Cafeglobe(以下C)
金融危機と言われていますが、どうしてこのような事態になってしまったのでしょうか?
浜さん(以下H)
最大の問題は、金融を実体経済から遊離させて、ひとり歩きさせてしまったことですね。金融のひとり歩きは、人間の欲を燃料にしていつしかひとり暴走になり、誰にも止められなくなってしまった。カネがカネを産み、融資が融資を生んで複雑な信用の連鎖がどんどん広がって行きました。そうやって、次第にどこが起爆装置なのか判らない巨大な時限爆弾が出来上がってしまった。その爆弾についにスィッチが入ってしまったということです。
C
爆発の火種は、サブプライムローン問題だったということでしょうか?
H 正確にいえば、「サブプライムローン問題」ではなくて、サブプライムローン証券化商品問題ですね。むしろ、「サブプライムローン」という言葉をはずして、「債権の証券化問題」といった方がいいでしょう。ありとあらゆる種類の債権(=請求書)を証券化して売り飛ばす。このやり方が世界中にリスクをばら撒いたということです。
証券化とはちょっと話が別ですが、今回の危機の中で大きくクローズアップされたものに「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」という金融商品がありましたね。保険会社のAIGが危機に陥って公的救済を受けるに至った大きな原因がこのCDSでした。CDSというのは、要するに貸し倒れ保険です。企業が倒産して、その企業が発行した債券が債務不履行状態に陥った場合に備えて、その債券を買った投資家がかける保険です。ハイリスク・ハイリターンのハイリスクの部分について保険をかけておけば安心してハイリターンを追求出来ますよね。ですから、証券化商品を始めとして複雑怪奇な金融商品がたくさん出回れば出回るほど、CDSにも人気が集まるようになりました。AIGなどはここに目をつけたわけです。誰もが入りたい保険を幅広く提供することで大もうけをしようと考えた。例えば火災保険だったら、火事が起きなければ保険会社は儲かりますからね。ですが、逆に火事がどんどん起きたら保険会社は保険金の支払負担が大変です。これと同じで、金融が危機的状況になって「AIGはCDSをいっぱい発行しているから、保険金を沢山支払わなくてはいけないだろう。AIGの経営はヤバいに違いない」と誰もが思った。当然AIGの格付けがガクンと落ちてしまいました。格付けが下がったらもう誰もカネを貸してくれなくなった。それで、AIGの活動は急停止、ショック死のような状態になってしまったわけです。
C 米政府はやっきになって、金融機関を救済しているようです。AIGのように救済するところもあれば、リーマン・ブラザーズみたいに見放しちゃうところもあるみたいです。この基準は誰がどうやって決めてるんですか?
H 実はそれが誰にもわからない。だからみんな怒るし、不安にもなる。「大きすぎるところは潰せない」と説明しているんですが、本当にそうなのかどうかはわからないんですよね。リーマン・ブラザーズを見放したので、アメリカは勇気ある決断をしたな、こういう方式で再建を目指すんだな、と思ったら、次の瞬間AIGを救済……。要は場当たりだということですね。問題はリーマンで打ち止めで、リーマンだけなら潰れても何とかなるだろう、というような受け止め方をしていたんじゃないでしょうか。ところが、リーマンの債務に関するCDSがたくさん出ていて、それがAIGの経営を危機にさらす……というような展開になって慌てて救済作戦に転じたというところでしょう。ちなみにいえば、リーマンそのもののCDSビジネスをやっていたということですから、これはそれこそもう「複雑過ぎて判らない」、「込み入り過ぎて救えない」という感じですね。
C
私がアメリカ人だったら、自分が払ってる税金を破綻した金融機関にバンバンあげられたらたまったもんじゃないと思うんです。アメリカの財政は大丈夫なんですか?
H 当然、アメリカの財政はまずいことになっていくでしょう。こうなってくると、アメリカという国そのものに、全世界が公的資金を注入しなきゃいけなくなるかもしれませんね。
C ……ということは日本からもお金を出すってことですか?
H 巡り巡ってそういうことになるかもしれませんね。日本がアメリカを国有化しちゃうとか??
C この間のG7会議の合意はどう受け止めるべきなんでしょうか。あの直後で世界中でものすごく株が上がったと思ったら、その後また急落してその後も一進一退。どういうことなんでしょう。
H 問題はこれからですね。とりあえず各国が銀行に資本を注入し、銀行間の融資には信用保証を与える。そして預金は全額保証する。この三拍子で足並みが揃った、というのが今回のG7の成果でした。藁をもつかむ心境になっていた世界中の投資家にしてみれば、これで何とかなるかも、ということで株の安堵買いが出たのは、まぁ、当然の反応だったでしょう。ですが、フラフラになった金融機関に手当たり次第、生命維持装置をつけてしまって大丈夫か?というのが次の問題ですね。生命維持装置をはずした時にどうなるのか。何時になったらはずせるのか。ずっとつけているうちに生命維持装置の方がイカレてしまうことはないのか?という問題です。政府が銀行の株主になったり、融資の保証人になったり、預金の全額保証を請合ったり……これで国々の体力は果たしてどこまで持つのだろうか。ふと考え出せば、眠れなくなる問題ですよ。
C ヨーロッパでは、みんなで銀行への資本注入や不良債権買い取りのための共同基金を設立しようかという動きが出た場面もあったようですね。みんなで支えりゃ恐くないってことでしょうか?
H みんなで支えりゃみなコケる、ということもありえますね。そんな一蓮托生はみんなイヤですから、結局、共同基金案は消えましたが、いずれにせよ、金融がグローバル化した中にあって危機が来た時、どこまで連携してどこから先は我が道を行くかという判断は実に難しいですね。そのことを各国の首脳たちはつくづく実感しているだろうと思います。