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更新日:2006年2月15日 RSS

日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話
vol.10 ライブドアショックから何を学ぶか
転んでもただでは起きない知的覚醒オトナノオンナのためのCafeglobeでは、この一連のライブドア事件からも、今後のための教訓を学びとっちゃいます。株トレードに果敢に挑戦したばかりに損をしちゃったというアナタ、挑戦しようと思っていたけど今回でビビッちゃったというアナタ、ぜひ読んでね。
錬金術師がいる!と怖がるよりも、
錬金術師にどう対応するかを学ぶべし
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Cafeglobe(以下C) ライブドアの株式がついに上場廃止になりそうだということですが、この一件では東証一部まで大揺れに揺れました。メディアには「ホリエモンは近代の錬金術師」などという見出しが躍りましたが、『ビッグイシュー 日本版』で浜さんは「錬金術師も使いよう」とお書きになっています。これはどういう意味で?

浜さん(以下H) 使いようというのは、ある意味では経済に活力を与える効果があるからですね。誰も何も悪さをできないように封じ込められている経済というのは活動力が弱いですし、抵抗力も弱いから、それでも堰が切れてしまったときに大パニックに陥りやすい。今回の東証なんかまさにそうだったわけです。事前規制でがんじがらめにされている体制の脆さがとてもよく見えた出来事だったのではないでしょうか。

 錬金術師で市場の活力が試される、と。

 言ってみれば、あの程度の錬金術師に翻弄されるほど弱かったと。以前、ホリエモンが外人記者クラブに招かれてスピーチをしたときに、「僕に騙されたちゃいけませんよ」と言っていたんですね。「騙されるほうが悪い」と言うなんてけしからん奴ですけれど、ある意味当たりなんです。東証や金融庁が個人投資家をリスクの説明もあまりしないまま一生懸命株式市場に誘い込み、個人投資家もその口車に乗って気軽に入っていった、そんな環境にも弱さはあったわけです。

 錬金術師の存在のみを嘆くより、錬金術師に右往左往しないように成長するべきなんですね……。

 資本主義経済の中では、よこしまな企業が悪いことをしたり、へぼな投資家が失敗したりして、その波及効果がどっと広がるというようなことはあって当たり前なんです。それが怖いからといって、事前規制で全部排除しようとしてきたのがこれまでの日本の経済社会。それで自らの体質を弱めてきたという面はあると思いますよ。

ライブドアショックは
典型的な株価の下がり方
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 それにしても、ライブドアに強制捜査が入ったとたん、ライブドアのいるマザーズだけでなく、東証全体の株価まで落ちたのは、急激に増えていた個人投資家の狼狽売りが多かったということなんですか?

 それ自体は仕方のないことだと思いますよ。投資家としては、持っていたら損をするのが明らかな株式を持ち続けるのは理屈に合いません。出来るだけ早く売り抜けたくなるのは当然です。また、信用取引など借金をして株を買っている人の場合、株価が下がれば担保価値が下がりますから、いわゆる「追証」として現金を入れなくてはならなくなりますから、売らざるを得ないですよね。パニック売りといっても心理的なパニックだけでなく、お金が足りないから売る人が殺到する、という典型的な株の下がり方ですね。

 いままでは個人投資家が少なかったからそういう動きが出にくかっただけなんですか。

 機関投資家ばかりしかいなくて、株式の持ち合いをしていればこういうことはあまり起こらないですからね。安全ですが、いわば死に体の株式市場だったわけです。資本主義下の株式市場である以上、こういうことが起こりうることが前提でなければいけない。そしてそうなったときにも「おお、また起きたね」と東証も慌てず騒がず対応できて、投資家たちも「しょうがないから被害を最小限に食い止めてまた次頑張ろう」というような、そういったパニック慣れした対応ができるようになってくれば、市場としての成熟度が上がってきたといえるでしょう。

 いかに株式市場といっても、日本のはそうではなかったか、ということですね。

 普通の株式市場のようにするべく、政策や証券取引所が焦ったのが、あの程度の坊主に翻弄される状況をもたらしたわけです。ホリエモンというケチな山師を問題にするよりは、それで露呈した市場の弱さに注目すべきなんです。

ホリエモンは、
錬金術師というより魔法使いの弟子
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 ホリエモンがやっていたことを考えていたんですが……もちろん利益のごまかしなど、絶対にやってはいけない犯罪があったらしいわけですが、株式市場には錬金術的な要素はつきものと言えるのではないでしょうか。企業が夢やビジョンを語って投資を集める、自分たちは金を生み出す方法を知っているんですよ、と。

 錬金術師というのは、石ころを金やダイヤモンドにしてみせると、嘘だと知って語っている詐欺師か、本当にできると信じている妄想家のどちらかです。いかに錬金術師にならずに夢を語り、ビジョンを持てるか、それが企業家・事業家であることの醍醐味でしょう。大風呂敷を広げつつも、錬金術師とのスレスレの一線は越えない器量を持っているかどうか。一方で投資家の方も相手が本当の企業家精神の持ち主なのか、いかがわしい錬金術師なのか見極めなければいけないんです。それもまた醍醐味で。

 Cafeglobeユーザーにも今投資を始めている人は相当多いようです。

 たとえば将来Cafeglobeに投資をしようかというときにも、Cafeglobeが錬金術師に成り下がっていないか、きちんとチェックをするべきですね。もっとも、ホリエモンに関しては、私は錬金術師というよりは、魔法使いの弟子だったと思いますよ。覚えたての魔法を使ったはいいけれど終わらせ方がわからないという意味で。その意味では、軽はずみに個人投資家に呼びかけをした東証と金融庁、厳しい言い方ですが軽はずみに参加してしまった個人投資家、この魔法使いの弟子の三位一体が出来上がってしまった。この状況から将来のために何を学び取るべきかというところですね。これでやっぱり錬金術師は怖いから規制を強化しようとか、それでは元の木阿弥なわけです。

 錬金術師を見分ける方法というのはあるのでしょうか? たとえば数字の解析などからわかるとか……。

 結局は人を見るというところでしょうか。肌で違いがわかるようになるためには、地球津々浦々の世の中や歴史を知っていること、新聞をきちんと読んでいるなど、日ごろのあり方にかかっているんでしょうね。もちろんそんな偉そうなことを言っていたってコロッと騙されることもあるわけですが。いかにふだんから緊張感高く、知的に覚醒しているか、氷山の底辺部をどれだけ充実させておけるか、そこにかかっているということですね。

■次回予告:
グリーンスパン氏にかわってFRB議長になった
BBことバーナンキ氏。FRBってどんな組織?
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お知らせ!
今年も「GRP2005」を実施します。「知らないことを知ろう」をテーマに、心地よく生きていくために知っておくべきこと、いくつか探っていく予定。この連載以外にも、ビッグイシューに関係する企画を計画中なのでご期待ください。

※ただいま企画を練りに練っているため、もう少しお時間をいただき、2006年初旬からのスタートとさせていただきます。
浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
用語説明

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illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)