だったそうです。これが増えると、対外投資でもいったんは経常黒字の減少になりますよね。

H  そういうわけではありません。資本流出が増えれば、その分、経常黒字は増えることになります。そのからくりは以下の通り。まず、資本が日本から流出するというのは資本勘定の話で、経常勘定とは別枠です。日本から資本が流出するというのは、言い換えれば日本の資本輸出が増えるということです。日本から出て行く資本が増えるということは、その日本資本が海外で稼ぐ利子や配当やその他の報酬が増えることを意味します。これらの利子・配当等々は、経常勘定の中の所得収支という項目の収入増として計上されます。今の日本においては、経常収支の中の貿易収支の黒字部分がどんどん縮小し、代わって所得収支が経常黒字の使用な稼ぎ手になっています。モノの輸出が経常黒字の主要な稼ぎ手である時代は、実をいえばもう終わっているということです。

C  これは国内での投資が減るということかもしれないですから、産業の空洞化は進むと想像されます。ますます所得分配をしっかりしないと怖いことになりますよね。

H  そこをどうやって投資の上がりでカバーしていくか。分配政策の腕の見せ所です。単なる補助金や給付金をバラまくようなやり方ではなく、これも以前から申し上げていますが、地域経済の独自展開をやりやすくして地域密着型の雇用を増やしていくなどの工夫が必要です。国際収支行動構造の変化は、国内における貯蓄と投資の関係の変化の反映です。内外両面の大きな構造変化に対応して、政策や制度も切り替えを進めていかなければなりません。この辺をしっかり把握した上でないと、政策も行政も何時まで経ってもピントはずれな対応に終始することになってしまいます。

C  こういったことを政府がちゃんと考えてくれているのか、素人が日経新聞を読んでいたくらいでは全然見当もつかないです。

H  日経新聞だけを読んでいたのでは、日本経済も世界経済のことも肝心なところはしっかりは解らないと思いますけれど(苦笑)。それはともかくとして、今私たちが話しているようなことを、政府は発想すらしていないと思いますよ。成長戦略をいまだに追い求めていることからして、考えていないというシグナルだと思います。

 


言葉にして求め続けることが必要
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C  政府にはきちんと考えてくれと声を合わせてメッセージングしていく必要がありそうですが、ほかに個人レベルで何か備えられることはありますか。あえて利己的なことでお願いします。

H  国外脱出(苦笑)。もっとも、どこに行けばいいかという大問題もありますけどね。たとえばブータンなんかはそれを恐れて外との関係を閉ざしているわけですよね。どこかにみんなで「ひょっこりひょうたん島」を見つけて集団移住しますか。カフェグローブ国を作るとか。みんなの豊かさ・貯蓄を持ち寄って独立する。イタリアのウンベルト・ボッシ率いる北部同盟やスコットランドのSNP(スコティッシュ・ナショナル・パーティ)などが独立をよく口にしますよね。あの感じで我々も旗揚げしてはどうでしょう。

C  もうちょっと穏健に言わせていただくと(汗)、国の財政が破綻していろんなインフラが使えなくなっても、自分たちは協力して生き残れる地域社会を作るというようなイメージですね。

H  バルセロナを州都とするスペインのカタルーニャ州なんかもそうですね。マドリッドに依存しなくても自分たちだけで生きて行けると主張する。わたしたちの国は、日本国政府にはどこにあるかを教えないようにしましょうか(笑)。

C  地域通貨の流通量も国には教えられませんね(笑)!

H  ……まぁ、以上は利己的な対応策です。Cafeglobeユーザーはこんな精神で動いてはいけませんから(笑)。そういう部分もあってもいいですが、もっと幅広く大局観のあるところから言うならば、やっぱり言葉にして求め続けることしかないんですよね。諦めずに言い続けていれば、「高額所得者にもっと負担をしてもらう」「成熟経済のあり方」といった言葉が政治家の口からポロリと出てくることもあるのでね。振り回されず、信じることを言い続けることが重要だと思います。あとは、人の痛みを自分の痛みとして感じることができる感受性をどれだけ研ぎ澄ましていくことができるかですね。これはとても大切なことです。昨年は「絆」という漢字が話題になりましたが、自分が自分のために絆を求めたりつながってやすらぐのではなく、いかに人のために自分が絆の一角を形成することができるか考えていれば、おのずと困難な局面を打開できる回答が現れてくるのではないかと思います。

C  困難で不安な時期だから、つい強い言葉を言うリーダーを求めてしまいがちな時代かもしれませんが、本当は私たちひとりひとりが考え、意見を上げていくことが必要だということを痛感します。言葉にして求め続ける、今年も頑張りたいと思います!

 

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浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
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text / Aoki Yoko
illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)