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世界恐慌は昔の話なんかじゃなく
今目の前にある現実なんです
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Cafeglobe(以下C)
以前ここでも話題に上がった、イギリスのノーザン・ロックという金融機関。サブプライムローン問題のおかげで巨大な損失を出して潰れかかったのが、国の資金注入を受けてなんとか持ち直した……という話だったと思うのですが、ここにきて、ついに国有化の方向に動きだしましたね。ちょっと前には、自らが手持ちの住宅ローン債権を担保に証券を発行するなんていう話も出ていて、浜さんも「早く国有化すべき」とおっしゃってたので「ほら、やっぱりね!」って言いたくなりました。
浜さん(以下H) そうでしたね。国有化となればこの話はもう反故なのでしょうが、住宅ローン債権を証券化して売りに出し、それで得た資金を国(イングランド銀行)への借金返済に充てる、というシナリオだったみたいですよ。このシナリオを描いたのは、どうもゴールドマンサックスらしいんですよ。ゴールドマンサックスというのは大手金融機関のなかで、唯一サブプライムローン問題で大きな損失を出していない。だからイギリス政府も彼らが言う事を信じた、ということなのでしょう。元はといえば証券化商品がらみで窮地に陥った銀行が、今度はみずから証券化手法で資金調達するというのですから、大胆というか、図々しいというか……。
C いかにもやり手の投資銀行が描きそうなシナリオでしたね。でも、結局は国有化ということになった。英国政府は随分国有化を嫌がっていたようなんですが、やっぱりほかに手はない、ということなんでしょうか。
H そうですね。なんとかして国有化は避けたかったのでしょうが、むしろ、落ち着くべきところに落ち着いたという感じだと思いますよ。労働党は、90年代から「ニュー・レイバー」という言葉をキャッチフレーズにやってきてますからね。国有化して、ほらやっぱり「オールド・レイバー」(旧ソ連系というイメージの強い古い体質の労働党)じゃないか、と言われるのが嫌なんでしょう。トニー・ブレアのときはニュー・レイバーでやってきたのに、ブラウンになった途端に元に戻っちゃったとは絶対に思われたくない。だから国有化ということには絶対にしたくなかった。
C 国有化して、国が損を被る、大損するのも怖かったんでしょうか?
H もちろん、それはあるでしょう。経営上の失敗で窮地に陥った銀行を税金を使って救済し、その結果として財政赤字が増えた、などという形になるのは、いかにもイメージが悪いですからね。もっとも、ここは誰のため、何のための国有化なのか、ということをしっかり認識する必要がある場面ですね。単にひとつの金融機関を救済するということではなく、全体の経済活動や、金融システムそのものを守るためには、問題の金融機関を国有化することが正当化される場合があると思います。なぜなら、そのような金融機関を国有化するのは、要するに病んだ金融機関を市場から隔離するためだからです。その金融機関だけを救済するのではなくて、金融システム全体をその金融機関がもたらず病弊から救済するということですね。金融システム全体から、がん細胞を切り離すイメージだと言ってもいいでしょう。国有化して全体の経済活動から一度切り離した上でなら、本当にがんなのか、一見がん風のポリープなのかじっくり眺めて見極める余裕も出て来ますしね。その意味では、何が何でも国有化を避けさえすればいい、という話でもないわけです。
C なるほど。では今回の国有化でイギリスの金融システムはがん細胞のような存在を抱えたままやっていくことを免れたわけですね。
H ええ。下手をすれば、破綻の連鎖なんていうとっても恐い事態も無きにしもあらずだったでしょう。少なくとも、そういう最悪の事態も想定した上で危機管理体制を整えておくべき局面だったと思います。
C 金融が不安定になる、と聞くとどうも心配になるのですが、20世紀前半までに見られた「世界恐慌」のようなパニック状態って現代でも起こりうるんでしょうか。政府や中央銀行の政策によって回避できるものなんでしょうか?
H といいますか、今すでに事実上の恐慌状態だと考えた方がいいのじゃないかと思います。そもそも、グローバル時代は連鎖と融合の時代で、金融危機も瞬時にして世界中に広がってしまう。その意味で、20世紀あるいは19世紀より今のほうが恐いですね。世界同時多発恐慌の時代になった、という感じで。そう考えれば、恐慌も世の中がグローバル化していなかった時代の方が衝撃の度合いはむしろ小さかったといえるでしょう。早い話が、もしアメリカが鎖国状態にあれば住宅ローン債権が証券化を通じて世界中で損失の連鎖を生む、なんてことはなかったわけです。むろん、ノーザン・ロックだって今のような状況に追い込まれることはなかったでしょう。金融の自由化とグローバル化が進む中では、たった1人のトレーダーの悪事が世界中を震撼させます。フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルの大損失にしても、たった1人のトレーダーの過ちが引き起こしたものです。禍いが伝播するスピードは昔よりも明らかに早く、その規模は大きいということです。今のこの危機的な状況を恐慌と呼ばずして何を恐慌と呼べばよいんでしょう。
C 勝手にセピア色イメージにしていましたが、恐慌って今ここにあるものなんですね。
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ロシアはどうしてアグレッシブ?
日本が上手におつきあいするには
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C
ロシアの政府系ファンドが、日本企業の株式への投資を始めるという記事を目にしました。ルーブルも2011年には相場変動制にする……って。ロシアなんてこの間まで全然違うイデオロギーの元でやってきたのに、動き早いよ!なんて思っちゃうんですが。やっぱり資本主義っていうのは、人間の欲望の行き着く先というか、どうしてもこういう風になってしまうということでしょうか?
