カフェグローブ[046] 鏡リュウジ / 占星術研究家・翻訳家 あこがれは、ネクタイを締めた銀行マン。なのに…… - インタビュー

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更新日:2003年5月6日
Views for thought  今、注目のひと 今、旬な人にインタビュー。その人の生き方や考え方から
なにかを感じとってもらえれば……。
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あこがれは、ネクタイを締めた銀行マン。なのに……
  鏡リュウジ  KAGAMI Ryuji/占星術研究家・翻訳家
 
   
鏡リュウジさん '68年京都生まれ。国際基督教大学修士課程卒業。在学中は1年間助手をつとめる。
並行して、高校時代から占い関連の執筆活動も続ける。占いの中に心理学的要素を入れた独自の解釈が女性誌などで人気。
最近のベストセラーは『魔法の杖』。バラエティ番組「HEY!HEY!HEY!」のゲストとして登場したTommy february6が、ダウンタウンの2人にプレゼントしたことから火がつき、10万部に迫ろうという売れ行きだとか。
   
授業が連ドラみたいに楽しくって。
 
  「占いを一生の仕事としてやっていく気はずっとなかったし、いつかは足を洗い、まっとうな仕事につくつもりでした。あこがれのイメージとしては、ネクタイを締めた銀行マン(笑)。占いの原稿書きはバイト感覚でやっていた。でも自分にはこれしかないんだと、ついに開き直ったのが28歳のとき」
 
  高校時代には、日本で出版されている西洋占星術関連の文献はすべて、そして洋書まですでに集めていたという鏡さん。きっとそのころからずっと、占いを天職と心に決めていたのでは? と聞いてみたところ、なんだか意外な答えが返ってきた。でもまた、なぜ銀行だったんだろう。
 
 
  「大学時代、バブル絶頂期だったんですよ。友人はどんどん、有名企業に就職を決めていく。しかも人文科学系の専門だったのに、金融系に続々と。『こんな景気いいときはないんだから、きちんと就職したほうがいいよ』ってみんなから言われたし、実際ぼくもそう思っていました。

  占いの連載は、高校時代からタウン誌やティーン向けの女性誌などで始めていたんです。そのまま大学時代もバイトとしてずっと原稿を書きつづけてきた。初めての本を大学3年のときに出版して、その後は1年に数冊出すようなペースでした。だから、収入でいえば同世代のサラリーマンよりも多かったかもしれない。でも、これはあくまでもバイト、っていう気持ち」
 
  結局就職活動はせず、授業が「まるで連ドラを見ている気分」になるくらい楽しかったICU(国際基督教大学)の修士課程にそのまま進むことにした。もう少しだけ占いの仕事を続けたい、という気持ちが捨てがたかったからだ。
 
 
本を読みたいあまり、個人輸入までやってました。
 
  「今思うと大学時代はよく勉強してました。あのころはほんとうにまじめで、お酒なんて飲まなかったし。勉強が楽しくて楽しくて仕方ないんですよ。ICUの図書館は開架式で、原書と翻訳書が並べておいてあるんです。高校生のころ個人輸入などをして必死に手に入れていた洋書も、そこにはずらっと並んでいる。もう、それはすばらしい環境で」
 
  高校時代から洋書に親しんでいたということだけど、当時はインターネットなどあるはずもない。海外の書店からカタログを取り寄せ、手書きで英文の注文書を作り、高い手数料を払って国際送金をする。その一連の手続きを、誰に教わることもなくやっていたという。それくらい、海外のさまざまな本の世界に魅力を感じていたということ。だから好きなだけ洋書を読むことのできるICUは、きっと最高の遊び場だったのだろう。
 
 
  「最近はどこでも発行してもらえるようになったと思いますが、当時は本局まで行かなければ国際為替を発行してもらえなかったんです。ほんとに、あんなに複雑な手続きを、子どもがひとりでよくやってたと思いますよ。資金源はお年玉や親からくすねたお金。親に連れられて東京に来たときに、銀座のイエナや日本橋の丸善に行く、というのが高校時代のトキメキでしたね。ICUに行っていちばんラクだったのは、学内にある郵便局で国際為替の小切手が発行してもらえること。本局まで行かなくても洋書を注文できるんだから」
 
目からウロコだったユングとの出会い。
 
  心理占星術というジャンルを日本に広めたことで知られる鏡さんだが、ユングの世界に惹かれはじめたのはいつからだったのだろう。そしてそのきっかけは?
 
  「10歳くらいのころ書店でタロット占いの本を買って以来ずっと占いに関わってきています。占いをやっていると、自分の中にあきらかにタロット占い師の自分がいるのが分かる。でも、『こんなオリコウなぼくが、なんで占いなんかにはまっちゃうの?』と抗う自分も同時にどこかにいて。そんなとき、ユング心理学の入門書に出合ったんですが、これがある種、目からウロコだったんですね。

  なんだこれ、占いじゃん、って。学者でこんなことやっている人がいるんだ、と勇気づけられた。中学生のころは、無邪気に夢中になれたけど、さすがに高校生にもなるとだんだん、こんなことばっかりやってていいの、とプレッシャーが出てきて。そんなときにユングの思想を知って、占いが学者ぶった顔をしてズルいと思った。だったら占いと心理学を関連づけるこの路線でいけばいいんだ、とユング関連の本もそれから集めはじめたんです」
 
 
  出合うべくして出合ったユングの世界。大学院の修士論文のテーマとしても取り上げたユングの思想は、現在にいたるまで鏡さんの根底に強い影響を与えているようだ。「ユング心理学のいちばんいいところは、壮大な雑学というところ。そこから神話や宗教学、場合によってはサイエンスにまでリンクさせることができる。いろんな事象を解釈していくために最適なツールなんですよね」。
 
「みんながやってること」を知らないのがコンプレックス。
 
  これまで書いた本は、翻訳・著作あわせてなんと60冊前後。この圧倒的な創作活動の原動力となったのは、“心理学プラス占星術”というジャンルをより多くの人に知ってもらいたい、という気持ちだったのだろうか?
 
 「いえ、自分が夢中になっていることを、中学・高校のころからずっと続けてきたらここまで来ていただけで、達成感みたいなものはぜんぜんなくて。だからぼく、みんなが経験するようなこと、たとえばマクドナルドでのバイトなどを一度もやったことがないのが、実はいまだにコンプレックスなんですよ。結局あこがれていた銀行マンになることもなく、趣味だけが残っちゃって……」
 
 
  自分でも数え切れないという連載を抱えた、業界きっての売れっ子の素顔は、もしかして、懸命に洋書を集めていた高校生のころから変わっていないのかもしれない。
   
 
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Text / Wada Kyo(Cafeglobe.com)
Photos / Takiguchi Satoko
鏡リュウジさん
鏡リュウジさん
若者たち(だけではなく熟年も)のサロンと化しているという鏡邸。「今日はパーティなので、これからカレーを作らなくっちゃ」とのこと。撮影時も、若者がひとり、まるで付き人のように立ち会っていました。
 
 
 
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vol.45 石川直樹さん/旅する人  2003年4月1日
vol.44 遙洋子さん/タレント・作家  2003年3月4日



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