カフェグローブvol.02 ウハウハ小泉自民党の小さな政府政策、気をつけるべきことは? - 浜矩子のお金の正体の話

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更新日:2005年10月17日
日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話
vol.02 ウハウハ小泉自民党の小さな政府政策、気をつけるべきことは?
小泉流改革がぐんぐん進むと、私たちの生活はどうなる? どうやら親世代と同じような人生は送れないことが見えてきたこのご時世にあっては、なんと自分のブログも大切な社会参加ツールになるのです。さぁ、いったいどうやって?
負け組の人たちが辛い思いをするのは
小泉改革の成果でもなんでもない
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Cafeglobe(以下C) 小泉自民党の地すべり大勝利、これはやっぱり怖い結果なんでしょうか?

浜さん(以下H) だと思いますねぇ。やっぱり国会でひとつの勢力が3分の2を占めてしまえば、ほとんどなんでもできちゃうということです。それに加えて小泉氏がケンカっ早い、思い込みが激しい、ゴリ押しで物事を進めていくなど民主主義の代表者にふさわしくない特性を持っている。これは相当警戒していなかければいけない。

 要注意、しっかり見ていかないと、ですね。

 国会中継(※1)などでも、誰が何を言っているかをしっかり見ていかないといけませんね。

 さて、今号の『ビッグイシュー日本版』で、力なきものの切捨てが進みつつある、今こそ官にできることがある……という主旨のことをおっしゃっていますが、力なきものの切捨て、やはり進んでいるのでしょうか。

 多くの企業で、成果主義や数値目標に従った業績主義が大流行りです。自分の設定した数値目標を達成できた人とできない人とでは、お給料にどんどん格差がついていく。どこかで読んだ話ですが、ある企業ではボーナスを業績主義にするだけでなく、成績が悪かった人に全社員のボーナスの袋詰めを罰としてやらせ、さらにその袋詰めをしている姿を社内の大スクリーンで放映するとか、そんな極端なことまで行われるようになっているようです。社会が成果主義型になっていくこと自体は、グローバル化が進んで競争が激しくなる中ではある程度は仕方ない。ただ、長らくの年功序列・終身雇用制度の中であまりにも淘汰や格差と縁遠くなってしまっていたので、パニックして極端から極端に行くというよくありがちな状況になっているんですね。

 ひ、ひど……。この傾向は、とくに小泉政権だからひどくなっているんですか?

 あ、そんなことはないですね。これもまた要注意なんですが、格差社会になってきていることが小泉改革の成果の現れであるかのごとく言われていますが、それは違うんですよ。「痛みを伴う改革だ!」と彼が言っていた、ホラ痛みが出てきたから改革が進んでいるんですよなんて、それは本末転倒。マスコミも悪いですね。

 副作用を見て、この薬は効果が出ているはずだと語っているような?

 痛みが出ているのは、年功序列・護送船団型だった日本企業がグローバル化に急いで対応しているからであり、長らく続いたデフレの中で必死に生き残り対策をしているからなだけ。ある意味では自浄作用であり、避けられないことなんです。

 小泉政権が何かやったからではない、と。

 まさに民間がやるべきことをやっているだけなんです。

市役所や区役所が小さくなっていく!
これって、いいことなの?
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 ビッグイシューの原稿は、こんなときだからこそ、官……つまり行政が民にできない仕事をしっかりやらなければいけないという主旨でした。浜さんが今そうおっしゃるのは、官がしっかりやれていない、あるいはやらなくなるのではという心配があるからなんですか?

 小泉政権がよく言う「民でできることは民に」。原則は正しいのですが、官の責任逃れにつながる可能性もあります。官はできるだけ何もやらないということでは何のための公共サービスか。

 そういえば、小泉政権は「小さな政府を目指す」と言っています。わかりやすく言えば、たとえば市役所や区役所が小さく、人が少なくなるってことですよね。これはどうなんでしょう。

 たしかに今までは官が大きくなりすぎていて、1人の公務員が1つの仕事しかこなさない状態になってきていました。それでますます行政の縦割化が進んできたり。そういうところは改善の余地は非常にあると思います。でも、1人1役しかこなさないままで人数の大幅削減をしたら……

  行政が行う仕事も大幅に減ってしまうということですね。

 行政サービスの質的な低下です。それを防ぐため、いかに効率を上げていくかが勘所ですね。行政を小さくして無駄を省きますと言っても、何もしないくせに給料ばかりとっている人が変わらなければ、いくら小さくなっても無駄は無駄のままですから。

  いわゆる「大きな政府」と「小さな政府」論ですが、どちらがいいんですか?

