Cafeglobe(以下C) 先月、アメリカのオバマ大統領が、「新金融規制案」を発表しました。金融危機の再発を防ぐため銀行の規模や業務に制限を設けるというものです。発表後、日経平均株価も下がりました。これまで日本は、アメリカの後を追って金融自由化路線を走ってきました。先を走っていたアメリカが、ぐいっと逆方向に路線変更してしまったら、日本はどっちに行くことになるんでしょう?
浜さん(以下H) そうですねぇ、日本は3周遅れくらいでアメリカの後を追ってきた感じ。ようやく追いつきそうだと思ったら、相手は方向転換して戻って来てしまいつつある。小泉政権時代に竹中平蔵さんなどが、アメリカに追いつけ、追い越せという調子で、いわゆるユニバーサルバンキングとかワンストップバンキング(※1)を押し進めていましたよね。それこそがグローバルスタンダードだって言ってました。ところが、彼らが大好きだったアメリカ路線そのものが軌道修正に向っている。ちょっとつらいですね。自分の頭で考えないとこういうことになっちゃうということでしょう。
C この規制案、具体的にはどんな内容なんでしょう?
H ざっくり言えば、銀行と証券の業務間の垣根をもっときっちりしたものにしようというものです。ポイントは3つあって、
1. 商業銀行は、ヘッジファンドや投資ファンドを所有したり、それらに出資してはならない。
2. 商業銀行は自己勘定でリスクを伴う投資を行ってはならない。
3. すべての金融機関の負債総額に上限を設ける、
です。これらの目的は、普通の銀行がギャンブルに手を出すのを防いだり、金融機関が「大きすぎて潰せない」状態になることを防ぐことですね。
C なるほど。しかし、この規制案については「マサチューセッツ州の選挙で民主党が負けたから、支持者へのご機嫌とりのために、オバマ大統領が銀行いじめをやっている」という記事も見かけました。それに、商業銀行がこの金融ショックの火種ではなかった、だから規制をしても意味がない、という意見もあるようです。
H そういう評価は多いようですが、私はそういう意見はナンセンスだと思いますよ。オバマさんが発表した規制案の方こそが本質をついた提案だと思います。金融ショックを引き起こしたのは、商業銀行ではありませんが、問題発生後に商業銀行に転身したギャンブラー(投資銀行)がいますよね。モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスが、2008年9月に商業銀行に転身したでしょう。彼らは、商業銀行という隠れ蓑にかくれて、中央銀行の融資を受けつつ、ギャンブルに手をだせると思っていたのではないでしょうか。それに対して、今回の提案で、ギャンブルを辞めるか、商業銀行の看板を降ろすかの選択を迫っているわけです。実に的を射た考えだと思いますよ。
C そうなんですね。
H この件に関してはそうです。それに、オバマショックなんていう人もいますが、むしろボルカーショックと呼ぶべき、というかボルカー改革ですよね。
C ボルカーショック?
H ええ。ボルカーショックは1979年にも一度あったんですよ。ポール・ボルカーという人が今回の改革案の立案者なんです。元FRB議長にして強面中央銀行家。厳格で節度ある銀行家です。カーター政権時代に政治圧力をものともせず、インフレ退治をやってのけた人物です。今回、私は、やっとボルカーが出てきたか、と思いましたよ。彼がオバマ政権のアドバイザーになったと聞いたとき、面白いなって思ったんですけど、その後影が非常に薄いので、どうしたことだろうと思っていたんです。今のような事態に陥るまで、金融立国路線、自由化路線全開で来ていたから、かれもまああまり表に顔を出してこなかったんでしょうね。でもここにきて、やっぱりボルカーさんに頼るしかないってことになったんでしょう。
C そのボルカーさんの名前も知りませんでした……(汗)。そういう経緯があったんですね。ニュースをただぼんやり追うのではなく、背景を考えなくては。どうして今ボルカーなのか、何をした人だったのかって知っていれば見え方も違ってきますね。米金融規制改革に関する協議はまだ続いていますが、この先どうなるか興味しんしんです。
H はい。ギャンブラー対ボルカーの攻防も見物ですし。
C 日経平均もそうですが、世界に与える影響も要ウォッチですね。