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更新日:2001年4月17日 RSS


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松浦弥太郎 Matsuura Yatarou
「オレってちゃんと人の役に立ってるんだ
本を媒介に見つけた“居場所”

松浦弥太郎さん 
松浦弥太郎/移動書店「M&Co. Traveling Booksellers」代表

1965年、東京生まれ。18歳で渡米、帰国後路上で雑誌を売ったのをきっかけに、車で移動する本屋さん「M&COMPANY. TRAVELING BOOKSELLERS 」を始める。書店主のほか、文筆家、エディトリアルディレクターの肩書きをもち、雑誌や本の執筆や編集など、幅広く活躍中。著書に「本業失格」、「book bless you!」。不要になった絵本を集め、福祉児童施設などに寄付するボランティア活動も行なっている。

きっかけは路上で売った
雑誌の切り抜き
 
  本が大好き。それがオシャレで珍しモノならなおのこと。そんな個性派文学少女と元少女に絶大なる支持を受けているのが恵比寿に出没する“移動図書館”「M&COMPANY. TRAVELING BOOKSELLERS 」。海外の古本屋で発掘してきたレアな洋書から、とんがったもの、ユルユル系まで、トーキョーのオシャレさんたちを夢中にさせるセンス際立つ幅広いセレクトを行っているのが、店主の松浦弥太郎さんなのだ。

  この仕事を始めたきっかけは、表参道の路上で売った洋雑誌『LIFE』の切り抜き写真だった。

  18歳で日本を飛び出し「日なたの匂いのする自由な国」アメリカへ旅立った松浦さんだが、彼の地でも本好きの虫がうずき、ほしい本が次から次へと見つかる。ビザの関係で帰国する折にはそれらの本を持ち帰り、そしてさらなる本を手に入れるための資金稼ぎに、と始めたのが路上販売だった。場所柄、オシャレなお店が並ぶこの場所で、洋雑誌の表紙や目立つページをパネルに加工した松浦さんの「商品」は、ほかのその手の店よりも断然安いということもあり、大繁盛。いろんなショップのオーナーも直接訪れてくれて飛ぶように売れた。

  そして、そこで知り合った人の縁がきっかけで、赤坂のおしゃれな本屋「ハックルベリー」の一角で、持ち帰った洋書の販売を始めた。そこで本好きな多くのお客さんと接することができた。

 「自分の選んだ本がそうやって皆に喜んで買ってもらえる。そのときに初めて、オレってちゃんと人の役に立ってるんだな、って感じられた。それがひどくうれしかったんです。人から認めてもらえ、自分の居場所をやっと見つけることができた、って」。
不登校から路上へ
そしてアメリカへ
 「居場所」。松浦さんがこの言葉にこだわるのはそれなりの理由があった。

  恐ろしく早熟なコドモだった松浦さんは中学生だったある日、パタリと学校へ行かなくなった。学校のなかに信じられるモノがない、だったら学校が定める諸々に従う必要もない。行く意味が見いだせない。それが理由だった。

  でもそれが昨今のひきこもりのコドモたちと違うのは、松浦さんが「自立」という言葉を大きく意識していた点。学校に行かない、だったら働いて自分のほしいモノくらいは稼がなきゃ、そう考えていた。日給でもらえるアルバイトを続けながら、お金が貯まると興味の赴くところに出かけてみる、という生活。そんななかでの松浦さんと本の出会いのきっかけは美術館だった。

 「絵や彫刻を観るのが好きだったんです。好きな作家が見つかると、その作家のことを知りたいと思い、関連の本を手に取る。で、その1冊の本からさらに別な本につながるキーワードが見つかる。それまではね、本は全然読まない子どもだったんですよ。でもそのころの僕にとっての本は行動を起こすきっかけを作ってくれるものだった。本を読んで湧いた疑問をきっかけに自分が動いていける、そんな感じ。