H 資本主義だけが欲望の経済学だとは限りませんよ。一部の人間たちが生産手段を占有するという状況の中で、人間の欲望がどう経済を動かすか、そのメカニズムをマルクスが発見して理論化し、それを資本主義と呼んでいるわけです。その仕組みに対する怒りが社会主義理念の構築につながったわけですが、実際問題としては社会主義国家だからといって、そこに人間の欲望が暗躍する余地がないかといえば、そんなことは全くありませんよね。今のロシアのケースも、資本主義国家化したことによる大変身というよりは、むしろ「ご都合主義的独裁国家」化したことが欲望丸出し型の行動を生んでいるという感じではないでしょうかねぇ。莫大な資源の力をバックにしたヤクザ国家と言いますか。プーチンがそれを圧倒的にプロモートしている。
C
「ご都合主義独裁国家」ですか!? ただ、日本の企業に投資、というのはそんなに悪いことではないように思うんですが。日本の株を買ってくれるならそれはそれでありがたいというか。
H
そうですね。ロシアのお金を上手に使わせてもらって、日本の衰退産業や伝統産業を助けてもらうのは悪くないでしょう。ただし、そのためには、どこまで彼らとつきあうのか見極めるだけのこちら側の見識が問われますね。
C
そうですね。「ハゲタカに食われず、目指せ鷹匠」、でした。それにしても、今のロシアはどうしてこうアグレッシブな感じなんでしょうか?
H
危機感もあるでしょうね。というのは、旧ソ連に属していたグルジア、ウクライナ、ベラルーシ、ウズベキスタンなどといった国が、EUに入りたいとか言うようになってきていてる。そうやって勢力範囲が小さくなっていることへの危機意識がアグレッシブさにつながっている面があると思います。強気の陰に焦りあり、ですね。ロシアという国が「本丸(ロシア)だけ」の状態になっても、世界に対して影響力を持つにはどうすれば良いかということを考えているわけです。
C 「本丸だけ」になったときの影響力ですか。お隣の中国も国富ファンドを始めましたし、対中国を意識している部分もあるんでしょうか?
H ええ。中国が国富ファンドを作ってしまったということは、彼らにとっては大きな衝撃ですよね。焦りが一段と募る感じでしょう。
C
中国とロシアがこうだと日本なんてすぐに巻き込まれちゃいそうですが。
H 日本の株を買う事に関しては、ロシアは中国に対して先を制した。中国に対しても、また日本に対しても、駆け引きを仕掛けてきてるようなところがありますね。
C
ケンカを売ってるような、お色気攻撃のような……。日本の株を買うというのは、ドルの価値が落ちているから、ということもあるんでしょうか? 以前出てきたGCC(湾岸協力会議)のように、ドルを見限ろうとしている?
H というより、単純に外貨準備の多様化といいますか、ポートフォリオを分散させることを考えると、日本の株を買っておくのも悪くないといったところでしょう。むしろ日本の企業が持っている技術だとかノウハウは投資対象として必要なもので、それが今なら比較的お買い得と思われているということでしょう。
C おっと、あたふたしているうちにどんどん買われちゃいますね。でも、見向きもされないというわけじゃないから、まだマシということでしょうか?
H そうですねぇ。生き残りをかけて駆け引きをやれるだけの賢さが必要になってきているということですね。
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生まれながら誰もが持ってる
それはニュースを「面白がる」能力
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C
さきほど、自分が今恐慌のただなかにいる、というお話をうかがって、不覚にもきょとんとしてしまったのですが、インターネットでニュースを読んでいると、同時株安も、毒入りギョーザも、相撲部屋の暴力もまるで同じくらいの重要度であるかのように目に飛び込んできます。新聞だったらコレは一面、これが社会面で……と自分で「編集」しながら読み取る能力が問われているような気がするのですが。
H 確かにそうですね。しかし、ある意味ではニュースを読むにあたって必要な感受性は、人間が考える葦であるかぎり、生まれながら誰もが持っているものだと思いますけどね。ただ、「そんな感受性は持っていなくていいんだ、わからない事はわからないと笑ってすませればいい」というところに人々を追い込む煽りのようなものが、メディアの中にあると思うんです。そういう余計なものにとらわれず、生まれ落ちたときから持っている感受性を素直に発揮すれば自ずと正しく情報を取る事ができるのではないでしょうか。毎日新聞の川柳のコーナーだって、朝日新聞の俳句の投稿欄だって、見ると世相の面白いところをさらっと切り取っている人はたくさんいる。まさに彼らは自分のなかに編集者のセンスを持っているということですよね。
C
で、でも若い人でさらりと俳句、川柳、はそうそういないのでは……。
H いえいえ、若い人にはいないなんて思っちゃいけませんよ。あるいは、漫才だとかお笑いといった世界にそういう感受性を活かすチャンスがあるのではないかと思います。もっと面白がって、若い人が経済でも政治でも何でも叩いてくれればいいと思うんです。
C
なるほど! そうですね。自分と直接関係ないと思えるようなニュースも、素直な目で見て面白がるということですか?
H ええ。自分と一対一の関係が成立するニュースでなくては興味を持てないというのは、知的退化の現れです。社会のニュースの何もかもが自分の生活とすぐに直接関わっていなくては興味が持てないというクセをみんながやめればいいと思います。
C
エゴのレベルで留まっていては何の発展もないってことでしょうか。やっぱり、「痩せる」だの「モテる」だの、エゴに訴えかける記事やスキャンダラスなニュースって刺激が強いとは思いますが、それだけに反応しててはだめですね。うんうん、……というわけで、みなさーん、ケーザイもっと面白がりましょう!
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