 |
少なく思える「サブプライム損失100兆円」
この金額、本当に正しいの?
|

Cafeglobe(以下C)
今回はIMF(国際通貨基金)(※1)が、サブプライムローン問題がもたらした損失について警鐘を鳴らしてるという話です。先日、IMFがサブプライムローン問題関連の損失が約1兆ドル(およそ100兆円)に達すると公表しました。100兆円も!ってびっくりしたものの、しかし、ビッグイシューの浜さんの記事によると「日本の不良債権問題で出た損失が約70兆円」とのこと。そう聞くと「思ったほどたいしたことないのかな?」なんて思えて来ちゃいました。思ったより少なく見えるこの額なわけですが、そのわりにはどうしてこんなに危ない危ないって言うんでしょうか。
浜さん(以下H)
まず、この発表は「最低100兆円」という風に理解したほうがいいと思います。IMFのWebサイトにこの記者会見の動画がアップされていて、やはり記者たちも「こんな程度ではないでしょう」と言っています。こういった国際機関が出した数字の読み方の鉄則としては「最低、このくらいは、覚悟しておくべき数字」として理解すべきなんですよね。前回、アメリカの中央銀行が景気後退を告げる告げないの分岐点がある、という話がでましたが、この件も「最低このくらいは覚悟してね」というのが彼らのメッセージだと思うんですよね。数字の小ささの割には彼らが発している警告は大きい。そこから、言いたくても大げさには言えない彼らの状況が読み取れると思うんです。
C
思い切って本当のことを言ってしまってはいけないんですか? 実は損失はさらに10倍!とか。
H おっしゃる通り、最悪の事態でどうなるのか、ということをはっきり言ってしまったほうがいいと私は思います。でも公的機関がこんな数字を出してしまっては世間をお騒がせしてしまうという心理が働いてしまうということも解らないことはありません。所詮、決定的な根拠はないわけですからね、彼らも悩ましいところでしょう。こういう発表はそういう公的機関たちのフニャフニャしているところを前提に見た方がいい。
C 数字の後ろにも色んな思惑があるんですね。このIMFの理事のドミニク・ストロス・カーン(※2)という人が発言したことの重みも大きいとビッグイシューの記事のなかでおっしゃっていますが?
H 少なくとも私はそう思います。彼は、フランス人としては珍しく市場原理主義者なんですよ。市場原理主義に対してアンチなフランスにあって、財務大臣時代に全てを市場の成り行きに任せる自由放任主義者としてならしていたんですよね。こんな人が、市場に介入しなくてはダメだと言ってるなんて、これはよっぽどの事態なんだろうな、我々が知らないヤバいことをよっぽどたくさん知ってるんだろうな、と思ってしまう感じがありますよ。それほど深刻なんだろう、と。
 |
おフラーンスな考え方では
市場原理主義は野蛮!なんだって
|
C
なるほど。ちなみにフランスって、国自体がアンチ市場原理主義なんですか?
H それはもう、アンチ市場原理主義の塊すなわちフランスというくらいで。アングロサクソン資本主義というものを、野蛮なものとして軽蔑してきたようなところがあるんですよね。文明というのは人間に固有のもので、文明をジャングルのような混沌から守るのが人間が行うべきことであると。フランス的エスプリとか文化っていうのは、「ナマ」のものを嫌うんですよね。もう、ジャングル剥き出しのアメリカなんて嫌!ってところでしょう。
C 植木も刈り込んでお庭も左右対称にして……みたいな? ワイルドな市場の激流に身をまかせるなんてあり得ないってところでしょうか?
H ええ、お香でもたいて聞きましょうかというお公家的な世界とでもいいましょうか。フランス人はそういうものから身を守ることこそが、政治であり政策であると考えてきたようですね。人間は猿じゃないんだから、というような。
C では、逆に市場原理主義ってどういう考え方なんですか? 私はあんまりわかってないんですが「神の見えざる手」というようなものが働いて、経済というのは放っておけば均衡がとれていくものだ、ということでしょうか?