  こうしてドロップアウトしちゃって、日本じゃあもう僕の居場所が見つからなかったんですが、そんな日陰の生活(笑)を18まで続けて、強烈な陽射しのイメージがあって憧れ続けたアメリカに出たんです 」。
自分の居場所を見つけ、
原点に気づく

 ついに憧れの国に! しかし当時アメリカは大不況。夢に思い描いていた毎日とはほど遠く、とはいえ少年時代に決別するつもりで日本を離れた身としては、今帰国しても同じ生活を繰り返すだけ。意地でも戻れない。そんな気持ちで暮らしていた。ここでも松浦さんの居場所は見つからなかった。

  結局25歳でアメリカ暮らしに別れを告げた。日本に戻ってからはデザイン事務所などからオーダーを受けた本をアメリカで探す、というお仕事スタイルをとり、さらには路上販売へとつながってもいった。

  こうして、本を媒介にしてやっと「居場所」を見つけ出した松浦さんは、中目黒のマンションの一室で予約制の本屋「エムアンドカンパニー・ブックセラーズ」を始める。が、終日その空間に閉じこもることが苦痛。もっと出歩きたいのに、こんなんじゃあ“つまらない”という思いしか自分に残らない。だったらやめよう。そしていったんは本屋から離れた生活を送る。

 「いろんな雑誌に執筆してたんでその稼ぎで食べてはいけたんです。でもやっぱりこれだけだとつまらない。じゃあ自分は何がやりたいんだろう、そのときに思い出したのが『LIFE』を売ってたころのあの楽しさ。自分の原点はあそこだった、と思った。で、今だったら、移動可能な車を本屋にしちゃうのはどうだろうか、と考えて昨年の6月から「M&COMPANY. TRAVELING BOOKSELLERS 」を新装開店したんです」。

真っ暗だった足元を
照らしてくれた本
 「店では僕個人、ってことにこだわってます。たまにどんなジャンルがそろってるの? って聞かれるんですが『僕がジャンルです』って答えてます。僕がセレクトしたものってことで納得して買ってってもらえばうれしい。

  これからの活動ですか? 僕はとにかく社会の一員として役に立ちたい、という意識があるんですよ。だから、情報を発信できる立場にいる者として、ナニナニに対して僕はこう思っているけど、皆はどう思う? というようなメッセージはつねに投げかけていきたいですね」。

 「最後に、松浦さんがいちばん心に残った本を」、月並みだがそんな質問をしてみた。

 「ベスト1を挙げるとするなら、彫刻家でもある高村光太郎の詩集。中学のころ初めて読みました。言いようのない衝撃、感動がありましたね。当時の真っ暗だった僕の足元を照らしてくれた本です。今でも折に触れ、読み返してます。もう何十回読み返したかわからない。でも辛いときには読まないんです。何でもないときにこそフッと読みたい本なんですよ 」。
m a t s u u r a y a t a r o u

松浦弥太郎さん
松浦弥太郎さん

松浦さんの「what's up」
■ お習字&古事記 ■
「最近ちょっとはまっているのが習字。僕は習ってるわけではないから、何派だとかはなくって我流ですけどね。墨をすっていると無心になれるし、気分転換したいときには和紙に向かってます。あと、今いちばん夢中になってる本が『古事記』。これを読んで、その舞台となった日本各地の場所に暇を見つけては出かけています。読んでから実際に訪れると、やっぱり感慨の深さもひとしお」。
 

松浦さんの
「最近見つけたオススメ・サイト」
http://www.sekainomado.com/
世界各地(73の国・地域)のライブカメラから配信される画像・映像で世界の旅気分が楽しめるというサイト。
http://www.nationalgeographic.com/
ナショナルジオグラフィックのオフィシャルサイト。 見たら必ずハマリます。旅好きにおすすめ。
http://www.bookblessyou.com/
M&Co. Traveling Booksellersのサイト。
撮影/ノザワトシアキ
文/松下敦子
Photos/Nozawa Toshiaki
Text/Matsushita Atusko