 どちらがいいということはないですね。行政が質が高く無駄がなく、民間にできないサービスを提供できているのであれば、辛い思いをしている人に癒しが届くのであれば、大きくても小さくてもいいんです。小さくすれば成功というようなことは決してない。郵貯を民営化したから成功と言うことができないのと同じ、道路公団だって同じです。我々としては、行政サービスがどれだけ今の時代と我々のニーズに応えられるものになっているかをきちんとチェックしていかなければいけない。政府が小さくなるというのにこれから増税までされそうなんですから、いっそう厳しい目が必要でしょう。
経済が成熟しきってきている今は、
社会が大きく変わる転換点だから要注意
Back Number
 行政をチェックというと、たとえばどんなことを見ればいいんでしょうか。

 たとえば、中央政府ではありませんがわかりやすい例として、今東京都はかなりの福祉切捨てを始めています。生活保護の一時給付を取りやめたり、バスのシルバーパスの見直しなどを進める一方で、民間企業主導の商業コンプレックス再開発に力を入れるなどしている。あるいは話題の佐藤ゆかり氏が「サラリーマンは、これからはどうせ給料は上がらないからもっと株を買え、自助努力すべき」というようなことを言っていましたが、あれもいわば「民間丸投げ」的発想の例です。

 世界的に見れば、大きな政府と小さな政府、どちらが潮流というようなことはあるんですか。

 経済が成熟してきている先進国でいえば、肥大化した政府を適正な大きさに直そうとしているところが多いですね。どこも財政赤字が膨らんでいるので、なんとかつじつまを合わせるために無駄な歳出の削減に知恵を絞ることを迫られている。日本はその典型というわけです。

 経済が成熟しているというのはどういう意味ですか?

 中国のようにビルがどんどん立っていて下水整備もまだまだこれから……というように、放っておいても経済活動がおのずと拡大する余地が大きい経済が若い経済です。一方、発展がひととおり完了して、下水道も道路も完備してあとはメンテナンスだけとか、大きな成長の余地があまり残っていないのが成熟した経済です。日本はもういらないのにまだ道路を作ろうとしていたりするわけで。

 お金の回転が悪くなってきているわけですね。

 もう経済成長率がグングン上がる余地はない。ということは、政府の税収も上がらない。それなのに面倒を見てもらう側の、生産しない人口の比率が大きくなってきている。社会として、避けようのない転換点に差し掛かってきているわけです。

 たしかに、私自身もちろん親の世代を見て育ち、社会というのはこういうものなんだろうと思ってきたわけですが、どうやら同じことをやっていたんでは立ち行かないんだな、環境が変わってきているんだなという緊張感は感じています。

 そういうことですね。親たちとはまったく違う社会に生きていることは心得て、自分の目で見て考えて行動していくことが求められていると思いますよ。
「どうせ私には何もできないじゃん、ケッ」
――そういう姿勢にだけは絶対なっちゃダメ!
Back Number
 最後にひとつ教えてください! 政府がやることをチェックしていかなければいけないというのはわかるんですが、次の選挙になるまで与党が衆議院の3分の2というのは変わらないわけで、たとえば行政サービスがみるみる減ってしまっても手も足も出ないんじゃないでしょうか。市役所や区役所に電話をして文句を言っても変わりそうにないし、「何もできないじゃん。ケッ」と小石を蹴るしかないのでは?

 役所に文句をつける、クレイマーになることも必要だと思いますけれど、みなさんこの忙しい日常の中でそんなことを一々やってはいられないというのも現実でしょう。でも、たとえばCafeglobeのBBSとか、いまどき流行りのブログとか、そういったところで、日ごろの愚痴とか憤懣をみんなで言っていくというのは意外と有効なことですよ。メディアもネット上の世論はかなりウォッチしていますから、不満の声が不満の声を呼んで批判的な世論が盛り上がってくれば変化のきっかけになっていくでしょう。決してサイレント・マジョリティ(※2)になってしまわないように。大勢の人々が「ケッ」という態度になってしまうことが、社会にとってはいちばん危険なのです。

 ネットでのおしゃべりにも、単なるウサ晴らし以上の効果があるかもなんですね。勇気がわいてきました。みなさん、さっそくCafeglobeのBBSへゴー!ですっ。

■次回予告:
止まらない原油価格の急上昇。どうして
こんなことに? 私たちの生活はどうなるの?
Back Number
『ビッグイシュー日本版』と連動中!
浜さんが、毎号Cafeglobeと同じトピックで記事を連載しています。合わせて読んで、理解を深めよう。
ビッグイシュー日本版 最新号
最新号好評発売中! 目次、販売場所など詳しくはビッグイシュー日本版のサイトで。
>>ビッグイシュー日本版
お知らせ!
今年も「GRP2005」を実施します。「知らないことを知ろう」をテーマに、心地よく生きていくために知っておくべきこと、いくつか探っていく予定。この連載以外にも、ビッグイシューに関係する企画を計画中なのでご期待ください。
浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
用語説明

(※1)
【国会中継】
インターネットで国会中継・ビデオライブラリーを見ることもできる。
●衆議院
※たとえば、佐藤ゆかり氏の国会質問ビデオは、「10月7日」「佐藤ゆかり」「郵政民営化特別委員会」で検索すると出てきます。
●参議院

(※2)
【サイレント・マジョリティ】
直訳すれば「もの言わぬ多数派」。ベトナム戦争に反対するムーブメントに対して、「私にはサイレント・マジョリティの支持がある(反対しているのはマイノリティに過ぎない)」と言ったニクソン大統領のスピーチで広まったフレーズ。政府の方針に異議があっても、反対を唱えたり行動したりしなければ、その人はただのサイレント・マジョリティ。政府にいいように味方として扱われてしまうというコト。
Back Number
illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)

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