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更新日:2006年5月1日 RSS

日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話
vol.15 外貨準備高で中国に負けた!? ……いやいや違う見方をすれば
「外貨準備高で日本は世界一」ということを耳にしたことがある人は多いのでは。2月、ついに中国はこの外貨準備高で日本を抜いて世界一になったと発表。その意味は? 外貨預金をしている人はとくに必読の回!!
外貨準備高が大きいということは
世界のお金の貸し付け主ということ
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Cafeglobe(以下C) 今回のお題は「外貨準備高で、中国が長らく世界一だった日本をついに抜いた」です。つまり、世界でいちばん貸しているお金が多い国に、中国がなったということですね。お金持ちですねー、中国。

浜さん(以下H) お金持ちかというと一概には言えませんが、外貨準備高が大きければ世界で大きな顔ができるのは確かです。発展途上国の場合、外貨準備高の不足で経済成長に足かせがかかるものなんです。つまり経済成長をしたくても、原料を輸入すると国際収支がすぐに赤字になってしまう。外貨を持っていない国が赤字になれば、その通貨の信用が下がり、為替切り下げを求められたり、市場で自国通貨がたたき売りの対象になる。結果的に、たとえば日本であれば超円安になったりしてしまうわけです。日本も昔はこれに苦しんだんですよ。外貨準備高がたっぷりあれば、周りの国々も安心しますから、為替切り下げ圧力の対象になるという制約から解放されるということなるわけです。それだけ、世界経済の舞台で信用される国になるということですね。

 日本の外貨準備高は財務省のWebサイトで公表されていますが(※1)、それを見ると、4月7日時点での日本の外貨準備高は8520億ドル、ざっと100兆円(すごっ)。日本の外貨準備高はいつごろから増え始めたんですか?

 1960年代から徐々に増え始め、世界一位になったのは1980年代ですね。いみじくも、バブル経済化に向かう中で、日本的「KEIEI(経営)」がもてはやされていた頃です。そこからじわじわずっと膨らんできています。

 中国が急激に外貨準備高を伸ばしてきたのは、中国の物が世界中で売れているからだそうですね。

 輸出が増えて企業が外貨を稼げば、企業はその外貨を自国の通貨に換えるのが基礎的行動です。そのまま外貨で運用する場合もむろん多いですが、民間部門の外貨稼ぎが増えれば、その換金を通じて巡り巡って国の外貨準備が増えることになります。もう一つのルートが為替介入です。自国通貨に買い圧力がかかった場合、通貨当局は自国通貨を売って外貨を買いますから、その結果として外貨準備高が増えることになります。

借金大国、アメリカを支える役目に
中国が加わってくれたという見方もできる
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 外貨準備高で中国に抜かれたことを、日本としてはどう考えればいいんでしょう?

 考えてもしょうがないですね(笑)。中国の成長率のすごさに瞠目し、すごいなぁとあらためて実力を評価することは大切でしょう。むしろ、中国が外貨をどんどん増やしているということは、日本がこれまで一手に引き受けていたアメリカの借金を、中国も一緒に支えてくれるようになってきたということ。日本の肩の荷が少し軽くなるという喜ばしい面もあるわけです。

 そうか、「外貨」準備高と言っても、その大半はアメリカドルだそうですね。

 そう。中国はしたたかですから、アメリカドルを買い支えながらも、そのことを材料にすでにアメリカをきちんと脅している。自分の責任で赤字が溜まっているくせに、人民元を切り下げろとか、まったく礼節のない野蛮人めと。

