カフェグローブ[055] 有森裕子/ランナー、NPO代表、国連人口基金親善大使 ひとりの人間としてやれることをやりたい、それがモチベーション - インタビュー

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更新日:2004年8月11日
Views for thought  今、注目のひと 今、旬な人にインタビュー。その人の生き方や考え方から
なにかを感じとってもらえれば……。
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ひとりの人間としてやれることをやりたい、それがモチベーション
  有森裕子  Arimori Yuko /ランナー、NPO代表、国連人口基金親善大使
 
   
有森裕子さん 1966年岡山生まれ。日本体育大学へ進むが、陸上長距離選手としての道をあきらめきれず、1989年リクルート入社、小出監督と出会う。1年後、1990年の大阪国際マラソン(6位)で、初マラソン日本最高記録。1991年大阪国際女子マラソン(2位)で日本最高記録。1992年バルセロナ・オリンピックで銀、1996年アトランタ・オリンピックで銅メダル。同年日本人ランナーとして初のプロ宣言をし、米国へ移住。マラソンランナーとしてはリクルートAC所属。NPO「ハート・オブ・ゴールド」を設立。2002年には、国連人口基金の親善大使に。
   
「自分にできることが、そこにあったから」
 
 「初めて自分で自分をほめたいと思います」。あのアトランタから8年。この間に、有森さんはスポーツNPO「ハート・オブ・ゴールド」を設立、カンボジアや東ティモールなど紛争後の地域での支援を行ってきた。また、スポーツマネジメント会社を共同で設立。2年前からは国連人口基金親善大使(※1)としても活動している。
 
  たとえばカンボジアでは毎年「アンコールワット国際ハーフマラソン」を開催し、この機会を利用して同国でも多くの人を苦しめているHIV予防知識の啓蒙に励む。国連人口基金親善大使としても、主にHIV問題に関する仕事をこなしている。有森さんはなぜ、このテーマを選んだのだろうか。
 
 
 「自分にこそできることがそこにあったから、でしょうか。自然な流れでした。1996年に招待されてカンボジアを訪れた当初は、このような活動をするとは思ってもいませんでした。でも、行ってみたら、自分にできることがとてもたくさんあるように見えた」
 
※1 国連人口基金(UNFPA)
人口問題分野における中心的役割を果たす国連機関。各国政府の自発的拠出金で運営されている。毎年『人口白書』を発表し、主として発展途上国における人口問題に対する啓発と援助を行っている。
●国連人口基金(東京事務所)のサイトはこちら
 
スポーツは、社会の問題を解決するいいツールになる
 
 「スポーツが、カンボジアが抱えている問題を解決する、とてもいいきっかけになることを感じたんです。日本だったら、HIVというトピックでイベントを開催しても人が集まりますが、カンボジアでは集まらない。みんな生活が苦しくって、そんな辛い話聞きたくない。楽しいイベントじゃないと集まらないんです」
 
  そこで「スポーツ」がパーフェクトにハマる、という。
 
 
 「ところがスポーツのイベントだったら、ものすごい数の人が集まるんです! もちろんスポーツ以外のエンターテイメントでもいいのですが、スポーツは年齢も性別も問いませんし、健康の話と相性がいいんですね。“なぜ自分は早く走れないんだろう? せっかくだからこの機会に検査してみようかな”という風に、“体のことをもっと真剣に考えてみよう”というメッセージを自然に伝えることができる。HIVなどのシリアスな情報でも、楽しいことで心を開いた後だと、不思議に伝わるんです」
 
  オリンピック・メダリストである自分がこういったイベントに参加したり主催したりすることで、この「効果」をいっそう盛り上げることができる。その手ごたえを感じ、このテーマに取り組んでいくことを決めたという。
 
 
  スポーツは人生を充実させる文化、もっと大切にしたい
 
  日本について気になるのは、「スポーツが文化にまで高まっていないこと」と、有森さんは言う。
 
  「日本ではスポーツって、どこか特別なものになっていると思うんです。スポーツ=お祭りという位置づけ。オリンピックやワールドカップで騒ぐわりには、普段からのサッカーファンが多いというわけではなかったり。スポーツって、もっと日常生活の中にあるべき、いい人生を送るために大切なものなんですよ」
 
 
  オリンピックなどで、さまざまな国の選手との出会いがあった。そこで、国ごとに事情は違えど、スポーツが生活の一部になっている様子を知って驚いたという。
 
  「日本のアスリートは、もっとスポーツの大切さを伝えるべき。何もしないのは怠慢。でもそれには、スポーツ選手が特別扱いされすぎていることも問題ですね。優秀な選手だと、中学生のときからマネージャーがついていたから電車の切符を買ったことがない、という人さえいるんです」
 
 
  学生のうちは芽が出ず、一度はランナーとしての道を諦めさえした有森さんだからこそ、スポーツ界を俯瞰することができている。
 
  ひとりの社会人としてできること
 
  「スポーツ選手だってひとりの社会人なわけで、特別ではない。私は自分を表現する手段がたまたまマラソンだった。人によっては絵を描いて表現する人もいるだろうし、モノを売る、何かを教えるという人もいる。それと同じです。走ることをやってきた有森裕子という人間が、今までやってきたことを最大限に生かして、ひとりの社会人として、やれることを精一杯やっていきたい、それが私のモチベーションなんです」
 
  とても気さくで、質問に非常にオープンに答えてくれる方だった。なぜそう考えているのか、その根拠など面白い事実や意見をポンポンと出してくれる。有森さんの、社会にリアルにリンクしているエネルギーや人間的な思いやりの力を前にして、果たして自分はできること、精一杯やってるかな? と反省してしまう。そんな、刺激あふれるインタビューだった。
 
   
 
有森裕子と読む 人口問題ガイドブック
◆ 有森さんの近著
『有森裕子と読む 人口問題ガイドブック』国際開発ジャーナル社刊 \1,260(税込)

人口問題というと、世界の人口爆発を抑制する問題と安易に考えてしまいがち。けれど、その根っこは、避妊や健康などの知識を広めるための教育や、子どもをいつ何人産むかなどを女性自身が決めてコントロールできるようにするための女性の自立促進など、日本の私たちにも関係するトピックにつながっている。イラストも可愛らしく、非常に読みやすいガイドブックになっている。
amazon.co.jpはこちらから
楽天ブックスはこちらから

◆有森さんが代表を務めるNPO「Hearts of Gold」のサイトはこちら




text / Isokawa Aiko
photos / Cafeglobe
有森裕子さん
有森さんは最近本を出版した。「人口問題って言われても興味湧かないですよね、私も興味ありませんでしたよ」と笑う有森さんが、池上清子さん(国連人口基金東京事務所・所長)にさまざまな質問をぶつけながら、「人口問題」について率直に語りあう。人口問題って、つまり私が子どもを何人産むかってことだったんだ、と今さらながら気づいたり、そこから女性の自立についての問題、各国のカップル事情まで話は展開していく。
 
 
 
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