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更新日:2001年1月30日 RSS


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松田美智子 Matsuda Michiko 

「料理上手はいい女」なんて信じちゃダメ!


松田美智子さん  
松田美智子さん/料理研究家
1955年生まれ。女子美術大学卒業。ホルトハウス房子に師事し、各国の家庭料理を学ぶ一方で、日本料理、中華料理を究める。健康と美を考えた家庭料理が基本。国内での料理教室のほか、国外でヘルシーな和食熱が高まるなか、海外でも教室を開講。また、テーブルコーディネーターとしても活躍中。著書に『人気料理教室 松田美智子のおいしいBEST 10 』ほか多数。

「お嬢様」から「働く女性」に
転機は27歳で訪れた

   びっくりするくらいシンプルなのに、素材の持ち味を最大限に生かした絶品お料理を教えてくれる松田美智子さん。 料理だけでなく「暮らし」を楽しむすべてのことに興味があるという松田さんの仕事場は、手作りのビーズ小物や絵画が飾られ、季節に合わせてインテリアが変わる。鎌倉で生まれ育ち、結婚相手は親から決められた相手だった、という掛け値なしのお嬢様。しかし、潔いレシピは松田さんご自身の性格の反映だろうか? 好き嫌いがはっきりしている、と当の本人が語るように。

 「小さなころから家の中のこまごましたことが好きでした。ただ、母の趣味とは違ってて、アメリカのテレビのホームドラマで見たお料理に憧れたの。毒々しいくらいな色のゼリー……日本で食べるゼリーとはまったく違うもの、向こうの発音で言う“ジェロ”ね。銀座のイエナ洋書店で買ってもらったアメリカの料理雑誌のレシピを一生懸命訳して作ってみたり。

高校生のころからは近所のホルトハウス先生のお料理教室に通いました。先生のお料理の世界には、当時ではなかなか触れられないアメリカの文化があったから。ただ、そのときはお料理の世界に進もうなんて考えてなかったわよ。女性が仕事するって、私の親族では珍しいことだったし」。

 料理はあくまでも趣味。クリエイティブ指向をもつ松田さんは美術大学に進学。卒業と同時に、親が決めた相手と素直に結婚した。転機が訪れたのは27歳のとき。それまでの結婚生活を解消することになったのだ。でも実家に戻って母親の作り上げた世界だけに収まるのはイヤ。自分の好きな世界を追求し、完成させたかった。

アイディアが仕事に!
パーティ料理が大人気に

「とりあえず働いてみよう、と思ったの。親族の女性で唯一働いている叔母に相談したら、友人の立ち上げた小さな会社を紹介してくれて。タイプなんか私全然打てないのに、できるって叔母が大胆にも先方に知らせちゃって(笑)。でも、とりあえずタイプ打ってる姿はかっこいいか、と思って形だけ勉強したの。会社にいる間は打つマネだけやって、夜、タイプ屋に出して朝受け取る、みたいなね(笑)。

そんな生活をしてるときに叔父のいるニューヨークへ遊びに行ったら、当時パーティのケータリングがブームで、へーえ、創造的ですごくおもしろそう! って興味が湧いたの。帰国後折よく、個展を開く友人にパーティの準備を頼まれて。そのころの日本はパーティといったらまだ乾きもののおつまみに紙コップで飲みもの、ってのがセオリー。そんななか、私は絵画に合ったテーマで食べ物やテーブルの飾り付けを考えた楽しいものを企画した。

そしたら、あなたと同じような仕事してる人がいるわよ、とひとりの女性を紹介された。性格はまったく違うんだけど、感性はぴったり合ったのよね。彼女とふたりでパロルというパーティ料理のコーディネイトをする会社を設立。当時創刊したばかりの雑誌『クロワッサン』で紹介されたとたん仕事の依頼がひっきりなし。でも親は、「人の家に行って料理作る? そんな下働きみたいなことやるなんて」って大反対。援助も切られて住むところも車も取り上げられ、パロルの相方の住まいに転がり込んで、台所に布団敷いて寝る生活に。このころが一番の苦労時代かしら(笑)? でもとても楽しかった。ふたりで、あのパーティではこんな器に盛りたいね、とか夜遅くまで話したりして」。
 
