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Cafeglobe(以下C) 毎日暑いところに暑苦しい話題で恐縮ですが、先月、村上ファンドの村上前代表が、ニッポン放送株のインサイダー取引事件で証券取引法違反の罪に問われ、懲役2年の実刑判決を受けました。
C ええと、私がちょっと変だな、と思ったのが、東京高裁は、スティール・パートナーズを指して「成功報酬の動機付けに支えられ、それを最優先」「ひたすら自らの利益を追求」と表現し、「短中期的に株式転売を目指す濫用的買収者」であると認定しています。でも、「自らの利益を追求」するのは、企業であれば当然のことなのではないでしょうか。利益を追求しちゃダメ、って言われたら商売にならないのでは。
H そうですね。東京高裁の言い方はどうもちょっと余計なお世話に聞こえますよね。最高裁の段階では、“濫用的”という言葉ははずされましたから、やはり、ちょっと余計に踏み込み過ぎた、という判断が働いたのではないでしょうか。司法判断らしい中立性を保とうとする姿勢が出ていたように思います。ただ、東京高裁的感覚がそれなりに日本のコンセンサスである側面はあるのかもしれませんね。 Cはい。これはどういうことなんでしょうか。日本はやはり閉鎖的、ということになるんでしょうか。 H なかなか難しい問題ではありますね。投資ファンドというものは、ファンドとしての利益を追求していくのが仕事です。それが商売ですから、それがけしからんと言われては立つ瀬がない面がある。商売が成り立たないということになります。そういう商売の仕方そのものを「濫用的」といってしまえばそれまででしょうが、それはやはりちょっと乱暴でしょう。食うか食われるかの市場経済ジャングルには色んな生き物が存在する。おとなしい生き物たち、礼儀正しい生き物たちしか存在することを許されない、という理屈は通用しない。この点はやはりある程度まで覚悟しておかなければいけないだろうと思います。食われないような自助努力もやはり必要です。 C 食うか食われるか、というとなんだか穏やかじゃないイメージですが。 H いえ、そう大げさに考える話でもないと思いますよ。例えて言うなら、弱いもの同士、仲良しこよしで草野球をやって、そこで無敵を誇っていても本当の実力は判らない。で、ある日メジャーリーグでプレーする日がやってきて、その時に「ルールを変えてください、ハンディキャップを下さい」と言ってもそれは通用しない。そういう話だと思うんですよね。 C ふと思ったのですが、買収などというのは案外フツウというか、それほど興奮するほどの話でもないんですね。では、ブルドックソースの件が注目を集めたのはどうしてですか? みんな、あのソースのロゴマークに見覚えがあって愛着があったから……なんてことはないですよね。 H ブルドックソースはむしろ関東ローカルな面があるようですよ。知名度の問題よりも、むしろあまり派手さや今日性がなくて、実直・ひたむきにやってきた典型的な日本の中堅中小企業に対して、スティール・パートナーズといういかにも今風・ハゲタカ風な投資ファンドが襲い掛かった。この対照の妙に非常にドラマ性があって世間の注目を浴びたということではないでしょうか。小説のような本当の話というか。 C 以前、三角合併やハゲタカファンドの話題のときに出た、例のNHKのドラマ『ハゲタカ』みたいですね。
H また、このケースではブルドックソースは、いわば手切れ金でけりをつけようとして、21億1400万円も支払うわけですよね。現金を払うから、TOBはやめてね。と。このために借金までするということですから、これが企業価値を毀損していないと言えるのかどうか。このような形で企業の将来に不安を残すようなことをやるのが本当にいいのか、株主に対する誠意ある対応だといえるのか、という問題も出てきます。なかなか面白い、判断の難しい事例です。ビジネススクールのケーススタディの材料になりそうですね。ブルドックソースがもっとグローバル化した大企業だったらどういう対応をするだろう、とか。今後出てくる事例を考える上で色んな問題を提起していると思います。
C なるほど。ある種わかりやすい例、ということですか。 H いずれにせよ、気をつけておかなくてはいけないのは、「こういうことでビビってるから日本の企業はダメなんだ」とか、「こんなことでビクビクしているから日本に永遠に文明開化はない」と決めつけたり、投資ファンドはあらゆる場合に諸悪の根源だと断言したり、というような具合に、十把一絡げにしてこの種の問題を議論をしてはいけない、ということだと思います。 C 個別のケースをそれぞれ判定できる鑑定眼を持たなくてはいけないということですね。 H そうです。一般市民も経営者も、ビジネススクールの先生たちも学生も、もちろんメディアも。ある意見に対して、例えばメディアや財界が揃って同じような反応を示すなどという今の傾向は非常に危険だと思います。 C 違法行為は違法行為、正当な利益追求は正当な利益追求で、きちんとケースバイケースで見分けられなくてはいけない。 H ええ。これらのケースはそういうようなことをわれわれに問いかけているようにも思えます。裁判所の判断が行き過ぎていると感じるのなら、一体どこがどう行き過ぎているのか。ひとつひとつ、きめ細かに物事を見る眼を形成することが求められている、ということです。 C 木を見て森を見ずになってもいけないし、森ばっかり見て木の種類が全然わかっていないのもダメですね……。鑑定眼トレーニング、頑張ります。正確に、きめ細かく、ですね。簡単にひとつの方向に流されないように注意します。 |
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