カフェグローブvol.39 Au revoir! 昔のフランス……。そして気になる“氷屋”さん - 浜矩子のお金の正体の話

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更新日:2007年5月18日
日本が世界に誇るエコノミスト・浜矩子の わかりやすいお金の正体の話

vol.39 Au revoir! 昔のフランス……。そして気になる“氷屋”さん
フランス大統領選は右派サルコジ氏が勝利。その後反発する人々が放火、投石……といったニュースも報道されました。「大変そー。日本は移民問題もないし、失業率もフランスよりましだもんね」。ノン! 日本の私たちこそしゃきっと意見せねば。例えば……。

“武士は喰わねど高楊枝”じゃいられない
あのフランスまでもがアメリカ風になっちゃう!?
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Cafeglobe(以下C) 注目されていたフランスの大統領選、右派のサルコジ氏が勝利をおさめました。ということは、フランス人もアメリカのような競争社会、改革路線でやって行こう! ってことでしょうか。

浜さん(以下H) 変わらざるを得ないと考えた人が相対的に多かった、と言うことですね。53.06パーセント対46.94パーセントでしたか。サルコジとロワイヤル、両氏の違いをひとことで言えば、“ロワイヤルの分配に対しサルコジの競争”という図式ですね。フランス人にしてみれば、嫌々、だとは思いますが今は競争を選ばざるを得ない、という判断でしょう。

 いままでアンチアメリカだったのに。バカンスたーっぷりとって、あくせく働くより人生を楽しみたい、というようなフランスらしい雰囲気が消えてしまうとしたら、それは寂しいような……。

 「武士は喰わねど高楊枝」じゃありませんが、失業率というような生々しい内政問題があまり政治上の大テーマにならない国だったんですね。ことのほかフランスの大統領というのはそういう雰囲気でした。だから今のようになってしまったという面もありますね。

 これはもう、世界中が競争に向かわざるを得ないってことですか?

 そういう流れですね。ただ、全面的にそっちに行ってしまったら、誰もが競争にくたびれはててしまう。地球を挙げて食うか食われるかをやっているうちに共食い状態になって誰もいなくなってしまう。だから、競争原理が前面に出れば出るほど、つまりサルコジ路線になればなるほど、本来は政策が補完的役割を果たす必要があります。分配のことを考え、弱者救済に取り組まなくてはいけないわけです。そんな時に政策までが市場原理をプロモートするのはおかしいことです。日本が今そうなっていますけどね。

日本の失業率はフランスに比べれば随分まし
……だけど、これってヤバい状態なのかしら
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 フランスの失業率は約10パーセント。それに比べ日本の失業率は約4パーセント。抱える問題の深刻度は違うように思うのですが。

 ええ、数字の上では。失業率のレベルは全然違いますね。しかし、かつてはほとんど完全雇用状態がいつでも当たり前、という感じだった日本にとって、なかなか4パーセント前後から下がらない失業率というのはやはり衝撃が大きい。かつての日本の社会においては失業者を出さないために、民間が頑張っていたという面があります。かつて日本が、護送船団だ、平等社会だと言われていたころには、失業率が1パーセントを上回るとみんなパニックに陥っていました。2パーセントになったらこれはもう世の終わりだと言うくらいで。それに比べるともう2倍ですからね! 1パーセントの4倍ですから。衝撃の度合いはね、フランスに勝るとも劣らないということです。

 フランスのように暴動が起きたりはしませんが……。

 しかし、陰湿ないじめだとか凶悪犯罪だとか、不健全なかたちで不満が出てきていますから。やっぱり要注意ですね。気づいたら、ご近所がハンニバルのような人だらけになってしまわないうちに(笑)。

 う、それは怖すぎますっ! 早くグローバル経済がいい感じに巡るようになって、みんなで文化的で成熟した社会にして、やっぱり“高楊枝” 的な余裕が欲しいです。

 なかなかそういう風にできる突出した存在が出現するのは難しいんです。このグローバルジャングルという場所では。しかし、そのなかでは、日本は失業率もまだ4パーセントですし、世界最大の貯蓄大国ですから。これだけ豊かなんですから、やれることはたくさんあるはずなんです。
中国から“氷屋さん”がやってきたのが先月
でも、甘ーいかき氷を持ってきたわけではなくて
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 先月は「氷を溶かしに来た」と言って、中国の温家宝首相が来日しました。ビッグイシューのコラムでは『氷屋来る』というお芝居に例えていらっしゃいますが、そのココロは「現実から逃避したい人が脱却しようともがく物語……」。安倍首相も就任するなり中国に行ったりして、それなりに仲良くやろうという気持ちはあるようにも見えます。やっぱり現実から逃避したい人、ですか?

 ええ、氷を溶かして仲良くやろうと思うなら、なぜ憲法改正とか、教育基本法改正とか、従軍慰安婦問題はなかった、とか言えるんでしょう。そこはもう、分裂症じゃないですか。これでは誠意がないと思われてもしかたがないですね。

 私なんかは、いわゆる戦後の民主主義教育というものを受けて育って「アジアの国々に対してはひどい事をしてしまった。もう一切戦争はしません」という考え方をスタンダードとして教わってきました。だから当然のように、従軍慰安婦問題なども認めて謝罪をすれば良いのにと思ってしまうのですが。

 ええ。ドイツはどうして受け入れられているかというと、謝り続けているからです。今までにもう充分謝ったからではありません。これでもかというほど、未来永劫謝り続けるという姿勢でいるわけです。何十回でも、何億回でも謝る。そういうスタンスに徹していますから。安倍首相の言動を見る限りでは、非常に傲慢というか、まともでないと言われてもしかたがないと思いますね。

 政冷経熱などと言われていますが、これは確かに実感できます。日本が脱デフレできたのも中国経済の盛り上がりのおかげ、ですよね。第一、私が今着ている服も何割かは中国製です。

 ええ、もう日本と中国はひとつの経済だと言ってもいい。まさに一蓮托生! 日本は何でも作ってもらってますからね。ただこうして経済的な融合度が高まれば高まるほど、親しき仲にも礼儀あり、という側面への気配りが必要になると思います。万事を熱い経済関係頼みで解決してしまおうという発想は危険だと思います。距離が近くなればなるほど気配りし続けることが大切。

 いちばんの気配りポイントは、やはり歴史問題ですね。戦後民主主義教育ジェネレーションのひとりとして、現実逃避せず「氷を溶かす」方法をちゃんと考えようと思います。
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浜 矩子さん プロフィール
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
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illustration / Nakagawa Isami
design / Shimizu Mamiko (Mame Design)

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