 お金を貸してあげているわけだから、日本だってアメリカに対してもっと強い態度をとってもいいのではないでしょうか。

 以前にも触れましたが(第11回参照)、アメリカにとって日本はもうメインバンクです。メインバンクは本来借り手に対して箸の上げ下ろしにも文句を言うくらい厳しいものであるべきなんです。いってみれば、アメリカに対する債権こそ、日本というメインバンクにとって最大の不良債権だという面があります。ですから、管財人としてガンガン文句を言っていい立場に日本はあるわけです。まぁそこまで言わなくても、真の友情ある説得者、善良なる管理者として日本がアメリカに物を言うべきなんです。その点、もうひとりメインバンク仲間が、それもちょっと意地悪な仲間ができたわけですから、ちょっと横目で見習ってみるのもいいのでは。

ドル暴落から世界恐慌へ……!?
ギリギリで賄われている世界のドル
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 『ビッグイシュー』誌の原稿の中で浜さんが触れておられますが、これからドルが暴落する可能性というのは、本当にあるんでしょうか?

 これはもう本当にあると思いますね。ドル暴落の可能性はもうずっと、我々の上にダモクレスの剣のように常にぶらさがってきているわけです。プラザ合意のあたりもそうでしたし、ブラックマンデーもそうでした。そのたびごとに日本を始めとした国々がドルを買って必死で買い支えてきたわけです。

 アメリカの景気はまだまだいいと報道されていますが、それでも?

 いままでアメリカがあんなに赤字でも景気よくやってこられたのは、不況の日本の中で行き場がなかった円がドルになってアメリカに行っていたからです。でも今日本の景気がよくなってきて、日本の資金が日本の中で回るようになってきていますから、今こそ可能性が高まってきていると言っていいんじゃないでしょうか。

 ドルが暴落したら、世界中大変なことになりますよね?

 まず、ドルをいちばん持っている中国と日本が大損失ですね。世界中でも大損をする人が大勢出てきて、アメリカ株も暴落するでしょうから、売りが売りを呼んでもう果てしない……

 恐慌……ということですか。

 どの国もそれを避けたいから、日中を始め、ドルが暴落しないように必死で買い支えるでしょう。まさにアメリカが大きすぎて潰せないからみんなで面倒を見ているわけです。

プチ投資家として自分のお金をどうする?
……やっぱり3通貨で分散するべし
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 いきなりスケールが小さくなりますが(笑)、外貨預金や外債などを買うのが流行っていますが、プチ個人投資家として、このニュースはどう考えたらいいでしょうか。

 オーソドックスなリスク分散の方法ですが、やっぱりひとつの財布に全部のお金を押し込むことはしないほうがいいでしょう。単純な話、円・ドル・ユーロで1/3ずつ。どれかが暴落しても、その分他が上がれば痛手を最小限に食い止めてくれるはずですから。

 その中に人民元もそのうち入ってくる時代が来るんでしょうか。

 今は個人では人民元は自由には買えませんし、まだまだ得体の知れない通貨ですが、そうですね……そのうちは入ってくるでしょうね。中国実体経済の危うい過熱ぶりなど、今は事実上の固定相場で中国内部に押し留められているものが、いつか変動相場になってすべて世界に繋がるとき、相当な波乱がありそうな気がしますね。当分は、ハイリスク・ハイリターンを狙ってよほどこまめに動くのでなければまだまだ先なのではないでしょうか。

 日本の貿易高も対米より対中のほうが大きくなったとか、本当に国際経済の風景がどんどん変わっているのを感じます。

 かつて日本が国際経済の舞台に踊り出たときと似ていますね。あるいはもっと前の大戦直後、アメリカの台頭に動揺したヨーロッパ。あのヨーロッパは今の日本であり、あのアメリカは今の中国と重なります。大きく流れが変わる潮目というのはあるんですね。それを私たちは今目の当たりにしているんですよ。


■次回予告:
バンダナおじさんベルルスコーニ地団太!
イタリア総選挙の混迷に映るさまよえるEU

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浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
用語説明

(※1)
【日本の外貨準備高】
財務省の毎月末の外貨準備高とその内訳が発表されている。遡って1997年のものまで見られるが、この4年ほどの間にぐっと倍に増えてきている。
●日本の外貨準備高(財務省)


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illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)