 折りしもバブル全盛期、イッセイミヤケはじめ、有名デザイナーのショーのパーティはことごとく手がけた。海外に出向いてやることまであったが、バブル崩壊後は、思ったとおりの空間づくりができない不自由さに嫌気がさし、日本での仕事を整理。パーティプロデューサーとしてニューヨーク進出を考えていたときにちょうど結婚、仕事からいっさい手を引いた。だが結局は家庭との両立を心がけながら、再びお料理の世界に。

「メディアに踊らされず
自分の趣味を貫いて!」


 「今度は雑誌の仕事を
やることになり、私のレシピを人様に紹介してお金をいただくからには、私しか伝えられないような何かを持つべき、と思ったの。で、行き着いたのが“理にかなったもの”。調味料を入れる順番とか、料理の手順にはすべて理由があるの。反対に、昔から常識のように言われていることでも、自分で作ってみて、そうだと納得できなければ採用しない。たとえば、ゴボウは必ず皮をこそいで、とある。でも私は自分の経験で、ゴボウはアクがあってもおいしいし、皮付きのほうが香りが楽しめるって思うから私のレシピでは皮付きのまま使うことにしてる。

同じことは生活全部に言えると思うの。皆、“自分の趣味”をもっと貫くべきじゃない? さして料理がうまいわけでもない私がこの道に進んだのはただ“人と違うことがやりたかった”から。人と違うことがカッコイイ、と思って生きてきたの。

料理好きは聡明な女だとか、さも、料理上手がいい女の条件みたいに雑誌なんかでも散々煽っているけど、そんなこと信じちゃダメ。おもてなし、っていうのは手料理を作ることじゃないの。下手な手料理作られてもおいしくなければ楽しくない(笑)。お料理が苦手だったら、よいお皿を1枚買って、お店で買ったおいしい料理をのっければいいの。音楽好きな人だったら、その人のセンスで編集した音を部屋に流せば、それで立派なおもてなし。すべて自分で決めなさい。いろんなメディアにあまり踊らされちゃダメよ(笑)」。

  松田さんはいつも美しい姿勢で料理をする。背筋がピンと気持ちよく伸びている。そしてそれは彼女の生き方にまさしく通じていると思う。常に自分で考え実践し、自分を、そして自分の世界を築き上げてきた人だ。ときおり、少女のような屈託のない表情になり、好奇心でキラリと瞳が輝く。きっと“ジェロ”を初めて口に入れたときもこんな瞳だったんじゃないのかな。

m a t s u d a  m i c h i k o

松田美智子さん
松田美智子さん

松田さんの「what's up」
■豆料理■
目下のマイブームは豆料理。「柔らかい豆は嫌いだから、かために仕上げるの。ここ数年意識しているのが自国の食文化。日本人であることにこだわっているから、他国に誇れる食文化として和菓子を勉強中。信頼している職人さんに頼み込んで教えてもらっているの。とくに豆の煮方など、目からウロコ。すごく勉強になる。
 

松田さんの
「最近見つけたオススメ・サイト」
じっくり手のかかった、体にやさしい料理、スローフード(ファストフードの対極にあるもの)を追究する松田さんのオススメサイトは、スローフード協会。
http://www.slowfood.com/

もうひとつは、ニューヨークに旅する際にここでチェックして予約を入れるという、ニューヨークのホテル案内サイト。観光などを楽しむための中級クラスのホテルが揃っている。ここで紹介しているホテルにハズレはない、という信頼できるサイト。
http://www.newyork.citysearch.com/




文/松下敦子
撮影/竹内章雄

Text/Matsushita Atsuko
Photo/ Takeuchi Akion