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更新日:2006年1月17日 RSS

日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話
vol.08 ニュースの取り方・考え方
経済指標や政治家動向から事件事故まで、怒涛のごとく流れているニュース。その膨大な情報とはどうつきあうのが効果的? 浜さんご自身のニュースの取り方をはじめ、ニュースの考え方、あるべきスタンスを伺ってみました。
流れてくるニュースにはすべて注目!
好奇心を持って受け止めてみよう
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Cafeglobe(以下C) さて、今回は『ビッグイシュー日本版』が合併号でお休みなので、ジャーン! Cafeglobeオリジナル企画です。お題は前回の話題を受けて、「ニュースをどこからどう仕入れるか、ニュースをどう自分のものとして使いこなすか」。情報洪水の中をどうスマートに泳いでいくべきかについてお聞かせください。まず浜さんが普段ご覧になっているニュースソースにはどんなものがあるんですか?

浜さん(以下H) 私のニュースの取り方はものすごく普通ですよ。商売柄、日本語ならやはり『日経新聞』は読みます。英語の新聞は『フィナンシャル・タイムズ(※1)、あとはやはりイギリスの週刊誌『エコノミスト(※2)、購読しているのはこの3つくらいですね。それでも隅々までじっくり読む時間もないほどです。Cafeglobeユーザーのみなさんも、忙しい生活の中でどう効率的に情報に当たるかが課題だと思っていらっしゃるのでは。

 インターネットはいかがですか。

 新聞系・通信社系のサイトはよく見ますが、ネットはどちらかといえば調べものをするときや、為替など最新の速報を時々刻々と知りたいときなどに使いますね。情報の一次ソースとしては活字のほうが多いかな。でも、そもそもニュースソースはあまり選ばないところから出発なさったほうがいいかもしれませんね。あの新聞は読まないとかこのニュースしか信用しないと決めては情報収集の間口を狭くしてしまうのでもったいない。ニュースとして報道されるものは、まずすべからく拾って受け止めるべきだと思います。たとえば朝の支度をする中で、テレビやラジオから流れてきた小さなニュースからでも情報を吸収するスタンスはとても大切です。

 選ぶよりまず受け止めよ、と。

 内容的にも間口を狭くしないこと。どんなニュースに対しても、「これってどういうことなんだろう?」と興味を持って、とりあえず受け止める。最近の若い人の傾向として、自分との直接の関係を求めすぎる傾向があると思うんですね。本来、若い人は世界に対して好奇心――子どものようにすべての物事に対しての驚きと関心を持って向かっていくはずなのに、今は若い世代ほど視野狭窄になっているように見えます。でも、知識は力であり、力があれば怖れずにすむようになり、他人に対してやさしくなれます。その最初の一歩として、ニュースは基本的にすべて吸収しようという姿勢から出発してほしいと思うんです。

テレビニュースはあまりにアテにならない
他ソースで得た情報の確認程度にとどめて
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 でも、テレビなどは「ニュース」と称しつつ毎日タマちゃんの様子を流していたりします。

 残念ながら、テレビはニュースソースとしての「あてにならなさランキング」は1位ですね。テレビはペースが速すぎてきちんとニュースを伝えきれないという媒体特性があります。1つのトピックに使える時間が3分もあれば大ニュースですから。そして映像になりにくいものはニュースになりにくい。経済は番組が作りにくいとはテレビの人たちがよく言うことです。タマちゃんのような画像がないですからね。

 タマちゃんのようにかわいくないですしね……。

 金利がどうとか成長率が何%だとか、それでパネルを作ったり苦心して見せているわけですが。いずれにせよ、映像で短い時間でとなると、極度に単純化・漫画化した形で伝えることになる。だからテレビのニュース番組ばかり見て分かった気になっているとバカになるというのは言ってもいいんじゃないでしょうかね。

 小泉劇場がもてはやされるのもテレビのせいですよね。

 そうですね、小泉劇場があれほど成功したのは、テレビの漫画風演出にぴったりフィットしたからです。メディアの人たちも今かなり反省していますけれど、ニュースにしやすいからマズイと思いながらも引っ張られてしまったって。テレビのニュースは、新聞などで得た情報を映像で確認するため程度の使い方がいいでしょう。

ニュースはジグソーパズルのピース
記事のスクラップ作りもやっぱり有効
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 では、すべからく拾って集めたニュースの使い方、考え方はどうしたらいいでしょうか。さきほど、ニュースは基本的にすべて吸収しようという姿勢でというお話がありましたが。

 ニュースはジグソーパズルのピースのようなもの。まずはピースをたくさん集めなければパズルは解けません。どんな絵が出てくるかもよくはわからないけれど、集めた手元のピースをあっちこっちに合わせているうちにパッと繋がって見えてくるものなのです。それまでは新しいピースを手に入れては、頭の中のフォルダーになんとなく入れて整理しておくんです。たとえば今のロシアとウクライナの天然ガス供給の問題でも、少し前のウクライナのオレンジ革命のピースを持っていれば、ここでピシッとはまって「なるほど!」と面白く見えてくるわけです。有名なウォーターゲート事件(※3)を新聞記者たちが暴くことができたのも、彼らなりに「ん?」と思った小さなニュースを溜めていたから、ピースが集まり始めたときに、大きな政治スキャンダルの姿が見えてきたわけです。

 ニュース収集というと、記事スクラップという古典的な方法がありますが、これは有効ですか?