H ざっくり言えばそうなんですけど。まあ、フランス流の見方で見れば市場原理主義はジャングルそのものなんですね。アダム・スミスは「神の……」と言ったわけではなく、正確には「市場の見えざる手」と言ったんですが、そこにある前提というのは、要するに「人間が合理的に行動する存在であることを前提にすれば、人間たちによって構成される市場にまかせておけば、おのずと合理的な回答に達する」という考え方なんです。「見えざる手」論が正しいのか、そうじゃないほうが正しいのかというという問題はさておき、面白いのは、フランス流も見えざる手流も、どちらも「人間は合理的に行動する」ということを前提にしている。前提は同じなのに、正反対の結論に至っているんですよね。
 |
じゃ、じゃ、市場原理主義を
社会主義経済でやるのは無理なの?
|

C
この介入したほうがいいとか、いや放任がいいんだ、とかいう話がどうも気になります。例えば、中国経済に関する記事を読んでいると「中国は今のやりかたではいずれ破綻するのでは?」というようなものも目にします。中国って政府が経済をコントロールしつつも資本主義体制を取り入れるようなやりかたをとっていますが、これってどういったところに無理があるんでしょう? 人民元の切り上げの話(※3)のときにもうかがったかとは思いますが……。
H 全ての資本主義社会には、ある意味では、常に一定の政策的介入はあるわけです。市場の原理では解決できない問題を解決するために政策というものがあり(※4)、グローバル経済のなかで、レスキュー隊として存在するのが政策であると。だから、そういう意味では資本主義経済が公的介入そのものを否定してるわけではありません。ですから、社会主義国家であるということで中国がいわゆる資本主義国と正反対の体制の下にあるとは言えないでしょう。そもそも、今の中国が経済運営という意味でどこまで社会主義国だといえるか、という問題もありますね。ですが、まぁそれはさておき、中国について「今のやり方ではいけない」という風にいうとすれば、その場合に問題とすべき点は最終的に政治が経済の動きに対して強権を発動することで何とかなると思っているフシがあるというところでしょうね。一党独裁型の政治というのは、行き詰まると統制経済的なかたちで決着をつけようとする。政治にとって都合が悪くなると、政府の判断で経済の力学を曲げようとするんですよね。政策はあくまでレスキュー隊であって、必要になったときに出ていけばいい。グローバル経済の一員になるなら、レスキュー隊がしゃしゃり出て経済を都合良く操作しているようではいけない、ということです。
C どう考えても中国はすでにグローバル経済の一員ですから、もう後にはひけませんよね。ではやり方を変えなくてはいけない?
H そこをどれだけ中国がわかっているのか、というところが問題ですよね。チベットの問題を見てもそうですね。これは経済のテーマではありませんが、何か問題が出た時にそれを無視するとか、強権的に抑えつけることで決着がつくと考えているようなところに成熟度の低さがみえてしまう。 情報についても、やっぱり市場原理は働きますからね。
 |
「後期高齢者」ってどーなの?
道路特定財源、注目されて良かった
|
C
転じて日本国内の話題です。道路特定財源の問題、“ねじれ国会”になってようやくスポットライトがあたってよかったじゃん、という感じです。
H
道路特定財源の問題は前から言われていたことではありますが、野党が参院で多数を持ったからこそ、これだけ論議の対象になったわけです。それこそ中国じゃないですが、一党独裁状態では議論は起こらないですよね。暫定税率をやめるという部分にポイントがあるのか、特定財源をやめるというところが重要なのか、争点もはっきりしてきました。
C
道路特定財源やめるならそれはよかった、と私は思うんですが、福田首相は道路特定財源やめる、って言い切って、でも人気は下がるばかりですね。自民党は山口の補選でも負けてしまいましたが、やっぱり不人気の理由はお年寄りの年金から保険料を天引きする「後期高齢者医療制度」でしょうか。「後期高齢者」ってすんごいヒドいネーミングで度肝を抜かれました。
H 「後期高齢者」って英語でなんて言うんだろうってちょっと考えてしまいました。オールドオールダー? オールダーオールド? 何て呼びましょうか、言いようがないですね。
C
このネーミングにまずあんぐりで。このあたりのセンスのなさに、コンセプトそのもののマズさがあらわれている気がしますが?
H そのうち「末期高齢者」とか言い出すんでしょうかね。「末期高齢者」ってターミナリーオールドかな?……に定義づけられたら全ての財産没収されるなんてことになっちゃうんじゃないか、とか。そんなことまで想像させる……
C
……ほどのセンスのなさですよね。後期高齢者医療制度の問題はではまた次回にこの続きを。
|