 古典的ですが、これはやっぱり有効なんですね。私ももうさすがにやめようかと思うこともあるんですが。三菱総研にいたときにはアルバイトの方が切り貼りしてくださっていましたけど、今は自分でやっていますから、貼るまではしていません。はさみも使わずひっちゃぶいて(笑)、テーマ別のフォルダに放り込んでいくだけですが。そこまでしてどれだけの頻度で使うかというと正直それほどではないんですが、一朝有事の際にはやはり役に立ちます。あとは、じつは記事スクラップをする際、読んで切って貼ってファイルしてと、4回くらい記事を見ることで頭に残るというところに価値があるんです。たまってくると充実感もあるし、ジグソーパズルのピースが集まっている実感もありますよ。

役に立つ海外メディアの解釈系ニュース
でもニュースを見抜く力はやっぱり必要
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 最後に、海外のニュースソースについて伺います。ネットなどで英語など海外のメディアにも簡単に触れられるようになってきましたが、こういった場所でニュースにあたることも大切でしょうか。

 海外のニュースやメディアに親しみがあるようにはなっておいたほうがいいでしょうね。日本の報道記事は正確さ・公平さなどを標榜しすぎて結果的にわかりにくくなっていることが多い。政府発表や政党などの発表が新聞にそのまま掲載されていてチンプンカンプンだったり、経済指標などもそれが何を意味しているのかわかりにくいことが多いんですね。それに対して、英語のニュースは総じてわかりやすい傾向がありますね。西洋人はエゴイスティック、自分ありきですから、ニュース記事も自分が理解したことを伝えようというスタンスで書かれているので、「そういうことだったのか」とわかりやすかったりするのです。

 たしかに、かなり堂々と、怖れずに解釈をしますよね。イギリスやアメリカの総選挙の際、新聞に各党の政策比較が載っていて、経済・外交・福祉など各党の公約や政策が一覧表になっていたんですが、思いっきり解釈されていてとてもわかりやすいと感心した記憶があります。日本の新聞は各党の公約を言葉もそのまま載せるから、総花的であいまいで、本当はどうしたいと思っているのか全然わからない。メディアとしては批判されないから安心でしょうけれど。

 書き手の解釈が間違っていたり曲がっていたりすると困りますけど、それも含めてある人間が考えるというフィルターを通すことによって整理されるんですね。日本の郵政の問題でも、業務分割とか持ち株会社とか、日本の新聞の記事をいくら読んでもピンと来なかったのに、フィナンシャルタイムズにはスッキリ整理されていたということがありましたね。

 日本の状況を理解するにも海外メディアに当たることは有効なわけですね。

 一語一句まで理解しなくても、日本で騒がれていることがこんな風に報道されているのかとざっくり把握するだけでもかなり役に立つでしょうね。ただし、過剰解釈にもまずい面はあります。政党や政治家が言っていることの解り難さや辻褄のあわなさがそのまま伝わって来ることが必要な場合もありますからね。メディアの側であまり上手にまとめてくれてしまうと、政治家たちが実態より有能にみえてしまったりする恐れもあって……。見方を変えれば、どこまでが単純報道でどこからが記者の解釈かを見抜く力も読者側に問われる力量。その力量を磨くことも重要だと思います。

 他にニュースについて気をつけるべきことはありますか。

 最近ちょっと引っかかっているのは、報道にずさんな言葉の使われ方が目立つことです。先日も、誘拐だったか殺人だったかの事件の犠牲者についての説明で、その人がその事件に「巻き込まれた」と表現していたんです。これは非常に変で、間違えた印象を視聴者に与えますよね。

 巻き込まれたと聞くと、交通事故とかで、偶然だから仕方ないというニュアンスを持ちます。

 そう。でもこの人は標的にされたわけで当事者です。つけ狙われたわけです。こういう言葉に怠惰なニュースが最近とても増えている気がしますね。ニュースには、内容についてもさりながら、こういった不正確な伝え方にも警戒する気持ちを持って接することは必要だと思いますよ。そこまでできればハナマル◎だと思います。

■次回予告:
ジンギスカンとヨーグルトの決戦に思う、
経済でリーダーシップをとるためには
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お知らせ!
今年も「GRP2005」を実施します。「知らないことを知ろう」をテーマに、心地よく生きていくために知っておくべきこと、いくつか探っていく予定。この連載以外にも、ビッグイシューに関係する企画を計画中なのでご期待ください。

※ただいま企画を練りに練っているため、もう少しお時間をいただき、2006年初旬からのスタートとさせていただきます。
浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
用語説明

(※1)
【フィナンシャルタイムズ】
薄ピンクの紙が目印、イギリス発の世界で最も有名な経済紙。
●Financial Times


(※2)
【エコノミスト】
政治・経済分野では世界で最も有名な週刊誌。
●The Economist


(※3)
【ウォーターゲート事件】
些細な盗難として片付けられかけた事件をきっかけに、当時のニクソン政権のさまざまな情報操作・もみけし工作などのスキャンダルが次々に露呈。「ワシントンポスト」紙の記者などの調査報道が大きな役割を果たした。結果、ニクソン大統領は辞任。

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illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)